アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? ; これからの経済と女性の話

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309300160

感想・レビュー・書評

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  • 『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』プロローグ無料公開 経済と女性の話をしよう|Web河出
    https://web.kawade.co.jp/bungei/26991/

    Katrine Marcal is a bestselling author on women and innovation
    https://www.katrinemarcal.com/

    アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? :カトリーン・マルサル,高橋 璃子|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309300160/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」 カトリーン・マルサル著 高橋璃子訳|日刊ゲンダイDIGITAL
      https://www.nikk...
      「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」 カトリーン・マルサル著 高橋璃子訳|日刊ゲンダイDIGITAL
      https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/299392
      2022/01/07
  •  「経済学」の本だと思って読んでみたら、「経済と女性」の本だった。作者はスウェーデン出身の女性ジャーナリスト。
     
     プロローグより「フェミニズムつねに、経済を語ってきた」。また、訳者あとがきには「フェミニズム経済学は女性の置かれた立場を分析します」と。 そして「フェミニズム経済学の考え方をベースに、 既存の経済学をバサバサと斬っていく爽快な読み物」とある。

     そして「経済人」モデルが、いかに現実にそぐわないかを明らかにしている。また、経済を「ジェンダー」の問題として捉えたのが新鮮だ。こういう観点はいままでなかったと思う。 

  • 古典派経済学の父と言われ、個人の利益追求が社会の利益追求につながることがあると説いたアダム・スミス。利己的な「経済人」像の確立に大きな影響を与えたスミスは生涯独身で、食事をはじめ身の回りの世話は母親に頼っていた。でも、彼の経済学からは、主に女性が担ってきたケア労働のことがすっぽり抜け落ちているのでは?

    作者はアダム・スミスの話をつかみに、経済学が長らく無視してきたケアの問題、カウントされない経済行為の問題に踏み込んでいく。ケアは無償で行うべきものだという誤った捉え方が、常に国家の富に貢献してきた女性の労働を、ひいてはその地位を貶めていると指摘する。

    うまいタイトルだなと思う。このタイトルに心を奪われて、手にとってしまった。

    原著はリーマンショック後の2012年にスウェーデンで刊行された。刊行から10年経っての翻訳だが、2012年当時の日本ではまだ受け入れられなかったかもしれない。この間、国際的に日本の女性の地位の低さが指摘され、国内的にもケアという言葉が注目されるようになってきた。労働にはそれに見合った対価があるのが当たり前。経済活動に組み込まれるべきだろう。社会でバリバリ働く女性がいていいし、ケアに従事する主夫がいてもいい。働き方や性別で区別する意味はない。

  • <心に残った言葉>
    私たちの社会がやってきたのは、せいぜい女性を加えてかき混ぜることだった。「なりたいものになれる」という見栄えのいいスローガンは、「あらゆる役割をこなすべきだ」と読み違えられてきた。「何だってできる」は「何でもやれ」にすり替えられてきた。

    ケア労働は伝統的に女性のものとされてきたため、お金とは無縁なものに分類されている。
    ケアの仕事に女性が多いから賃金が低いのか、それとも賃金が低いから女性がその仕事につくのかという問題には容易に答えられない。明らかなのは、女性が男性よりもずっと多くのケアの仕事をしているということ。そしてケアする仕事は、愛とお金の二項対立のせいで、経済的に低く見られているという事実だ。

    愛情やケアを保護したいなら、経済から締め出すかわりに、きちんとお金とリソースを提供すべきだったのだ。何が人の暮らしにとって大切なのかを考え、それに合わせて経済を築いていくべきだったのだ。でも私たちの社会は、その逆のことをした。私たちは、経済の論理に合わせて、人のかたちを変えてしまった。

  • すごい考えさせられる本だった。

    たしかに、昔から経済は男性視点での話ばかりだったし、歴史的に見ても、男性が国や地域を占めるということがほとんどだった。

    それが現代経済でも引き継がれていて、その経済に率直な疑問をぶつけたのがこの本だと思う。

    僕は今、雇い主が女性で、その方は企業で活躍されて、今は独立している。「女性だから〜」とかそういう一言で片付けるのは大変失礼だし、女性だからこその魅力をたくさん持っている。

    「家事や育児は女性がやるもの」という考えは古い。確かに、身体の大きさや腕力といった部分は男性のが強いのは明らかだけど、頭の良さやリーダーシップ、人間性は男性も女性もフラットだし、男性よりも優れた能力を持つ女性はたくさんいる。

    そして、「女性が首相になったら戦争が起きなかったのではないか?」という疑問は、僕は激しく同意する。女性が核兵器を作って、国を破壊し合うというのが僕には想像できない。それこそ、激しい口論で、バチバチとやって解決するのではなかろうか。

    今の世の中を見るための、新しい視点をくれる本でした。

  • アダム・スミスの経済論には、食事を作ったり洗濯したりは入っていない。夕食は利益の追求によって手に入れると彼は言ったが、どうもそうでもないね?彼の母親が作ったから、彼は夕食を食べることができたのだ。

    前半は、バリバリのフェミニズム?とも思ったが、それだけじゃない。子どもを育てたり食器を洗ったり病人をケアしたり…お金にならないことは労働にカウントされず、見ないことにされてきたのだ。でもそれはあり続ける。
    誰がやるの?

    ナイチンゲールが、看護師の待遇改善に生涯をかけて取り組み、善い行いと金銭的な豊かさは両立しうると考えていたこと、これは覚えておきたい。

  • タイトルが秀逸です。アダム・スミスの食事を誰が作っていたのか、誰も真剣に考えたことがありません。実はアダム・スミスは生涯独身だったので、彼の食事は実の母親が作っていたそうです。

    結局、スミスの経済学では女性は完全に無視されています。合理的な経済人とは完全に男のことが想定されています。家事や育児を担っている人間のことは閑却されています。

    著者のマルサルさんはスウェーデンの出身だそうですが、スウェーデンでさえやはり女性に不平等な制度、慣行が多いそうです。

    男女平等度が特に低い日本は真剣に女性の地位向上に取り組むべきであると痛感しました。

  • 経済学の父と言われるアダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?というテーマから、経済学から無視された女性の役割、gender inequality について論じた本。

    学者の著作のようなゴリゴリのロジック積み上げ型ではなく、読者に語りかけるような読みやすい語り口で、女性の存在や従来女性の仕事とされてきた、ご飯を作ること、子供や夫など家族のケアをすることが、まるっと現在の経済学のモデルから無視されていることを指摘している。
    「こんなに真面目に働いているのに何かがおかしい」のは、現在の資本主義が前提にしている人間(人は利己的で常に合理的な判断をする)のモデルが間違っているから。

    面白かった。「だよね!!!」と思った。欲を言うなら、じゃあどうする?という力強い提言が欲しかった。

  • 色々とハッとさせられる名著。

    経済学がモデルとする経済人とは、完全に経済合理的な存在だが、現実には、あり得ない。利益の追求による自由競争が結果とし合理的な価値交換をもたらすが、そこにカウントされない労働がある。著者は、「利益の追求」に対し「愛の節約」という言葉を引いたが、合理性とは、まさにそういう話だ。

    〝合理性=報酬の最大化“にカウントされない労働、つまり報酬を得られない(愛による)労働に従事しているのが、多くは女性であり、まさしく経済人とは程遠い存在。

    ここでも気付きがあった。

    確かに、例えば家事を自らこなせば金銭は発生しないが、有償委託すれば金銭が発生し、GDPにカウントされる。委託する家事より、自ら従事する仕事の報酬が高くないと成立しないから、結果、家事労働の価値は下がる。女性が家事労働に従事する比率が高ければ、平均年収は下がる。また、日本のようにベビーシッターや家事代行が多くない場合、GDPにカウントされずに全体の労働生産性も下がる。つまり。愛による無報酬の労働が多い程、経済活動としてカウントされないために付加価値が下がって見える。更には、これにより税収も下がるため、無報酬の労働を可視化し、市場化させる事が課題となる。

    「女性の社会進出」には、あらゆる労働項目を経済活動としてカウントさせたいという、目的がある。だけれど、本著が主張するように、女性は経済人とは遠い存在。だから、このジレンマに折り合いをつけるためには、合理的ではない企業制度も必要。最近のアファーマティブアクションの強引さは、この辺もあるのだろう。そんな気がした一冊。

  • 産めよ、育てよ、働けよ、、、。
    無理だよ!!!!
    男性視点で作られた経済の仕組みに女性を入れてかき混ぜても女性の負担が増えるだけ。
    なるほど、そりゃそうだ。女性を潰す気か。
    女性が働きやすい環境は、男性が働きやすい環境でもある。

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