放送禁止歌手 山平和彦の生涯 (放送禁止歌手 山平和彦の生涯)

著者 :
  • 河出書房新社
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309273150

作品紹介・あらすじ

アルバム『放送禁止歌』の2曲が猥褻とされ発売禁止、わずかな活動期間で音楽界から忽焉と姿を消す。今世紀に入り復活を遂げた矢先、ひき逃げ事故で帰らぬ人に…"幻のフォークシンガー"の足跡を追う。

感想・レビュー・書評

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  • フォーク歌手・山平和彦を知ったのは森達也が制作したテレビ・
    ドキュメンタリー番組「「放送禁止歌」~歌っているのは誰?規制
    しているのは誰?~」だった。

    既に年齢を重ね、歌うことから遠ざかっていた山平和彦が番組内
    で歌っていたその曲名ズバリの「放送禁止歌」は不思議な楽曲
    だった。

    四文字熟語をメロディに載せているだけの楽曲が、何故に放送禁止
    なのか。その問題は番組を作った森達也の著作『放送禁止歌』に
    書かれているのでここでは省く。

    本書はリアルタイムで山平和彦の音楽に触れ、後に自身も音楽家・
    音楽評論家になった著者が、彼の足跡を追った評伝である。

    評伝とはなっているものの、60年代の終わりから70年代半ばに
    掛けての音楽シーンの群像を山平和彦を中心に据えて描いて
    いる感じだった。

    生まれ故郷の秋田県で始まった山平の音楽活動から、不慮の事故
    で亡くなるまでを関係者の証言などで追っているのだが、どうも上っ面
    だけをなぞった感が強い。

    山平の弟分とも言えるマイペースのメンバーや多くの関係者の証言が
    取れているのに、紙数が割かれているのは参考文献からの引用ばか
    り。もう、参考文献からの切り張りだけでよかったのじゃないかと思う。
    それだけでも山平の活動の軌跡は追えているのだから。

    山平の故郷である秋田県や、その後活動の拠点とした岐阜県へ足を
    運んではいないのだろうか。評伝って、人物の向こう側に風景が見えて
    来るものだと思うんだよね。本書にはそれがなかった。

    そして、人間であるからこそ、才能があったからこそ、マイナスの面も
    あるはずなのに、そこはわざと回避しているようだ。ラジオの深夜放送
    を突如降板した理由にも触れてないし、一部の関係者が抱いていたで
    あろう山平に対する複雑な感情も「あえて(著者曰く)」聞き出していない。

    「あとがきにかえて」もほかの媒体に掲載した原稿の採録だったし、
    物足りなさは否めない。

    フォークからニューミュージックへ。70年代半ばまでの音楽界には
    山平和彦のような一時の輝きを残して消えて行った人はほかにも
    いたのだろう。ただ、山平の場合、ファーストアルバムが発売禁止
    になった。だから、森達也の番組で取り上げられ、番組をきっかけ
    にしてもう一度歌おうとしたのだろうな。

    轢き逃げという事故でこの世を去らなければ、歌い続けていたの
    だろうか。それとも、また歌の世界から姿を消すことになっていた
    のだろうか。

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著者プロフィール

1958年生まれ。総合音楽家。スクリーン等を経てソロ活動を開始。著書に『ビートルズ原論』『放送禁止歌手 山平和彦の生涯』(ともに河出書房新社)、『ザ・ビートルズ・マテリアル』Vol.1~3(ミュージックマガジン)、『「at武道館」をつくった男』(アルテス・パブリッシング)、『ビートルズ&アップル・マテリアル with ブリティッシュ・ビートニクス』(ストレンジ・デイズ)ほか多数

「2017年 『ビートルズはどこから来たのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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