ベッドタイムアイズ (河出文庫 210A)

著者 :
  • 河出書房新社
3.16
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本棚登録 : 868
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309401973

作品紹介・あらすじ

スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。ただし、それは私の体を、であって、心では決してない。日本人の少女と黒人の恋人との出会いと別れを、痛切な抒情と鮮烈な文体で描き、選考委員各氏の激賞をうけ文芸賞を受賞した話題のベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読む山田詠美。

    黒人の米軍脱走兵スプーンと、米軍相手のクラブの歌手キムの恋物語。山田詠美の1985年のデビュー作。
    恋物語と書いたが、淡いものではない。作品の中には、濃厚なセックス描写もあり、また、酒やドラッグに、はまっている描写もある。享楽的な印象を与えるが、しかし、主人公のキムは、スプーンに、Crazy about you なのである、誰が何と言ってもという感じで。
    最後に脱走兵スプーンは、警察に捕まってしまい、キムはスプーンを失ってしまう。警察官の配慮で、連行される前、15分間だけ、キムはスプーンとの最後の二人きりの時間を持つことが出来る。人生のほとんど全てであった男との永遠の別れが15分後に迫っていることが分かっている。このシーンは、かなり切なく迫力もあった。
    読んで良かったと思える本だった。


  • クラブのシンガー、キム。脱走米兵、スプーン。
    二人の愛のセックス物語。

    チョコレートバーみたいなスプーンのディック(男性器)はキムのプッシィ(女性器)を欲しがる。何度もメイクラブ(性行為)を重ねた二人は、マザーファッカー!(悪口)やビッチ(悪口)なんて言い合いながら濃厚な時間を過ごす。
    キムの先輩、マリア姉さんもスプーンとラブアフェア(浮気)するけど、キムとスプーンの関係は壊れない。二人は身体を使ってファック(性行為)のなかで会話する。
    スプーンが警察に連行された。軍の秘密を売ろうとしていたらしい。もう彼とファック(性行為)できないけど、彼はキムの身体に染みこんでいるぜ、ベイビー。

    ---------------------------------------

    粘度が高くて濃密な、胃もたれしそうなくらいに濃厚な、男女の身体を使った愛欲の話だった。
    愛という感情なのか、性欲なのかははっきり線引きされていないけれど、ここまでファックだのディックだの言われると、そんなのどうでもよくなってしまう。
    相手を受け入れて、自分も受け入れられている。その悦び以外の感情は存在しないわけだ。

    性の悦び、と思わずにはいられないな。

  • 山田詠美作品としては二作目の読了。
    本作がデビューと言うことで、先に読んだ「ソウルミュージックラバーズオンリー」に比べると荒磨きの仕上がりって感じですね。でも既に「山田詠美文学」と言っていい独特の言葉選びのセンスがビカビカと光って眩しいくらいです。女性じゃないとかけない文章というか、オスには理解出来ないであろう感受性で、刹那的なその瞬間瞬間を艶かしく描写していて、作中の世界へ引き込む吸引力はスゴイの一言です。読んでいて何か説教じみてたり、押し付けてくるような主張とかも感じられないので、出会いから熱の上がった蜜月を過ぎ、裏切り行為に傷付き、誰にも見せてこなかったし自分でも否定し続けて来た純粋な想いに驚き、そして破滅的な別れ…と物語の筋は決して新しくもなんともありませんが、山田詠美の文章は、退廃的で傷付きやすくデリケートな彼女が出会ったばかりの男に耽溺して行く様の危うさや艶っぽさを見事に描き出していて自分の脳内で映像が浮かぶような映画を見ているような気にさせられます。そんな作品にはそうそう出会えませんからね。本当に素晴らしい作品です。

  • 初の山田詠美(たしか処女作?)
    ツイッターで考えてることがセクシーで文体がめっちゃエロい東大女子を見つけたんだけどどうやら彼女が影響を受けた作品らしい。気になって読んで見たら納得、これが師匠なんだろうなって言われなくても分かる。セクシーな文章を書くめんどくさいけどかっこいい女って感じかな、うまく説明できないけどこれはハマる。万人ウケするわけじゃないけど心底魅了される人がいるんだろうなっていう印象を受ける。ちなみにきっかけを作ってくれた東大女子、めっちゃ好き。俺も美女を落とせる文を書きたい。

  • 山田詠美さんの文藝賞を受賞したベストセラー出世作の男と女の愛の物語。黒人脱走兵スプーンと日本人少女キムの出会いと別れの物語。日本が舞台なのにキムといいマリア姉さんといい渾名か愛称で本名ではないのかもしれませんね。結局は真面目な堅物ではなくろくでなし男だから惚れちまうのでしょうね。また悲恋物語だから万人の支持を得たのでしょうね。物語の続きを想像するにキムとマリア姉さんが仲直りし、それから十年後にふらりとスプーンが帰って来て「帰ったよ、日本語を覚えたんだ」と言って大人の恋が再燃するというのは甘過ぎでしょうか。

  • 2016/02/17読了

    良くも悪くも普通 というか平凡な小説だったという印象。
    ただれた性愛関係で幕引きは突然。
    ほんとうにそれだけだったので、むしろ解説のほうが読みごたえがあったというのが正直なところ。

    愛といえば聞こえはいいが一種の風邪にしか思えなかった。

    なぜ主人公の名前は「キム」なのか
    なぜ舞台が東京なのか
    (横浜とか神戸とか港町ならまだ理解できる)
    文脈を読め、語られていないことを読めといわれるかもしれないが、なんせ「平凡」であるので何とも言いがたいのである。
    作中での「2sweet+2be=4gotten(Too sweet to be forgotten)」(P133)このセンテンスは高校時代に出会っておきたかったかな

  • 心に残らなかった。

  • 恋をした相手は、別の国の兵隊。

    感情移入もないですし、共感するところもなかったです。
    読みにくいわけでもなかったのですが
    途中で、なんかもういいかな…という気分に。

    確かに、一昔前によくありそうなドラマ展開でした。

  • 強すぎる愛はこんな形をとっていくのか。
    こんな感情を生み出すのか。

    想像以上に引き込まれた。
    文章が美しい。
    重たいけどすぐ読み終わる。
    でも後にひく後味が残るって感じの、

    スプーンをいとおしむ、そのいとおしみ方が生々しくていい。

    すごく好きな作品になったけど、すぐにまた読み返したいとは思わない、不思議な感覚にさせられた。
    自分にはこんな価値観はないが、わからなくもないというか、、、

  • 魅力ほとばしる

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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