見知らぬ国のスケッチ:アライバルの世界

  • 河出書房新社
4.06
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本棚登録 : 169
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309274577

作品紹介・あらすじ

「物語というものは、どこからやって来るのか。あのとき見せられた美しく奇妙な世界は、いったい何だったのか。――なるほど、みんなここに書いてありました。」――道尾秀介(作家)

「『アライバル』を超えるものは、もうないだろうと思っていた。
この「ショーン・タンの頭の中を覗く」という試みは、観るものをさらに刺激し、魅了する。
本作は紛れもなく、彼の新たな代表作だ。」――小島秀夫(ゲームデザイナー/「メタルギア」シリーズ監督

感想・レビュー・書評

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  • 「アライバル」に感動した・最高・ファンです、といった方にはぜひ「アライバル」と合わせて読んでほしい最高の一冊。
    「アライバル」というグラフィック・ノベルの作品解説や作品製作過程、作者ショーン・タンの作品製作にあたっての考え方や思いを知ることができる。

    もう見惚れますわ〜〜〜〜
    「アライバル」本編には組み入れることのできなかった構想スケッチなども豊富にのっていてまさに最高な解説本…
    ショーン・タンのバックボーンや、それにより「移民の物語」へ惹きつけられるという話も見どころ。
    実際に作品の構想にあたって、作者の父親含めさまざまな移民のひとたちから取材しており、何人かの移民の話も構想の参考にさせてもらったとして紹介されている。
    そういう意味では移民について興味があったり勉強したりしてる人にもおすすめです。

    「アライバル」本書あとがきにも述べられていた、「Coming South」という移民の長い航海の様子を描いた絵をアライバルにオマージュした一枚があり、その2つの絵を並べて見せてくれていたりもする。
    構図には確かにリスペクトを感じるが、移民たちの様子には、「アライバル」中の移民たちの国を固定したくなかったという作者の意図を含んだオリジナリティをも同時に感じた。
    何よりこういった緻密な絵が、主に鉛筆で描かれていることにもう感動のため息が出た。
    いや何で描かれてたとしてもため息が出るけども。
    「Coming South」以外にもオマージュをしたり、たくさんの参考資料を基に描かれていることが文章・スケッチ共からよくわかり、改めてものすごい取材力と仕事量と熱量と構想を感じた。
    すっげぇ…

    表紙にも描かれている架空の不思議な生き物を描くにあたって、粘土で模型を作ったり、架空の国を描くにあたり写真のコラージュやPC加工などあらゆる道具や手法を使って描かれていたのだと本当に感動。
    鳥をモチーフにした架空の生き物が多いのはそういう理由だったのか…としみじみ。
    製作過程や表現方法をこんな感じだよ!と惜しげもなく載せてくれているので、ものづくりに興味がある人は読んで損ないかと…マジで絵が上手い…

    幻想的なこの表現にはこんな考えや思いが込められていたんだとわかるのも嬉しいが、決して作者は自分の解釈を至上としておらず、練り上げた本人なのにまるで自身も一読者であるかのように作品への思いが綴られている。
    解説書読んでなお、読者…こちらに幅のある作品解釈をさせてくれる姿勢も好ましい…すごい…
    架空の生き物ちゃんかわいくて好きなのでグッズほしい…(突然の物欲)

    この「見知らぬ国のスケッチ」が邦訳・出版されたことに感謝。最高。


    以下備忘録がてら章題(多分)を載せておく。
    章題と外れたところにもメモのようにコメントが述べられており、それらも必見。

    ・イントロダクション
    ・帰属意識(本作の根本な気がする)
    ・リサーチ(すごい!)
    ・長い旅路
    ・新しい街
    ・言語(作中の理解不能なオリジナル言語の製作過程が述べられている)
    ・コンパニオン・アニマル(不思議な生き物の構想経緯や架空の生き物への象徴的な思いなど)
    ・住まい(やはり感じるこだわり)
    ・模型(アイデア発展のためにコラージュや模型作るんだふーんそれで完成じゃないんだすごすぎか…コラージュだけでもうお腹一杯です)
    ・完成図(とうとう!ここでも綿密な制作過程が…)

  • 著者による解説。読みたいような、読んでなにかが失われるのが怖いような。薄目で読む。
    ショーン・タンは思索的で意味的な人と感じる。
    このコンパニオンアニマル、ぬいぐるみとして商品化されないかなぁ。。

  • 奇妙な絵だな〜、だけど伝えたいことは何となく分かる…と思っていたショーン・タン氏の「アライバル」。
    本書は、その「アライバル」を作り上げた過程について書かれた本。
    移民の人々を取材して描いたということ。
    作者の意図、思いが分かって良かった。
    また改めて、「アライバル」を読みたいと思った。

    • Manideさん
      なおなおさん、こんばんは。
      ほんとですね、私も同じように、
      憂鬱になってます(笑)

      アライバルは、戦争がテーマなのかと感じていましたが、移...
      なおなおさん、こんばんは。
      ほんとですね、私も同じように、
      憂鬱になってます(笑)

      アライバルは、戦争がテーマなのかと感じていましたが、移民ですか…なるほど。私は旅行でしか日本を出てませんが、なんとなくわかります。いろいろな理由がある上に、人も場所も変わって、あんな顔になるんでしょうね、きっと。

      ショーンタンさん、好きですけど、深いですよね。
      考えると憂鬱が深まりそうなので、日曜日は見ない方がいいですね⁽⁽(ཀ д ཀ)⁾⁾
      2023/07/02
    • なおなおさん
      Manideさん、戦争も関係ありそうですよね。
      いつ何時、移住を余儀なくされてもおかしくない情勢というか。
      色々と深いですよね、ショーン・タ...
      Manideさん、戦争も関係ありそうですよね。
      いつ何時、移住を余儀なくされてもおかしくない情勢というか。
      色々と深いですよね、ショーン・タンさんの話。

      さて、サザエさんタイムも終わりました(T_T)
      どうしましょうか…。
      まだ自由、でも寝ちゃうと明日が来る(T_T)…ってことを考えながら、毎日毎日この微妙な時間を過ごしております^^;
      2023/07/02
    • Manideさん
      今日も終わりっちゃいますね。
      つまらない空気感が伝わってきましたよww

      ショーン・タンさんのエリックが、まだ観てないようだったら、オススメ...
      今日も終わりっちゃいますね。
      つまらない空気感が伝わってきましたよww

      ショーン・タンさんのエリックが、まだ観てないようだったら、オススメですよ。キュンキュンしますよ。きっと。

      また、月曜からキュンキュンしていきましょうね。
      おやすみなさい (ꆨ❥ꆨ)/""
      2023/07/02
  • 文字のない大人の絵本『アライバル』の〝移民の物語〟の世界を、奇抜な構想と奇妙なイラストで異次元の世界へと誘われた読者へ、 そのアイデアの原点を創作者自身が語った『The Art of The Arrival』の世界。 作品全体に漂う〝異邦人〟の意識感覚は、作者ショ-ン・ダンの生い立ち(中国人の父とアイルランド人とイギリス人を先祖とするオーストラリア人)、複数の人種を祖先にもつ非先住民のもつ帰属意識からきているようで、〝異国〟の地に活路を求めた人々の希望と不安が、幻想の風景に混然と投影されています。

  • <SKETCHES FROM A NAMELESS LAND : The Art of The Arrival>
      
    日本語版デザイン・装丁/永松大剛(BUFFALO.GYM)

  • ※再読

  •  確かに、作品は、國を追はれた事がない人が、まぁ考へてやってみました的な作品であったが、作者先生ご本人は確かにさう言ふ経験がないとか。

     あの、a若干可愛くて、b若干うざったくて、cキャラクターが、それを認めるとなんとなく安心するんだらう的な、ソレをかう説明してくれると、なんか納得する。

  • 「僕はいつも、自分の作品の制作過程を単なる目標達成のための手段だと考えている。ところがその一方で、自分以外のアーティストのスケッチブックには興味をそそられる。アイディアの原点、実体験との関係、数えきれないほどの選択や問題を見るのが、僕はとても好きだ。」

    「アーティストはしばしば、夜の中を"純真な目"で理解しようとする。慣れ親しんだものをまったく知らない者の視点で見ようとしたり、ありふれたあありまえの状態に不思議に見いだそうとしたりする。多くの点で、それは移民の敬虔に似ている。異国に渡るとこは、二回目の子供時代に突入するようなものだ。」

    「僕を前に進ませていたのは、遊び心にあふれた、難解で興味のつきない疑問だ一『もしも~だったら?』」

    「とるにたらない光景がどのように何かを象徴して、どのように感情という共通通貨に変換されるのか、そういうことに興味がある。」

    「過去とは人々が恣意的に想像力を働かせて心に留めているひとつの独立した国だと考えると、、歴史と夢と芸術はよく似ている。」

  • そうだったのか。と、アライバルの感動マシマシに。セットで読むべし。

  • ショーン・タン氏の世界がぎっしり詰まっている。構図もさすがとしか言えない。

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著者プロフィール

1974 年オーストラリア生まれ。幼いころから絵を描くことが得意で、学生時代にはSF 雑誌で活躍。西オーストラリア大学では美術と英文学を修める。オーストラリア児童図書賞など数々の賞を受賞。2006 年に刊行した『アライバル』は世界中で翻訳出版されている。イラストレーター、絵本作家として活躍する一方、舞台監督、映画のコンセプトアーティストとしての活躍の場を拡げている。9年の歳月をかけて映画化した『ロスト・シング』で2010 年に第83回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞。2011年にはアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。2019年には日本で初めての展覧会を開催。現在メルボルン在住。

「2020年 『ショーン・タン カレンダー 2021』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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