バンド臨終図巻

  • 河出書房新社
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309271859

作品紹介・あらすじ

それは本当に「音楽性の違い」だったのか?古今東西200バンドの"解散"の真実を徹底分析。

感想・レビュー・書評

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  •  速水健朗・円堂都司昭・栗原裕一郎・大山くまお・成松哲著『バンド臨終図巻』(河出書房新社/2520円)読了。

     山田風太郎の名著『人間臨終図巻』を模したスタイルで、「古今東西洋邦200バンドの解散の真相に迫」った一冊。

     企画としてはよいし、各著者が膨大な資料にあたった労作ではあるが、それほど面白いものではなかった。『人間臨終図巻』は何度も読み返す価値のある味わい深い本だったが、本書は読み返したいとはとても思えない。

     つまらなさの要因の一つは、事典スタイルに徹するあまり、あまりに幅広いジャンルのグループを取り上げすぎていること。

     いちばん最初に登場するのがハナ肇とクレイジー・キャッツで、最後に登場するのが(上地雄輔らの)羞恥心。
     で、その間に登場する約200のグループの中には、ビートルズやツェッペリンのような大物もいれば、通好みのロック・バンドもいる。フォークもいれば歌謡アイドル・グループもいる。ピンク・レディーの次に登場するのがセックス・ピストルズ。シブがき隊の次がエヴリシング・バット・ザ・ガール。横浜銀蠅もいれば頭脳警察もおり、光GENJIもいればナンバーガールもいる。果ては殿さまキングスやおニャン子クラブまで登場する。バンドじゃないだろ(笑)。

     なるほどたしかに、『人間臨終図巻』には分野を問わない多様な著名人が脈絡なく集められ、享年という境界線によって無機質に並べられていた。本書はそれに倣って、ジャンルを問わない多様な「バンド」を、解散年という境界のみで区切る構成にしたのだろう。

     だが、そうした構成は失敗だったと思う。
     『人間臨終図巻』の場合、人の死にざまがテーマだからゴチャゴチャの寄せ集めでよかった。「私は科学が苦手だから科学者の死にざまには興味ない」などということはあり得ず、どんな分野の人の死も等しく興味深いものだから。
     
     しかし、バンドの解散はそうではない。興味のないバンドがどんなふうに解散しようと、どうでもいいことだから(私はいちおう最初から最後まで読んだが、興味のないバンドについてはナナメ読み)。
     殿さまキングスのファンが本書を読むとは考えにくいし、本書を読む人の大部分にとって、殿さまキングスがどう解散したかなんてどうでもいいことである。

     本書はロック・バンドに絞り、ほかのジャンルは削って、その分一つのバンドについての記述を増やすべきだった。『ロック・バンド臨終図巻』であったらもっと面白かっただろうし、資料的価値も高まっただろう。
     
     とはいえ、文章に皮肉が効いていて笑えた箇所も少なくない。とくに、栗原裕一郎が担当した項目は総じて面白かった。例として、さだまさしがいた「グレープ」の項の一節を引く。

    《2ndシングル「精霊流し」(74年2月)の大ヒットで一躍、売れっ子フォークデュオとなったグレープは、同時に、つきまとう「暗い」というイメージに悩まされ始めた。
     コミカルな新曲を投入するなど軌道修正をはかろうとしたが不発。追い打ちをかけるように「精霊流し」と同傾向のマイナーな6thシングル「無縁坂」(79年11月)が大ヒットしてしまい、「グレープは暗い」というイメージは動かしがたいものとなった。
    (中略)
     ソロになったさだはしかし、今度は、当時『オールナイト・ニッポン』のパーソナリティだったタモリによる「暗い、女々しい」といった執拗な批判に悩まされることになるのであった。》

    「追い打ちをかけるように大ヒットしてしまい」という一節が、なんともおかしい。

     それと、5人の著者がそれぞれ一つずつ寄せた章間コラムはどれも面白かった。ジャンルを絞ったうえで、このコラム部分をもっと広げればよかったのに……。

  • 2010年までの約50年に活躍した洋邦バンド200組がいかに解散に至ったか辞典。
    すごい情報量。
    いろいろ腑に落ちた事も多い。
    ヘヴィメタやプログレが何故しょっちゅうメンバー交代をしていたのか、特にリッチー・ブラックモア周辺とか。
    印象的だったのはサザンの項。
    あれだけ人気があると、「もはや個々の音楽性や人間関係などを理由に解散などできなくなってしまった。」

  • 1960年代から2000年代までの、バンド、グループ、ユニット、デュオなどなどの解散だけにフォーカスした、タイトルの付け方しかり、なんともいやらしい一冊

    ただ、その数は200組と膨大で、洋楽、邦楽、ロック、アイドル、パンク、メタル、プログレ、フォーク、ビジュアル系、グループサウンズまでとにかく幅広い

    しかも、書き手の想像や巷の噂話は一切無く、新聞、雑誌、テレビ、単行本などの引用元が必ず明記されているという徹底ぶり

    ここまで来ると、その執念に頭が下がります

    因みに、近所の古本屋で500円でした

  • はじめにで紹介されている「世の‘音楽性の違い‘を理由に解散するバンドの9割は、金か女でもめて解散している」という言葉通り、なんとも下世話な一冊。もちろん、読もうと思った私もそう。
    資料的な価値は…どうなんだろう。あくまで読み物レベルなような。
    60~80年代は、名前だけとはいえ、海外バンドの方が知っている。薬が多いなぁ…。
    90~00年代は、ちょうど世代なだけに邦楽がまぁためになる。SPEEDってそんな解散理由だったのね。

  • ふむ

  • 新旧東西の様々なバンドの解散事情がわかる本。
    意外な事情もわかり、お得。
    自分としては、Dr.フィールグッドとか
    アリス・クーパーとかも載ってたら、
    満点付けたなぁ、と。

  • 170304 中央図書館
    ああ、そんなバンドあったね、と思い出すために。それにしても80年台以降には、長命を保てるだけのバンドなんてないんだね。

  • 「図鑑」となっているが”図”はない。代表作のCDやLPのジャケット写真でも添えてあったらもっとよかったが、権利問題などもあって難しかったのだろう。かつて一世を風靡した人気バンド・アイドルグループなどの解散直前の事情を集めた短編ルポ集。年代別などに整理されているので「事典」としても読める。目の付け所が面白いと思う。新聞・雑誌の記事などからはわからない部分は、変な噂話を書き込むなどの下品なことをせず、わからないままにしてあるという姿勢にも共感できる。

  • 西洋東洋のあらゆるバンドの解散の理由や過程が
    辞書形式で五十音順に並べられている。
    「バンド」という形態の他の何にも比べられない
    独自性。(お笑い芸人も近いか)
    だからこそ、解散という人間ドラマは例外なく
    面白く興味が引かれる。たしかに、こういった本は
    常備していくのがいいのかもしれない。

  • タイトルと違う点: バンドだけじゃなくてアイドルを含め、音楽グループについて掲載されてます。また、「図巻」となってますが、特に図はありません。

    上記のことを含めても、下世話ですが面白いです。音楽グループ別の解散理由が、年代ごとに集められてます。
    外国のボーカルグループが凄くギスギスしてたり、リーダーがカリスマすぎて他のメンバーが「バックバンド扱いだ」と腐ったり、やっぱり薬は怖かったり、お金は大事だったり。それとともに、「音楽性の違い」は自分が思っているよりバンドにとっては重要な要素なんだと思いました。

    今、好きなバンドが活動して、しかも新曲が出ることがとても掛け替えない奇跡的なことかもしれないんだと旋律します。

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著者プロフィール

速水健朗 Kenro Hayamizu1973年生まれ。食や政治から都市にジャニーズなど手広く論じる物書き。たまにラジオやテレビにも出演。「団地団」「福島第一原発観光化計画」などでも活動中。著書に『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』(朝日新書)、『1995年』(ちくま新書)、『都市と消費とディズニーの夢』(角川Oneテーマ21)、『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)などがある。

「2014年 『すべてのニュースは賞味期限切れである』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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