むしのほん

  • 河出書房新社
3.45
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本棚登録 : 338
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309275475

作品紹介・あらすじ

カラフルなむしたちの せいかつを だいなしにした くろいむし…… 生きていく哀しさと美しさを描いた傑作。オールカラー。

感想・レビュー・書評

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  • エドワード・ゴーリーらしい、後味の悪い本だ。
    でも他の作品とくらべたらまだまし。これでも。

    物語はいたってシンプル。
    赤い虫と青い虫と黄色い虫はとても仲がいい。
    ある日、「だれともしんせきでない」1匹の黒い虫が現れる。
    黒い虫は他の虫たちの「しゃこうせいかつ」の邪魔をする。そこで、他の虫たちは力を合わせて黒い虫をぺしゃんこにしてしまう。
    みごと黒い虫をやっつけた虫たちは大喜び。
    わざとにちがいないけど、「他者を排除しようぜ万歳!」みたいな結末。

    でも本作の物語、現実にはほんとによくあることで、こんな平凡といってもよい出来事がわざわざ絵本にされると、こんなにも後味が悪いものなのだな。
    しかもこの本、クリスマスのギフト本として作られたのだそう。ほんとに意地が悪い(笑)

  • 毎日楽しく暮らしていた
    7匹の虫達の元へ
    ある日
    <災い>が訪れて
    すったもんだがあった後の、さいごのページ。

    「だれもがそれはそれは
     たのしいときをすごしたのでした。」
        
          おわり。」

    なるほど。
    さすがだ、ゴーリー。

    >俺はここで話を終わらせるが、
     あとのことは知ったこっちゃないぜ。
     虫達の腹の中なんか、俺にわかるはずないからな。

    クリスマスのギフト本として描かれたらしい
    本作品は
    ゴーリーにしては珍しく綺麗なお話に仕上げられている。

    が、
    読み終えたページの隙間から出てきたもやもやが
    やがて
    子供達用の「にせものの終わり」をすっかり覆い隠してしまうと、別なお話が現れる
    これはある意味仕掛け本なのかも知れない。(笑

  • ゴーリーのえがくむしのせかい。不条理感はない。

  • 子供は喜び、大人は考え込んでしまうような絵本。

    むしろ物語後が気になる…。虫たちは一見、いままでと同じ穏やかで明るい日常生活に戻ったようだけど、心の底では自分も相手も殺人者だと知っている。

    残酷な殺人者同士とわかっていて、穏やかで明るい生活を取り繕い続けていけるのだろうか。どこか奥のほうから腐臭がしないものかしら…などと考えてしまった。疲れてるのかな自分。

  • ◆黒も白も青も、たいていのゴーリー本は好きなのだけれど、この本は嫌い。世界の小ささ・限界を突きつけられる。買えなかった。
    ✴︎✴︎✴︎
    極めて勧善懲悪しか描かれていない勧善懲悪な本なのに、勧善懲悪な読後感がない……。息苦しい。やはりゴーリーは天才。

  • みんな大好きエドワード・ゴーリー
    「くろいむし」の運命やいかに?

    会期末ぎりぎり間に合ったエドワード・ゴーリー展@松濤美術館も楽しかった!

  • エドワードゴーリーのいつも白黒のタッチとは違い、カラフルなのが新鮮だった。可愛い虫の話で、みんなで嫌なヤツをやっつけるのが面白い。クリスマスプレゼントとして限定販売されてたと言うのがなんともゴーリーっぽい。当時は差別的だと非難されたと言うが、ゴーリーを知らない人たちが言ってたんだろうなと思う。

  • 生き生きとした虫たちの描写に淡々と進んでいく物語。
    そしてオチはやっぱりゴーリー。と、思ったけど
    桃太郎だってこんな感じで悪者退治してるなぁと
    感じました。そして、これがクリスマスのギフト本
    だったということにビックリ。これはクリスマスに
    もらっても嬉しくないかも…( ̄▽ ̄;)

  • ゴーリー本の中では意外にもかわいらしい勧善懲悪的絵本。でもこんな本でも差別とかの対象にされてしまったりしたとはなぁ。いつの時代も表現の自由ってなんなんだろう。

  • 勝ち残ったものたちの物語

    赤いむしと青いむし、黄色いむしたちのグループは皆、縁つづきの仲良しだった。そこに一匹の黒いむしがやってきた。3色のむしたちは黒いむしと仲良くしようとこころみるがうまくいかなかった。3色の虫たちは結束してある計画を行動に移す…

     アリを思わせるシンプルな身体を持ったむしたちの物語は、全てをそぎ落としてその身体以上にシンプル。結果的に黒いむしは3色のむしたちの起こした行動により排除される事になり3色のむしたちは平穏な生活を取り戻す。たったそれだけのはなし。だがそれは、はるか太古の昔から人の間で繰り返されてきた歴史をズバリと物語る。

     すなわち歴史とは自分と価値観の違うものを排除して勝ち残ったものたちの物語だということだ。「3色のむしたちからみれば」黒いむしは身体も大きく自分たちの生活をおびやかす「悪」に過ぎない。ゴーリーの描くその姿かたちも見るからに悪そうだ。だから彼らは黒いむしを排除し滅ぼした。しかし勝ち残ったものが常に正義であるとは限らない。にもかかわらず勝者からみれば敗者はつねに黒いむしなのである。

     著者・ゴーリーはこの一見勧善懲悪のシンプルなむしたちの物語について、それが良いとか悪いとかは一切意図していない。ここにはしかしあることがあるがままに書かれたことによって、おのずと立ち現れた真理のようなものがある。一見かわいいむしたちのこの物語、これ、絵がむしじゃなくて人間で描かれていたら…想像すれば背筋が寒くなる。

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著者プロフィール

1925年シカゴ生まれ。独特の韻を踏んだ文章とモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表。おもな邦訳に『うろんな客』『ギャシュリークラムのちびっ子たち』など。2000年没。

「2023年 『どんどん変に…』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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