スクリーンの夢魔 (河出文庫 121P)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309402123

作品紹介・あらすじ

偏愛する映画作家、ブニュエル、ベルイマンなどの諸作品をめぐって印象批評をくりひろげ、女優カトリーヌ・ドヌーブの妖しい魅力を分析し、はたまたお得意のドラキュラ物をはじめとする怪奇・恐怖映画の数々をとりあげながら、そのおもしろさについて蘊蓄を傾ける、独特の批評眼が随所に光る映画エッセイ集。「書斎派ダンディ」として知られた著者がまとめた唯一の映画の本!

感想・レビュー・書評

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  • 1960~1970年代に書かれた映画批評エッセイを纏めた本の文庫版。
    主に恐怖とエロティシズムについて。
    好きなものを語っているときでも客観的で冷静なのが素晴らしい。
    キーワードは(多分)「精神分析」。
    ホラーでも、それ以外のジャンルでも、
    神経症的な登場人物がスクリーンの中を闊歩していたためだろうか。

    ちなみに、過日読了した
    J.F.バーディン『悪魔に食われろ青尾蝿』解説によれば、
    アメリカでは1940年代以降、戦争の傷跡と、
    人口に膾炙したフロイトの精神分析(夢判断)などの影響で
    「ニューロティック(神経症的)スリラー」と呼ばれる
    文芸ジャンルが勃興したそうだが、
    欧米の映画界も同じ波に乗っていたということか。

    それにしても、フリードキン『エクソシスト』について、
    恐怖映画の観客への効果は、
    悪魔の超常能力によって生み出される幻影に似ている、として、

    > 悪魔憑きと悪魔祓いのテーマは、
    > 映画憑きと映画祓いのテーマの比喩だったのである。(p.21)

    と皮肉な口調で喝破する辺りはさすが。
    かと思えば、

    > エロティシズムは人間を物に変えるが、
    > 愛は人間を人間として再発見させる。(p.143)

    ――って、愛って(澁澤が! エェェェッ!!)ww
    意外な言辞にのけぞってしまったが(笑)ごもっとも。

  • 面白かったです。
    恐怖映画は基本的に観ませんが、心惹かれる作品が多くありました。古いのばかりだけど、『カリガリ博士』みたいに今も観られるのがあるか探します。
    澁澤さんが言及されてたカトリーヌ・ドヌーヴ、まともに拝見したのは『美味しい美女』というポップなカニバリズム短編映画での絶望と愛の天使役なので、もっとちゃんとしたの観ます。。
    『憂国』観たいなぁ…『悪徳の栄え』が映画化されてることに驚きました。。
    それにしても澁澤龍彦さんの知識量に圧倒されます。

  •  生前唯一の映画評論集。当然☆5つを贈りたい、贈りたいのだが、特撮ファンとして聞き捨てならないくだりがある。以下引用―
     『モスラ』のなかで、ピーナッツ姉妹が小人になって出てくる場面があったろう? そういう場合、小人と普通の人間とを、同じショットのなかで同時にならべて撮ることは、日本映画では絶対やらないんだ。いや、やればできるのかもしれないが、たぶん技術的に金がかかって困難なんだろうな。
     ―引用 終り。澁澤さん、ホントに観たんですか?

     それはさて措き、カトリーヌ・ドヌーヴに触れたエッセイは、結びの一文が微笑ましい。
     『裸婦の中の裸婦』ではシャーロット・ランプリングへの関心がうかがえる。澁澤さん、あの手の女性がお気に入り。ボードレール「痩せた女は猥褻である」のひそみに倣ったものか。

  • 『恐るべき子供たち』を見て/『エクソシスト』あるいは映画憑きと映画祓い/「マラー/サド」劇について/現代の寓話 パゾリーニ『テオレマ』を見て/ナチスをめぐる相反感情/ 『バーバレラ』あるいは未来像の逆説/『昼顔』あるいは黒眼鏡の効用について/ルイス・ブニュエルの汎性欲主義/非社会的映画のすすめ W・ワイラー『コレクター』を見て/ ベルイマン、この禁欲的精神/カリガリ博士あるいは精神分析のイロニー/サド映画私見/映画におけるエロティック・シンボリズムについて/ 恐怖映画への誘い/怪奇映画の季節 ドラキュラの夢よ、いまいずこ/ショックについて/ドラキュラはなぜこわい?恐怖についての試論/ カトリーヌ・ドヌーヴ その不思議な魅力/愛の形而上学と死刑 大島渚『絞死刑』について/階級闘争か生物学主義か 大島渚『忍者武芸帳』を見て/ 黒い血の衝撃 三島由紀夫『憂国』を見て/デパートのなかの夢魔『白日夢』のノスタルジアについて/エロス的風俗に関する対話

  • 澁澤龍彦による偏愛的映画論。1978年の刊行なので、取り上げられている映画はいささか古いのだが、いずれも映画史に残る傑作揃い。特に偏愛の対象となっているのがルイス・ブニュエル。『アンダルシアの犬』、『昼顔』、『哀しみのトリスターナ』などがそうだ。つまり、デカダンスと陰影とエロティシズムを兼ね備えた作品ということに他ならない。ちなみに、女優ではカトリーヌ・ドヌーヴが澁澤氏のお眼鏡に叶うのだが、これもいかにもそうだろうな、と思わせる選択。なお、ベルイマンを「禁欲」という観点から捉えているのには深く納得した。
     武智鉄二の『は白日夢』、三島由紀夫の『憂国』をぜひ見てみたいものだ。

  • [ 内容 ]
    偏愛する映画作家、ブニュエル、ベルイマンなどの諸作品をめぐって印象批評をくりひろげ、女優カトリーヌ・ドヌーブの妖しい魅力を分析し、はたまたお得意のドラキュラ物をはじめとする怪奇・恐怖映画の数々をとりあげながら、そのおもしろさについて蘊蓄を傾ける、独特の批評眼が随所に光る映画エッセイ集。
    「書斎派ダンディ」として知られた著者がまとめた唯一の映画の本!

    [ 目次 ]
    『恐るべき子供たち』を見て
    『エクソシスト』あるいは映画憑きと映画祓い
    「マラー/サド」劇について
    現代の寓話―パゾリーニ『テオレマ』を見て
    ナチスをめぐる相反感情
    『バーバレラ』あるいは末来像の逆説
    『昼顔』あるいは黒眼鏡の効用について
    ルイス・ブニュエルの汎性欲主義
    非社会的映画のすすめ―W.ワイラー『コレクター』を見て
    ベルイマン、この禁欲的精神
    カリガリ博士あるいは精神分析のイロニー
    サド映画私見
    映画におけるエロティック・シンボリズムについて
    恐怖映画への誘い
    怪奇映画の季節 ドラキュラの夢よ、いまいずこ
    ショックについて
    ドラキュラはなぜこわい?恐怖についての試論
    カトリーヌ・ドヌーヴ―その不思議な魅力
    愛の形而上学と死刑―大島渚『絞死刑』について
    階段闘争か生物学主義か―大島渚『忍者武芸帳』を見て
    黒い血の衝撃―三島由紀夫『憂国』を見て
    デパートのなかの夢魔―『白日夢』のノスタルジアについて
    エロス的風俗に関する対話

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「書斎派ダンディ」として知られた著者がまとめた唯一の映画の本!とあります。この人は、何について書いても「ドラコニア綺譚」なのですが、もっと映画について書いてもらいたかったなあ、と思います。当然ながら独特で、とても面白いもの。

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    偏愛する映画作家、ブニュエル、ベルイマンなどの諸作品をめぐって印象批評をくりひろげ、女優カトリーヌ・ドヌーブの妖しい魅力を分析し、はたまたお得意のドラキュラ物をはじめとする怪奇・恐怖映画の数々をとりあげながら、そのおもしろさについて薀蓄を傾ける、独特の批評眼が随所に光る映画エッセイ集。「書斎派ダンディ」として知られた著者がまとめた唯一の映画の本!

  • 大の澁澤ファン、そして映画好きの私が手に入れない訳にはいかなかった、書店お取り寄せの本。執筆されたのは私が生まれる7年前。故にこの本で取り扱っている映画はかなり古い。聞いたことのないものばかり。それでも素敵に楽しめたのは、言葉の魔術師、澁澤龍彦のテクニシャンっぷり。彼の紡ぎ出す言葉の美しいこと、この上なし。甘美な旋律、妖しい音階。私は陶酔する。

  • 澁澤的映画評。
    さすがにチョイスが偏っていてウケます。
    批評ももちろん澁澤テースト

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