音楽の科学---音楽の何に魅せられるのか?

制作 : 夏目 大 
  • 河出書房新社
3.96
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本棚登録 : 220
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309272566

作品紹介・あらすじ

すべての音楽に秘められた謎を解く。なぜ人は音楽を聴くのか?音楽とは何からできているのか?音色やハーモニーをなぜ認識できるのか?音楽は意味を伝えるのか?音楽好きなら誰もが知りたかった疑問に科学で答える名著。

感想・レビュー・書評

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  • 600ページを超える大部のハードカバーで、活字も小さめなので、かなりボリュームがある。じっくりと時間をかけて読んだ。
    音楽の認知科学の分野は、これまで数冊読んできたが、あまり期待されるような成果が出ておらず、はっきり言って現代科学にしてはかなり立ち後れた分野である。つまり、なぜある種の音の組み合わせが、人間にとって快かったり不快だったりすのか、はっきりとした原因は未だ掴めていない。
    この本の著者は音楽の専門家でも科学の専門家でもなく、「サイエンス・ライター」である。従ってこの本は音楽にも科学にも詳しくない人でも容易に読めるよう、とてもかみ砕いて書いてある。逆に言うと、専門的な語句をあまり使えないために、妙に冗長だったり不正確だったりする面もある。この本が異様に長いのも、「簡単に書いてある」せいだ。
    とはいえ、書かれている情報はなかなかの分量である。私にとってはどれも興味深いトピックなので、丁寧に読んでみた。
    どうも著者は、いわゆる「現代音楽」(主に無調の、前衛的な欧米音楽)を今ひとつと思っているらしく、シュトックハウゼンとかブーレーズの前衛性について、人間の認知論的側面から離反してしまっている(わかりにくくなってしまっている)という難点を挙げている。
    しかし私の場合でいうと、確かにはじめは得意でなかったが、徐々に慣れ親しんでいき、しまいには「現代音楽」でない近代音楽にはどうも物足りなく感じてしまっているのだが、そういう点は、どうなんだろう。
    本書で最も興味深かったのは、音楽が「言語」と似た何物かである、という最後の方の章だった。音楽を認知する脳の反応を調べると、確かに言語に対する反応と、重複する箇所もあるらしい。
    確かに音楽は明確なシニフィエ(意味内容)を持たないシニフィアンの構造体である、と言うことができそうだ。ジャック・ラカン的な意味で、音楽はシニフィアンが織りなす心的複合体である。ただしこのシニフィアンは情動(ダマシオの言う、感情以前の反応としての情動)レベルでよく作用する。なぜなのかは科学的に解明されていないが、とにかく、たとえばある種の和音の連結が特定の情動を惹起することは確かだ。
    とはいえ、音楽的な構造は著者の言うように、文化のコードによって規定されたものでもある。文化が異なれば音楽の情動化作用も異なってくるのだ。
    クラシックや西洋由来のポピュラーミュージックに限らず、著者はいわゆる民俗音楽に関してもよく調査している。わかりやすく(通俗的に)書いてはいるが、その裏にある学問的知識はたいしたものだ。かなり詳しく調査したのだろう。
    音楽において「予測されたとおりに進行すると快があり、時折予測を裏切ったときにも快がある」という点に、著者はちょっとこだわり過ぎなのではないかとも思ったが、ここに含められた膨大な情報が、読者に「音楽とはどういう現象なのか」ということの再考をしきりにうながしてくれるのは確かだ。

    • plusminuszero12さん
      音楽的な構造が文化によって規定されるという箇所が面白かったです。これは、音楽の構造のことでしょうか?それとも音楽を受け取る側の心の構造のこと...
      音楽的な構造が文化によって規定されるという箇所が面白かったです。これは、音楽の構造のことでしょうか?それとも音楽を受け取る側の心の構造のことなのでしょうか?自分も読んで確認してみたいと思います。
      2013/04/15
  • 現時点で分かっている音楽の科学的考察。ちゃんとクラシックから民族音楽、ロックから現代音楽まで幅広く引用されているところがいい。分厚いがためになった。引用されている曲を聞きながら読み込めばさらにためになるだろう。ただ3800円は買うには高い…。

    調の話、何を人は良いメロディと思うのか、音を分類する脳、不協和音とは、リズムとは、音色とは、音楽を聴いて脳のどこが反応し、なぜ感動するのか、ジャンルをどう分類しているのか、音楽に言葉や意味はあるのか。

    人にとって科学的に音楽とは何かは分からない。脳は活性化されるかもしれないが、生きる上で動物的に必要な能力ではない。その曖昧な音の羅列に勝手に美しさや意味を見いだし、時に自分でも表現する人の不思議さにも気づく。理論的にも音楽を理解出来たのはためになった。音楽の歴史上で直面してきた限界、そしてそれを超えてきたことが捉えられるのは、表現することにも役立つはず。

  • 久しぶりに音楽で人に勧められる本に出会いました。

  • まだ読み始めです。
    認知科学、文化学、その他非常に多様な観点から音楽を科学しています。
    「音楽は普遍的で宇宙人にも分かるのか?」「音楽は人間に必ずしも必要か?」「音楽は常に人にとって良い物か?」など様々な問いが提示されます。

  • 面白そうと思い図書館から借りて来たけど、全然読み進められなかった。。。

  • 600pの大作だが非常に面白かった。クラシックからロック、現代音楽まで、出てくる曲をYouTubeなどで聴きながら読むのも、また愉しい。

  • サイエンスライターが書いた音楽の本。音程、和音の検証から、ゲシュハルト認知心理学など、多面的に音楽とはなにかを考える。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784309272566

  •  なぜ音楽を聴くのか、音色をなぜ理解できるのか、とか、音楽にまつわる素朴な謎を徹底的に検証していく。
     そもそも僕は音楽に係る理論を全然解していないので、600ページ以上の理論本を読むことにちょっと構えていたんだけど、読んでみるとまるでミステリのように次々と思考法が展開していく様にワクワクしたのであります。どの話題でも、芸術論で語り始め、認知科学でオチをつけるパターンが多いのですけど。
     音楽は聴こえる音だけではなく、過去に聴いてきた音楽によって聴こえ方が変わるという、まぁ当たり前といえば当たり前の帰結にもいろいろと考えさせられたよ。

  • 600ページを超える大著。音楽を聴くということに関する医科学的なアプローチの現在地点を紹介する、というのが本筋。

    音楽理論の基本的な部分は分かっているので、それ以外の要素はためになった。非西洋音楽の構造、音楽を聴くことと脳神経学の現在地点、現代音楽を聴くために何を知っておくべきか、など。特にライヒの音楽に触れるきっかけになった記述は慧眼であった。

    本書の参考音源はすべてwebに上がっている。ひとつ一つ耳で確かめながら読むとなおよい。

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著者プロフィール

1962年生まれ。オックスフォード大学とブリストル大学で学位を取得。「ネイチャー」誌の編集に従事。『クリティカル・マス』(未訳)で2005年度アヴェンティス賞を受賞。邦訳に『生命を見る』など。

「2018年 『音楽の科学 音楽の何に魅せられるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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