わたしの身体はままならない: 〈障害者のリアルに迫るゼミ〉特別講義

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309290935

感想・レビュー・書評

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  • 「そっちの世界、どうなっているの?」

    『はじめに』のいちばん始めに置かれているこの言葉は、東京工業大学准教授の伊藤亜紗さんが、他者に関心が起こりはじめるときの気持ちだとして語ってくれたものだそう。

    本書は障害のある当事者、社会的マイノリティの方々の手記や対談をまとめたもの。
    まさに、「そっちの世界、どうなってるの?」が、たくさん詰まった、他者への扉の本。

    みなさん、文章が上手く、個性的で、書きづらいことも正直に書かれているように思う。

    気になったのは、ゲイでHIVに感染している桐島優太さん、咳止めシロップ依存症だった笹嶋敏さん、路上生活者である女性のいちむらみさこさん、解離性同一性障害で性同一性障害で発達障害のharuさん。

    haruさんは著作を図書館で見つけたことある気がするので借りてみようと思う。

    笹嶋さんは、いちばん、共感を覚えてしまった。
    性格がなんだか似ている気がして、胸が痛い。
    私が咳止めシロップ依存症ではないのは、その機会がなかっただけに思えて来る。

    何かの本かネットに書いてあったのだが、自分と他者の共通項を見出だす性質は、原始の人々のほうが強かったらしい。
    逆に、現代人は他者との差異を見つけだす傾向があるらしいです。

    私は原始人なのか、と、思った。←なんのこっちゃ

    イラストは高野文子さん。

    • naonaonao16gさん
      そうだ、5552さん、『エルピス』見てます??めっちゃ面白いですこのドラマ!
      そうだ、5552さん、『エルピス』見てます??めっちゃ面白いですこのドラマ!
      2022/12/12
    • 5552さん
      naonaonao16gさん

      知ろうとする原動力ですか?
      うーん、「私以外の人生を見てみたい」「いわゆる【普通】から弾かれた人たちが...
      naonaonao16gさん

      知ろうとする原動力ですか?
      うーん、「私以外の人生を見てみたい」「いわゆる【普通】から弾かれた人たちがどんな風に生きているのか知りたい」とかですかね…。
      まるっきり自分のために読んでいたり、レビューを書いていたりするので、別に偉くも凄くもありませんよ〜。
      自分が【普通】の人生のレールから外れた人間なので、他の方を参考にしようとしているだけです。

      『エルピス』途中まで観ていたのですが、何となく、見忘れが続き、昨日久しぶりに観てみました。
      恵那の目の上のたんこぶだった上司が、いつのまにか、共闘していてびっくり。面白いですね。
      スパンが空いてしまったので、意味わかんなかったら、見るのをやめて、あとでDVD一気見、と考えていたのですが、結局最後まで観てしまいました。
      それにしても、色気のある男性ばかりなことよ! 笑

      ダメダメな日、ありますよね〜。
      そんな日は自分への採点が厳しくなりがちだと思いますから、たまには、ちょっと自分に甘くして、あえて背徳を楽しむというのもいいかもですね。
      もちろん、節度は保ちつつ…。



      2022/12/13
    • naonaonao16gさん
      5552さん

      おはようございます!

      なるほど、ご自身と重ねながら読んでいらっしゃる、という感じでしょうか?
      まるっきり自分のためかもしれ...
      5552さん

      おはようございます!

      なるほど、ご自身と重ねながら読んでいらっしゃる、という感じでしょうか?
      まるっきり自分のためかもしれないですけど、「知ろうとすること」が偉いなぁと思いました。

      何となく見忘れが続いてしまうのはドラマあるあるですね!笑
      あの上司、わたしも最初は大嫌いで、そうなった場合にわたしは人のいいところを見つけるのが大変なのですが、自動的に好きにならせてくれる構成になってました笑
      『トラベルナース』超え、今期ベストドラマかもしれません…!でも、色気でいうとやはり岡田将生が…笑

      先日はダメすぎてごはんを作る気力もなく、久々に出前館を使いました!
      しょっぱいお蕎麦に癒されました(* ´ ` *)ᐝ
      背徳…(* ´ ` *)ᐝ
      2022/12/14
  • 障害やマイノリティの立場、それらを支援する立場の人々15人が綴る、まさに「障害者のリアルに迫る」本だ。
    障害者の性生活、女性ホームレス、LGBTQ+、脳機能障害、我が子の死産を経験した人…一言では語りきれないさまざまな話が、さまざまな立場の方々から溢れてくる。こんなにも多彩で、知らないことがたくさんあったのだと突きつけられる。
    なんと感想を書くのが良いのか分からないくらい、ただ綴ってくれて、教えてくれてありがとうとしか言いようがない良書だ。
    一言ではこの本の良いところが表せない。
    もうぜひ読んでみてほしい。それしか伝えられない。

  • こんな時に読みたい
    ・生きづらさを感じた時
    ・生きづらさを感じている友人や家族について考えたい時
    ・テレビの特集等でマイノリティーについて知った時
    ・福祉・介護・障害に関心を持った時
    ・自身の生きづらさと向き合いたい時
    ・他の体験記等を読んだ時
    ・他の人の人生経験を知りたいと思った時
    もう一度読み返すなら
    ・haruさんの章を読み返したい。彼の文は他の方より詩的でとっつきやすかった。他の方のものは少し学術的で疲れていると読むのがしんどいものもあった。
    この本を読んで得た学び
    ・同じ障害でも同じ経験をするわけではないし同じ症状が出るとも限らない。
    ・助けを求める、とは委ねることでもあるが、疑いながら信じることなのかもしれないと思った。(伊藤亜紗さんの文から)
    ・障害と無関係な人はいない。→障害が社会モデルになればなるほど関係を持たずに生きられる人は減るのではないか。
    「そっちの世界どうなってるの?」と投げかけた伊藤さんの話はほぼ体験談の引用と考察だけだったのが少し残念。
    彼女の世界を知りたい方はこちらの本を読んでみてほしい。
    「きみの体は何者か:なぜ思い通りにならないのか?」


    *ブクログのガイドを使って書きました。

    ・関連本→「顔ニモマケズ」

  • HIV患者や精神、身体障害者、奇形な顔面を持つトリーチャーコリンズ症候群の方など色々な障害を持った方の話。

    「自分の体なのに、ままならない。自由に動かせない」歯がゆさ、とても伝わってきた。
    自分も吃音で、言葉がスムーズに口から出せない。普段は障害者の意識なく生活しているが、広義では一種の言語障害者なのだ。
    自分を障害者だと認識した時、胸がザワザワするのは何故なのだろう。


    トリーチャーコリンズ症候群の石田さんがいいことを書いている。

    彼が大切だと思う3つのこと。
    「知識」
    知らないことは誤解を生む。しかし知ってさえいれば驚きは減り、慣れていく。
    それが皆が生きやすい世の中になることへ繋がっていくのではないか。

    「受容」
    知識を得た上で多様な人々の存在を受け入れることができる。

    「思いやり」
    特別に何かをしてあげる、ことよりもさり気ない何か、が嬉しい。
    ただ普通に関わりながら、相手のことをちょっと思いやってみる。ちょっと手を差し伸べてくれたり、寄り添ってくれるだけで、私たち当事者は嬉しいのだ。


    以上の視点は何も障害者に対してに限らず、マイノリティ、マジョリティ含めた皆が生きている社会においても大切なことだ。

  • 障害や病気のある方のリアルなお話にふれられる一冊。

    世界はどのように見えているかが率直に綴られていて、いろんな方の声をきいているような気持ちになりました。

    戸惑い、とめられない行動、変化が起きたときのこと、安心と信頼のこと、、きっと文字になっているのはほんの一部で、けれどもとてもリアルで、読みながら、内側から揺さぶられているように感じました。

    読むのにエネルギーも必要だったので、読むタイミングも大切にできたらよさそう、と思いました。

  • 計15名の当事者が語る形式。障がい者の親だったり同性愛者、難病、薬物中毒者などどの話も短いのに濃くてあっという間に読み終わってしまった。

    有名な石田さんも最近youtubeで知ったharuさんも文章が上手で人となりが伝わってくる優しさがあった。他の方もみんなユニークだったりしてすごく良い。

    特に同性愛の「パーフェクト」は赤裸々に語っていてインパクトがあった。ここまで素直に心情を語ってくれると清々しく生々しくとてもリアルに感じる。

    「砂袋を浮き袋に」小説のよう。性同一性障害であり発達障害で解離性同一性障害のharuさん。動画で見た時の印象と同じく文面からも穏やかで繊細な印象を受けた。

    対談のコーナーでは相模原事件についても語っていて盛りだくさんの内容。

    冒頭の言葉にでてくる「そっちの世界はどうなってるの?」に答えてくれる本だった。

    障害というのはこの社会が求める人物像から外れた時決められるものだから。というワードは印象深くその通りだと思った。

  • 論説とか活動に関する話は、良くも悪くも人物不在の話になってしまうのですが、この本は語る人物をありありと感じることができました。ままならない状況、身体、けど時間は止まるわけでもないし何かとは関わらなければならない。何かをしなければならないというところから完全に逃れるのは難しいのだと思うのですが、語りを傍で聞いたような気持ちに少しなりました。読み終えた今、必読と感じています。

  • 障がい当事者、支える側にいる人など、ままならなさと共に生きる人たちが語る本。
    薬物中毒の方の語りは、淡々としていて嘘やごまかしは無いように思えるところが、スッと入ってきた。
    ラストのホームレス女性支援をしている女性の方の話が1番好き。
    ラストから2人目の、双子を亡くした方の話は、読みながら泣いてしまったので、もし外で読むときはお気をつけを。

  • 障害とは何か。障害のない人が感覚として認知していた表面的な意味ではなく、障害を生活の一部として過ごしている、当事者たちが語るリアルが詰まった1冊。
    知らなかったこと、気付かないようにしていたこと、見ないフリをしてきたこと。読みながらセンシティブな部分に触れすぎて気持ちが重くなる部分もあったけれど…こういったリアルな声は発するのも届けるのも大変なはず。それぞれの著者の伝えたい想いが、障害を表面的にしか理解していなかった自分にとても刺さりました。

  • 「常識とは、生まれた環境で身についた偏見である」

    Diversity や Equity や Inclusion や Belonging を理解したつもりになっていたとしても、それらは学者や批評家の視点のトレースであることが多いように思う。社会や集団の「常識」や「普通」という型に嵌められる苦しさは誰もが多かれ少なかれ感じているが、障害者の視点でこれを考える機会は僅少だ。僕らはあまりに知らなすぎるし、目を背けてしまっている。

    他者のことも自分自身のことも、知らないから、よくわかっていないから、得体の知れない不安に苛まれてしまう。自分が安心したいがために、つい距離を置いたり、時には他者を排除しようとしてしまうのが人間の業なのかもしれない。けれども、一人ひとり異なることこそが「普通」だということに気づくことが、包摂的な社会をつくるための第一歩だと確信した。

    そうは言っても、現実は「同じようになれないなら、どこかへ行け」と、社会環境を定数と見なして同化・順応できない者を排除する社会が多様性を阻害していることの方が多いように感じる。一方で、本書でも紹介される「社会モデル」のように、社会の側も変数であり、変えられるものと捉えることもできる。変えられるものと変えられないものを冷静に見定めなければならない。
    一方で、社会環境が変数となり液状化していくことで背中を押される人もいれば、新たにスティグマを刻まれて苦しむ人も生まれ得る。価値観の押し付けやエンパシーの脆弱性もつきまとう。

    本書中の「知識、受容、思いやり」というフレーズが印象に残った。知ることは第一歩だが、知ったつもりになって型に嵌めることは危険だ。他者を完全に理解することはできない。知ったとしても、わかりあえる訳ではない。けれども、他者を知った上で・それを受けとめ・思いやることには、何も知らずに・無関心で・排除することとの間に雲泥の差がある。

    全く知らないものを信じることは難しい。他者を知ることで、慮ったり、信じたりすることができるようになるかもしれない。ただし、利己的な不安に駆動されただけの「知りたい」欲求には注意が必要だ。それは、単に自分が安心したいだけであって、他者を信じることとは対極にある。何かをコントロールしたり、できることを増やすことで自己の不安を取り除くのではなく、自分にはできないことをオープンにして、他者を信じられるようになることが、本当の自信と安心につながる。
    互いの「障害」を知ることは、翻って自分は何者なのかという問いに向き合うことでもある。お互いが異なるからこそ、分かち合う歓びがある。

    知ることには、深慮が求められる。しかしながら、平井秀幸が「深慮主義」だとして指摘しているように、ダイバーシティや包摂性を深慮できる人のみを礼賛・欽仰することは、それからこぼれ落ちる人を蔑視・排斥することにもつながりかねない。本来、ただいること・あること、生きるための営みとそれに対する必要性が先であるはずなのに、市場経済的価値を生み出せる生産性が無二の価値軸のように社会や集団の「常識」や「普通」が形成されていく...。ただやはり、お互いを知ることの先にしか光は見えないと思った。

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著者プロフィール

熊谷晋一郎(くまがや・しんいちろう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授、小児科医。脳性マヒの電動車いすユーザー。専門は小児科学、当事者研究。著書に『リハビリの夜』(医学書院、2009年)、『みんなの当事者研究』(編著、金剛出版、2017年)、『当事者研究と専門知―生き延びるための知の再配置、2018年』(編著、金剛出版)、『当事者研究をはじめよう』(編著、金剛出版、2019年)など。

「2022年 『自由に生きるための知性とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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