かわいい闇

制作 : Marie Pommepuy  Fabien Vehlmann  Kerasco¨et  原 正人 
  • 河出書房新社
4.40
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本棚登録 : 137
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (102ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309274904

感想・レビュー・書評

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  • <フェアリーテールの『蝿の王』>


    フランスのバンドデシネ(BD)である。タイトルが暗示するように、相当に強烈である。
    トラウマ的とも言えるので、プロローグでダメだと思ったら、やめておいた方がよいかもしれない。しかし、プロローグを読んでしまったら、え、これはどうなるのか、と読まずにはいられなくなる危険性はありそうだ。

    無邪気ともいえる絵柄で描かれる、ぞっとする世界観。時折混じる、写実的で圧倒的に「うまい」絵。
    生と死。その境界。
    善と悪。その境界。
    光と闇。その境界。
    美と醜。その境界。
    かわいいとグロテスク。その境界。
    それらがそれほど確固たるものなのか、ずっと揺さぶられ続けるようでもある。
    生理的に攻めてくるエピソードも多いので、長くはない話だが、精神的にかなり消耗する。

    物語の設定が完全に説明されるわけではなく、多くの部分は読者の想像にゆだねられている。だが、簡単にいえば、これは普段は人の体の中に住んでいるらしい「妖精」たちが、あるとき突然、住処を失ったことによる、サバイバルストーリーだ。そしてそのサバイバルは決して清く明るいものではなく、多分にゴールディングの『蝿の王』を思い出させるものである。しかも、おそらく、主要登場人物が「女の子」たちであるがゆえに、元祖『蝿の王』よりもさらにえげつなく残酷だ。
    途中に出てくる蝿のアップは羽音まで聞こえそうで、ベルゼブブ(これ、きっと名前の元に擬音が入っているのではないかと・・・。どうなんだろうか・・・?)を思い出す。

    ハッピーエンドと取るか、人にもよりそうだし、読むときにもよりそうだ。
    ある意味、残酷な幕切れだけれど、結局はおとぎ話の多くは、残酷なものではないか、と思わぬでもない。

  • いやいやいや...。痛いよ~。すごい漫画だと思うけど、へこむ。完全に打ちひしがれるよ、これ...。ストーリーは社会の縮図。絵は、」かわいらしく描かれた小人たちとリアルに描き込まれた植物・動物がうまく調和していると思う。オロール、純な彼女だからこそ、闇へもまっしぐらに突き進んだのか。血だらけのネズミの皮をかぶったオロール、最後、一点を凝視するオロールの絵に泣いた。

  • 可愛い絵柄とは裏腹に、とても残酷な話です。
    ただ話を追って読むと一つの物語のように思えますが、一つ一つの描写に注目すると、様々な物語が見つかります。何度も何度も読み返したくなる作品です。

  • これはおもしろい。ひさびさに当たりの海外マンガ。
    森の中で暮らすかわいい小人たちの物語なのだけど、実は少女の死体から這い出してきた者たち。少女の死体が腐敗し蛆に食い荒らされていく横で小人たちの生活は営まれ、そしてそれも互いの無邪気な悪意によって崩壊していく。
    可愛らしい作画とグロテスクなシチュエーションのバランスがとてもいい。
    44

  • フランスのフルカラー漫画(バンド・デシネっていうのか…)。
    愛らしい絵柄でなかなかのエグさ。
    状況の解釈は、あとがきにあるように色々取れるし、無数の少女達も同様。
    一人の少女の周囲にいる現実の少女達でもあり、一人の少女の内側にいるたくさんの彼女自身でもあるのだと思う。
    それをこんな風に表現するのが好みだった。

  • 学校の図書室にての読了。まさか3000円もする本を買ってくれるとは思わなかったが買ってくれたウチの高校にまず感謝します。読み終わった後になんとも言えない感情になりました。感動する話じゃなかったけどある種の感動を覚えました。とにかく凄い。色々と読み手によって解釈が変わってくる作品なのでなんとも言えませんが主人公であるオロールはあの少女そのものだったんだろうなと感じました。(少女の私物に書いてある名前を見て私の名前だと言ったところなどを踏まえて)そして少女の体が腐っていくのを見て泣くオロールのシーンはなんとも言えませんでした。 そしてどんどん残酷になっていく小人たちの世界を見てるとグリム童話のように現実は甘くないのだということを痛感させられました。 そして仲間の小人たちを焼き殺したオロールの表情がたまらなく好きでした。

  • 凄い。何が凄いって、メンヘンの持つあどけなさと残酷さを、淡々と、でも容赦なく描いているところ。幼い頃の悪夢を大人の目で見つめ直すとこうなるのかも。

  • 死んだ女の子の体から出てきた「かわいい」キャラクターたちのうす暗いストーリー。
    キャラクターたちのポップな可愛らしさと、背景の写実性がギャップを生んでいる。

  • 少女の体内で生活していた小人たち。少女が森の中で息絶えたことをきっかけに、身体から出て各々生活することになった。小人のひとり、少女オロール視点で描いたB.D.(バンドデシネ、フランス発の漫画)──。
    A4サイズぐらいあります。『風が吹くとき』同様のブラックさといえば伝わるでしょうか。次々と小人たちが死ぬ展開にウッとなった。普段こういう系統は読まないので若干トラウマになりそうです。後書きで、絵本と思い子供用にプレゼントで購入、後日返品されたというエピソードがあり、思わずそりゃそうだと頷かざる得なかった。

  •  どこかの美しい森。小人(妖精)たちは平和な暮らしを享受していたが、ある日、寄生していた少女の死体の腐敗が進み、外界へと投げ出される。ここから、安住の地を失った小人たちの壮絶なサバイバルが始まる。
     暖かで優しい色づかいや絵本のような可愛らしい絵柄とは裏腹に、物語の底には無邪気で残酷な死が横たわる。決して後味がいいとは言えない本書は、フランスでは「まるで未確認飛行物体のように受け入れられた」という。バンドデシネとはフランス語圏を中心とした漫画で、邦訳もいつかあるが、そのどれとも似ていない斬新な一冊。

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著者プロフィール

1978年ブレスト生まれ。オリヴィエ・ド・セール美術学校で学び、在学中にセバスティアン・コセに出会う。マリーはその後、エスティエンヌ美術学校で医療イラストを学んだ。

「2014年 『かわいい闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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