アライバル

制作 : 小林 美幸 
  • 河出書房新社
4.33
  • (229)
  • (146)
  • (58)
  • (11)
  • (1)
本棚登録 : 1442
レビュー : 216
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309272269

作品紹介・あらすじ

新たな土地に移民した者が、その土地で生まれ変わり、新生児のように成長していく。そこには過去の自分を捨てなければならない辛さと、新しい人生を歩むチャンスを手にした幸せとの両面がある。それをまるでサイレント映画のように一切の文字を使用せず表現した、究極の文字なし絵本。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • セリフが一切登場しない絵本。しかし味わいのあるレトロ調の画風で表現される街や人の表情から、街の喧騒や穏やかではない状況、人々の喜怒哀楽が十分伝わってきます。
    活字は想像力を要するのに対し、絵本はある程度情報が揃っているので流し読みしてしまうことも多いのですが、この本は画のみでありながら重厚感のあるストーリーで想像力がとても刺激される作品でした。

  • 不思議な世界でありながら、いつかの過去の世界であり、また未来でもあるような世界。丁寧な絵で、言葉がないことで、私たちの中から言葉があふれてくる、すばらしい絵本。

  • 『アライバル』    ショーン・タン

    全く文字の無い本。

    ゆっくりと一ページづつ深く味わう様に見ていくと、音が聞こえて来る様な気がする。光と影、人々の表情、不思議な世界。中に一文字も書かれていないのに、物語が伝わって来て、涙が出そうになる。



    あまりにも話題になり過ぎたからか、その時は高価に感じたのか、とても欲しかったのに買わなかった。



    先日、図書館で借りて来てあったのを静かに見ていると、書店でパラパラ見た時には、わからなかったことが、どんどん伝わって来て…。



    美術好きな家人が、珍しく目を留めて「原画で見たい絵だなぁ」と。一つ一つの絵を、原画の紙の質感を味わいながら見たい様な絵。それが意味を持って繋がっている。言葉は一切無い。



    部室に投稿して、こちらに投稿して無かったf^_^;

  • 文字がないだけでここまで心かき乱され心弾ませるとは…。

    愛する家族との別れ、父は家族のためにひとり見知らぬ街へと旅立つ。
    奇妙な街では、本当にわからないことだらけ。文字も時間も文化も食べ物も自分の知っているものとは違う。そんな時助けてくれるのはやはり人の優しさ、動物の癒し。
    いろんな人と出会い哀しい過去を聞くのだけど、この辺のストーリーがうまく掴めなかった。
    だけど細かく分かれた絵にはたくさんの想像ができてきっと答えは一つじゃないはず。
    そこがまたこの絵本の魅力。
    終わり方がとても素敵だった。ラストの絵が一番好き。

  • >世界各国多数の賞を受賞、世界中に衝撃を与えたグラフィック・ノヴェル、ついに刊行! 漫画でもコミックでもない、素晴らしいセンス・オブ・ワンダーに満ちた「文字のない本」。


    絵本だと思い込んでいましたが、想像していたのとはちょっと違っていました。
    文字のない大人のための物語といった感じ。

    タイトルのアライバル(arrival)は到着、到達といった意味でしょうか。 

    家族と別れて旅立った男性が不思議な世界で色々な体験をしてまた戻ってくる話・・・と説明するだけではこの本の魅力が伝わらないのが残念。
    セピア色っぽい感じの絵で一見ちょっと暗めなんだけれど、なぜか強く惹きつけられました。


    作者のあとがきより、この本の大部分はさまざまな国や時代の移民の方々の体験談から着想を得ていると書かれていました。
    作者の父も1960年にマレーシアから西オーストラリアにやってきた移民だそう。
    この物語の主人公の男性は作者の父がモデルなのかなと思いました。


    一度読んだだけでは理解できない感じ。
    理解する必要はなく感じるだけでいいのかもしれませんが・・・
    じっくり何度も眺めて味わいたい物語でした。

  • 久々に、人に押し付けたくなるほどおすすめの本でして、わけわからない事も多々ありちょっと怖い雰囲気ですが
    新しい事や環境が待っている方に、大丈夫!という気持ちになりそうな、プレゼントしたくなるようなそんな本です。

  • 読み始めたら止まらなくなって、読み終わったら涙が出て来た。忍び寄るものは恐ろしく、訪れる光は限りなく優しい。どんなでも生きられる、頑張れる。そう思える本でした。

  • 絵本の体裁ですが、「グラフィック・ノヴェル」というものらしい。

    表紙裏の説明を転載します。
    『ショーン・タン 1974年、オーストラリアのパース郊外に生まれる。現在、メルボルン在住。イラストレーター、作家。舞台製作や映画製作も手がける。ショート・アニメーション「The Lost Thing」が、第83回アカデミー賞短編アニメーション賞受賞。

    arrival / 到着、(新しい方法・製品などの)出現、(季節・行事などの)到来、やって(引っ越して)来た人、新参者、誕生、赤ん坊

    新たな土地に移民した者が、その土地で生まれ変わり、新生児のように成長していく。そこには過去の自分を捨てなければならない辛さと、新しい人生を歩むチャンスを手にした幸せとの両面がある。それをまるでサイレント映画のように一切の文字を使用せず表現した、究極の文字なし絵本』

    文字なし絵本なので、題名やあとがき以外は原作と同じだということです。だけど日本版の方が紙が上質で立派らしい。
    ずっしりと重くて、とても古びた写真アルバムという感じの本です。それだけで本好きとしては手に取るのが嬉しくなります。
    紹介にあるように、絵本というよりサイレント映画を見ているようでした。

    どこかに移民を決意する主人公の世界、移民する先の世界、他からも移民してきた人たちの元の世界、全部がファンタジックでこの地球の風景ではありません。でも、だからそこに何を重ねてみるのかは読者の自由。
    3.11後にこれを読んだ私は、彼らの街を襲う影に原発を重ねてしまいました。

    作者が多くの移民で成り立っているオーストラリアの人だということは、この作品の製作の原点でしょう。アメリカに残っている資料も参考にされたとか。

    物語の最後で、なんだかほっとして涙が浮かんできました。何度でも読み返したい本。図書館で借りましたが、欲しい、手元に置きたい・・・・。
    ネットでこの本のことを知り読みました。私もここでお勧めして、もっと多くの人にこの本を読んでもらいたいと思いました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「絵本というよりサイレント映画を見ているようでした。」
      静かに想像力を掻き立てる世界。まさにサイレント映画ですね。
      最近立て続けに邦訳が出て...
      「絵本というよりサイレント映画を見ているようでした。」
      静かに想像力を掻き立てる世界。まさにサイレント映画ですね。
      最近立て続けに邦訳が出て嬉しい悲鳴。様々な表現の出来るショーン・タンの筆力に圧倒されてます。
      2013/02/07
    • tokiwahimeさん
      どうしてこんなに隅々まで細やかに表現されているのだろうという、ショーン・タンの世界ですね!
      私も圧倒されました。
      最近出た、「エリック」「ロ...
      どうしてこんなに隅々まで細やかに表現されているのだろうという、ショーン・タンの世界ですね!
      私も圧倒されました。
      最近出た、「エリック」「ロスト・シング」も読みました。どっちもとても良かったです。
      2013/02/07
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どっちもとても良かったです。」
      ショーン・タンは、不思議な感覚に襲われますよね、懐かしいような淋しいような、、、ちらっとしか観ていない「ロ...
      「どっちもとても良かったです。」
      ショーン・タンは、不思議な感覚に襲われますよね、懐かしいような淋しいような、、、ちらっとしか観ていない「ロスト・シング」の映像がDVDになったので、購入したいと思っているのですが金欠中で、購入時期未定。。。
      2013/03/21
  • 図書館で借りました。
    話題作で、ずっと気になっていてようやく、やっと読みました。
    悲しい話だったら嫌だな~と思っていたのですが(絵が楽しい感じじゃないし)、家族が無事にまた一緒に暮らせるようになって安心しました。
    表紙にも描かれているの謎の生き物がかわいいです!
    これ以外の生き物もかわいいし、街の雰囲気や謎の記号・文字、風景もとても独創的です。

    文字は一切なく、ひたすら絵だけが続くという絵本(という分類で良いのでしょうか)なので、こういう話なのだ、というのは読み手によって違うと思います。
    しかし、多くの人が共感すると思います。それは誰しもが「彼ら」と同じ経験をしたことがあるからです。
    見知らぬ土地で、初めての場所で、地図や辞書を手に不安げに辺りを見回す人。困っている人に声を掛ける人。
    この本に出てくる不思議な巨大都市に住む人々のように、親切で思いやりのある人ばかりになればとても良いのに、と感じます。

    せっかくなので私が読み取ったストーリーを書き残します。

    主人公は妻と娘と暮らす男性で、彼らの住む街は何らかの脅威に侵されつつありました。
    男性は妻と娘を街に残し、一人旅立ちます。
    幾日も船に乗りたどり着いたのは、彼が家族と住んでいたのとは比べ物にならないくらいの大きな都市でした。
    彼はその都市で使われている言葉を完璧には理解できていないようで、苦労しながらも入国審査を終え、上陸を果たします。
    文字がわからない彼は街を歩くのも一苦労で、人々に助けてもらいながら、ようやくとある暮らすことのできる部屋にたどり着きます。
    その街の技術やシステムも、彼が家族と暮らしていた街とは異なるようで、蛇口から水を出すのも容易ではありません。
    そして、その部屋には一匹の奇妙な生き物(表紙登場)がいたのです。
    彼は鞄を開けて家族写真を取り出し、壁にかざりました。そうして新しい街で彼の生活が始まったのです。

    彼は早速、街を見て回ることにしました。身支度を整えると、奇妙な同居生物を連れて出かけます。
    地図はあっても役に立たず、彼はこの街の住人であろう女性に助けを求めます。
    女性は彼に空を飛ぶ船に乗るための切符の買い方を教えてくれました。
    船で彼女は自分のこれまでの人生を彼に語り始めました。
    本が大好きだった彼女はあるとき、強制的に危険な労働をさせられることになってしまいます。そこでは、彼女と同じくらいの子供がたくさん働かされていました。
    将来を憂いた彼女は、奪われた本を取り返し、逃げ出します。そしてたどり着いたのがこの街でした。

    船を降りると、彼は彼女にお礼を告げ、歩き出します。
    食べるものを買いたいのですが、なかなかうまくいきません。
    すると男の子とその父親が声をかけてくれました。食べ物を探しているのだと説明すると、彼らはこの街でよく食べられるものを説明してくれた上、自宅に招いてくれました。
    彼らの家への道すがら、彼は父親に自分の境遇を説明しました。すると、父親も彼に自分たちの境遇を話はじめたのです。

    彼らがもともと住んでいた街は巨人に襲われ、身の危険を感じた父親とパートナーの女性は街を逃げることにしました。
    地下へ逃れましたが、そこは二人がまったく知らない世界。どこへ逃げればいいのか途方に暮れていた時、一人の男性が現れ案内役をしてやると言い出しました。
    しかしタダではしてくれません。彼らは相談したのち、女性が大切にしていたペンダントを男に渡し、この街へ逃げてきたのでした。
    さて、彼らの家へ着くと、男の子の母親は彼を暖かく迎えてくれ、料理を振る舞ってくれました。
    大いに話し、笑い、音楽を楽しみ、彼は男の子に折り紙で作った小さな生き物を、家族は彼に小さな壺をくれました。

    朝、目覚めると彼は身支度を整え、あの家族に教えてもらったヘンな青果を食べました。奇妙な同居生物にも分けてやりました。
    彼は仕事を探すことにしました。
    街へ出て、いろいろな職業の人に声を掛けますが、誰一人として雇ってくれません。
    困っていると、ふとポスター貼りをしている職人に目が留まりました。その仕事を自分にまかせてくれないか?という申し出を職人は了承し、彼はポスターを貼っていきます。
    しかし、彼が貼ったポスターはすべて向きが逆さまで、様子を見に来た職人に怒られてしまいました。
    次に彼が目を付けたのは、運送屋です。
    たくさんの箱を受け取り、それを宛名と同じ棚や引き出しへ入れるのです。最初はうまくいったのですが、とある届け先で巨大な生物に遭遇し、届けるはずの運送物をすべて投げ出して逃げ帰ってしまいました。

    そして彼がやっと見つけた仕事は工場で不良品を選り分けるというものでした。
    長いベルトコンベヤーの両脇にたくさんの人が並んでいます。彼もそこへ並び、形のおかしい製造物があれば摘み上げ、処分します。
    目の前に立っていた老人が彼に飲み物をわけてくれました。老人は彼にこれまでの人生を語ります。
    若い頃、愛する女性がいた彼はその女性をおいて兵士として戦場へ赴きました。最初はたくさんいた仲間を一人二人と失い、最後には自分の片足を失いました。
    やっとのことで彼女のいる町へ戻ってきましたが、建物は壊れ、黒煙があがり、誰一人の姿も見えず、そこはもう彼の知る町ではありませんでした。
    終業後、老人は彼を散歩に誘いました。広い野原で老人の仲間がゲームに興じています。彼も参加し、初めての不思議なゲームを楽しみました。

    彼は家族へ手紙をしたためると、それを折って鶴の形にしてお金と一緒に封筒へ入れました。
    通りすがりの人へ尋ね、ポストへ手紙を投函します。果たして残してきた家族の元へ無事に届くのでしょうか。

    それからどれぐらいの時間が経ったでしょう。
    種は芽吹き、花を咲かせると、種を飛ばし実を付けます。枯れ、そしてまた季節がめぐりました。

    一人の部屋で彼は写真を見つめています。ここへ来た頃には何もなかった部屋が、今は物に満ちています。
    小さな物音に気付いた奇妙な同居生物が手紙が来たことを知らせます。
    手紙を読んだ彼は思わず空を見上げました。

    ある晴れた日、彼は部屋を飛び出し、走っていきます。
    その先には不安げな顔をする女性と少女。
    彼は大きな声で呼びかけます。眉を寄せていた少女はぱっと笑顔になり、女性も走り出しました。
    三人はかたく抱き合い、再会を喜びました。

    彼の生活はより一層充実したものとなりました。
    今ではすっかり家族全員がこの街の生活にも慣れています。
    少女は今日も街へ出かけます。奇妙な生物もいっしょです。賑やかな通りを歩き、慣れた手つきで届いたものを回収します。
    ふと見るとひとりの女性が地図を手に不安な表情であたりを見回しています。
    少女は近づき、女性に声をかけると女性が求める場所を指さしました。

  • 再読。あまりに素晴らしかったので小説ではないですがレビューします。


    文字一つなく、イラストのみで物語られるのは移民の物語。
    不穏な空気渦巻く故国に家族を残し、異国でいつか家族を迎えるためそこで根をはり暮らそうとする男。
    まったく知らない土地で暮らしていかなければならない不安と苦労の中、そんな彼を親切に助けてくれるその国の人々。
    彼らも移民者であり、彼らにも一人ひとりの物語があるから。

    それはさながらサイレントムービーのよう。
    これほど静かに、それでいてこれほど濃密に語りかけてくるものを他にしりません。

    表紙と裏表紙を開いた一面にみる移民たちの顔、彼らにはどんな物語があるのだろう。

全216件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年オーストラリア生まれ。これまでにオーストラリア児童図書賞他数々の賞を受賞。作品は世界中で翻訳出版されている。代表作『アライバル』のほかに『遠い町から来た話』『レッドツリー』が邦訳されている。

「2014年 『夏のルール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ショーン・タンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
朝吹 真理子
三島 由紀夫
小川 洋子
ジョン・クラッセ...
三浦 しをん
高野 和明
三浦 しをん
ショーン タン
大野 更紗
中島 京子
有効な右矢印 無効な右矢印

アライバルに関連する談話室の質問

アライバルを本棚に登録しているひと

ツイートする