ドラコニア綺譚集 (河出文庫 121R)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309402420

感想・レビュー・書評

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  • さすが円熟期のエッセイ集、です。該博な知識に魅了されていると、小説のような不思議で幻想的なエピソードが織り込まれて、虚実皮膜、綺譚と称すに相応しい澁澤の世界が──まさしく「ドラコニア」なる幻想世界が現れてきます。ここから『高丘親王航海記』等の晩年の小説へと、ドラコニアの世界は広がっていくのです。そのような意味では澁澤龍彦を語る上ではやはり避けては通れない、印象深い一冊でした。個人的にはやっぱり澁澤さんのエッセイが一番好きなので、エッセイであり小説のようでもある本作は好きでした。お気に入りは「飛ぶ頭について」「桃鳩図について」です。「文字食う虫について」もいいなぁ

  • 澁澤の筆がエッセイから小説へと向かっていく過渡期の作品集。だが、このエッセイとも創作とも言い切れないバランスは、のちの『ねむり姫』や『うつろ舟』ともまた違い、これはこれで一つの完成形と言える。『思考の紋章学』と対のような感じ。

    「鏡と影について」は、南宋の仙人がドイツロマン派的なドッペルゲンガー譚を語るのでニヤッとさせられる。「スペインの絵について」はバルデス・レアルの絵の依頼主がドンファンのモデルになった騎士だったという、それ自体が面白い逸話にバロック絵画の解釈をめぐる講義が挟まっている。「ラテン詩人と蜜蜂について」では、『思考の紋章学』所収「時間のパラドックスについて」でチラッと触れられたシルデリク王の墓から発掘された黄金製の三百個の蜜蜂について詳しく語られている。『思考〜』では蜜蜂は「馬具の装飾」としていたが、ここではもう一つ「マントの飾り」とする説も紹介していた。
    そして、玉虫の厨子についての導入から魂(タマ)と箱の密接な関係を語り、中学時代の同級生との少し奇妙な思い出話に流れていく「箱の中の虫について」がやっぱり好き。これはネクロフィリアの対象になるということのナルシシズムの話なんだと思う。フランチェスコ一世の別荘からビアンカ・カペッロ、そして『黒死館殺人事件』に繋がる「巨像について」も面白かった。最近『黒死館』読み返してよかったなと思うことが多くて、再読の縁を感じている。

  • 2008年11月4日~5日。
     この人のエッセイなのか小説なのか、虚実が混淆としている作品は、えも言われぬ面白さがある。
     エッセイだけの作品には、今一つのものもあるが。

  • 澁澤龍彦らしい、博学なエッセイ。他の本に比べると、固有名詞が非常に多くなっているため、いくつかの章は読みづらい。また、「綺譚集」というだけあって、簡単に説明の付かない不思議体験が織り込んであるのも特色。

    澁澤龍彦のなめらかな筆致は非常に好みなのだが、今回は体調もいまいちだったのか、いくつか読み飛ばしてしまった。しかし、一つのテーマに対して「日本書紀では」「中国の故事で」「スペインでは」と色んな話が出てくるところが超然としたところである。それが飛頭蛮(首抜け族)だったり、連続殺人・食人鬼だったりするから、完全に掴まれるわけです。

    そこに急に友達の話であり、自分の学生時分の話、正倉院展での話などが、自然に同列にはいってくるところがすごい。また体調が良い時に読み返すと思う。保留ということで星3。

    「ドラコニア」はどこかの昔の国かと思っていたが、1本目でわかった。「龍彦」の国のことである。

    「何はともあれ 頭は隠さずとも 尻は隠してもらいたい」
    おもしろい。

    (余談)
    河出の著者名が「澁澤」ではなく「渋澤」になってんだけど、名前を勝手に帰るのは失礼ではないか?

  • 極楽鳥について/鏡と影について/飛ぶ頭について/かぼちゃについて/文字食う虫について/スペインの絵について/ラテン詩人と蜜蜂について/箱の中の虫について/桃鳩図について/仮面について/童子について/巨像について

  • 徽宗論「桃鳩図について」所収。「天竺までは何マイル?」つながり。

  • 自分の知識不足のためわからない箇所も多少あったが、作者が非常に楽しそうに書いているのがわかる良エッセイ。

  • エッセイなのか御伽噺なのか分かりかねる小品集。
    澁澤龍彦の王国『ドラコニア』を気ままに散策できる本でした。

  • 美術史かぶれだった大学生のころの愛読書を、再び読み返しました。妖しくも魅力ある澁澤ワールド。大人になってからまた読むと、若い頃と異なった感覚を楽しめますね。

  • 最近、吸血鬼関連の本を読んでいて、
    ドラキュラ……ドラクル……ドラコニアという具合に、
    この本を思い出したのでレビュー。
    ドラコニアとはドラゴンの国、
    すなわち(ポオ風に言えば)「澁澤龍彦の地所」。
    古今東西の不思議なオブジェ、アイコンについて、
    自由気儘に連想の翼を広げて書かれた随筆集。

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