CRASS

制作 : 萩原 麻理 
  • 河出書房新社
4.25
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本棚登録 : 29
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309273358

感想・レビュー・書評

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  • イギリスのパンクバンド、クラスのインタビューに基づく伝記。よくこんなマイナーなバンドの伝記が出版できましたね。
     リアルタイムで彼らのアルバム「Penisenvy」を聞いた時の印象は、政治的だということと、えっこれがパンク?という感じでした。ギズムのアルバムみたいにパンクっぽい曲の間にサウンドコラージュが入っていて、後から考えれば「Penisenvy」ではスティーブ・イグノラントがボーカルを取っていないので、よけいアバンギャルドな印象が強かったです。
     最近になってこのバンドが普通のパンクが嫌悪するヒッピーの流れを組んでいたということに気づきました。コミューン生活、ゆるいメンバー形態などは、ゴング、アモン・デュール、ヤホバ13、アシッド・マザーズ・テンプルを連想させますね。
     反精神医学のクラスへの影響、クラスのLPと同時期に出たレインのLPの話なども面白かったです。

  • 2016/6/2購入

  • 専門学校時代の友人がハマっていたことから、何となく覚えていたCRASSというバンド名。それから数年が経ち実際の音源を耳にする。そして今日、この本を読み終えた。政治とか思想が絡んでくる音楽にはどうしても言葉の壁が付いて回る。そこを補う意味としても、かつてイギリスにいたとあるアンダーグラウンドバンドの物語としても楽しめた。濃密な音楽本。

  •  1978年から1984年にかけてイギリスで活動したアナーコパンクバンド、クラスのヒストリー本。この本を読めば、クラスの細かい活動の内容から、政治的な内容の歌詞に行き着いた経緯まで、理解できる。歌詞の説明まで、こと細かく書き綴っている。とくに彼らのトレードマークである黒い服装の理由は、洗濯機で色落ちをしてみんなの服が灰色に染まってしまったから、黒の服で統一しようという事実や、アルコールやドラッグをやっていたメンバーがいたという事実など、意外な一面を知ることができる。クラスを知っている人でも意外な一面を知ることができて、とても楽しめる本だ。

     ただイギリス全体という視点から、クラスのことを描きいれていないのが残念だ。あくまでもメンバーの発言や、クラスから見たパンクシーンというのがほとんどなので、この本を読んで、イギリスでクラスの影響がどれほどあったのか、それともただのマイノリティーだったのか、音楽的にも、バンドアティチュードとしても、両方の観点の理解できなかった。その理由も当時のイギリスの音楽シーンについてほとんど語られていないから。当時のイギリスはニューウェーヴ全盛期でディスコシーンなども盛り上がっていて、都会的で華やかなバンドが多かったはず。そういった人たちがポップ・カルチャーを引っ張っていく一方、保守反動といわれたアイアン・メイデンに代表されるNWOBHMも活躍していた。パンクの核の部分だけを注出しヘヴィーに進化を遂げたハードコア。パンクの政治的な部分を右翼化したOi。そして左翼の代表例がクラスに代表されるアナーコ・パンクだ。ロックンロールをベースにしているOiは別にして、それぞれに音楽的に評価が高く、現代でもルーツとしていろんな雑誌やガイド本から取り上げられている。でもそのわりにはクラスの評価があまりにも低い気がする。政治的なパフォーマンスでぼくを含め彼らのことを評価している人はたくさんいるが、サウンド面での評価は、皆無に近いほど聞かない。たとえばいまのアタリ・ティーンエイジ・ライオットにサウンド面でも歌詞の面でも多大に影響をあたえているのは間違いないはずなのに、そういった声も聞かない。

     そういった意味では、アンダーグランドで埋もれたままのものを再評価し、日本語訳として出版したこの本は評価できる。ぼくの知る限りではディスチャージなどの日本語訳の伝記本は発売されていない。なのにディスチャージよりもさらにマイナーなクラスを日本語訳として発売した。彼らの存在を日本国民に知らしめただけでも、ものすごく価値がある。

  • 音楽と政治が密着している時代だった。サッチャリズムの暴挙に若者達がノーフュチャーと鬨の声を挙げ反旗を翻す。パンクの誕生。中でもCRASSは一際政治色が強くアクティブだった。私もその挑発的な歌詞に啓蒙された一人だ。コミューンで自給自足の共同生活を営み自主制作でレコードをリリース続ける彼(彼女)らに鋼の強さを感じた。しかしパーソナルな政治運動が組織へのレジスタンスへと移行し、フォークランド戦争勃発を機に己の無力さに打ち拉がれる。痛々しいほど。それでも今も私はCRASSのマインドにこそ希望の光があると信じてる。

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