サラダ記念日 (河出文庫―BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 924
レビュー : 107
  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309402499

作品紹介・あらすじ

生きることがうたうこと…うたうことが生きること-なんてことない24歳が生み出した感じやすくひたむきな言葉。31文字を魔法の杖にかえ、コピーライターを青ざめさせた処女歌集。現代歌人協会賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 料理が好きで海が好きで手紙が好き。
    そんな作者の作る歌には、これらのものがたくさん散りばめられていました。

    「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

    この歌が発表された頃、わたしはまだ中学生か高校生の頃でした。とても世間を賑わせた歌でした。なんだかとてもお洒落でスタイリッシュなイメージを思い浮かべてました。洗練された都会の恋人同士の会話、まだ少女マンガのような恋に憧れているだけの子どもには、遥か遠い存在のものでした。

    でも、今読んでみると、また違う印象を受けました。一見、軽やかで恋人にネチネチと執着していないよう、わたしには見えた歌の奥に、あと少し相手の心に踏み込むことのできない戸惑いや、寂しさ、強がりが見え隠れしているように思えてきたのです。さらりと流れる音の余韻の中に“大好き”という感情が、まるはだかの状態でひっそりと息をひそめているようでした。

    またこの頃は、今よりも時間の流れがゆっくりだったと思うのです。
    大好きな人からの手紙が届くのを待つ時間。大好きな人を想いながら各駅停車の電車に揺られる時間……そんな恋する人たちにとって、とても大切だった時間が街中に溢れていたことを思い出しました。大好きな人を想う時間は愛おしいもの。
    そんな時間を詠んだ歌に惹きつけられました。


    『書き終えて切手を貼ればたちまちに返事を待って時流れだす』

    『いつもより一分早く駅に着く 一分君のこと考える』

    『会うまでの時間たっぷり浴びたくて各駅停車で新宿に行く』

    『玉ネギをいためて待とう君からの電話 ほどよく甘み出るまで』

    『金曜の六時に君と会うために始まっている月曜の朝』

  • 「うわっ」と衝撃を受けたり共感したりした歌の載っているページに付箋を付けながら読んだら、結構たくさん貼っていました。俵万智すごい!と今さら痛感しました。いくつか抜粋して下に書きます。


    生ビール買い求めいる君の手をふと見るそしてつくづくと見る(17ページ)

    真夜中に吾を思い出す人のあることの幸せ受話器をとりぬ(21ページ)

    愛ひとつ受けとめかねて帰る道 長針短針重なる時刻
    (35ページ)

    妻のこと「母さん」と呼ぶためらいのなきことなにかあたたかきこと(48ページ)

    思いきりボリュームあげて聴くサザンどらもこれもが泣いてるような(66ページ)

    泣いている我に驚く我もいて恋は静かに終ろうとする
    (106ページ)

    明日まで一緒にいたい心だけホームに置いて乗る終列車
    (126ページ)

    なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き(145ページ)

  • 「真夜中に吾を思い出す人のあることの幸せ受話器をとりぬ」
    「今日風呂が休みだったというようなことを話していたい毎日」
    「ふうわりと並んで歩く春の道誰からも見られたいような午後」
    「何してる?ねぇ今何を思ってる?問いだけがある恋は亡骸」
    「見送っているかもしれぬ女の名が浮かんでしまう空を見ている」
    「明日まで一緒にいたい心だけホームに置いて乗る終電車」
    「なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き」
    「金曜の六時に君と会うために始まっている月曜の朝」

  • 三十一文字の中に凝縮された情景と、その一瞬のときめきや寂しさ。
    たった31文字の中にいきいきと感じる《君》の息づかい、表情、そして暖かさ。
    家族や男性に愛されていても、彼らを愛していても、どこか埋まらない、報われない寂しさを感じました。
    まさに《ミックス・ベジタブル》のような一冊。

  • 読んだのは3年前くらい。息子が買ってきて読んだ後くれたから。
    発売当時話題になったが、短歌に興味がなかったし話題になっている本は買わないと変なポリシーを持っていたのでその頃は内容を全く知らなかった。
    この年になって今更のように読んでみた訳だが、本当に今更ながら「凄いなぁ」と思ってしまった。多分(まあ誰でも思うだろうが)好きな人がいて付き合っていて、そしてそれを表現する才能を持っていたんだろう。今ならツイッターで呟いてしまいたいようなことを全て短歌で表現していたしそれが出来る人なのだ。
    気持ちにいろいろと鬱屈があってモヤモヤする時、それを表現する方法を持っている人間は強いと思う。表現することで昇華することが可能なのだから。

  • 短歌系はあまり読まないから、どうも性に合わないな。でも、心が締め付けられて良い…。たとえ他人同士の恋物語であってもね…。(“この人達どうして幸せになれないんだろう…”って自分の事のように辛い。)短歌って改めて良いなと実感、あの短歌と短歌の間の行間が一見、意味が無いようで意味があるから。

  • 短歌が好きになったきっかけ

  • 喜怒哀楽が詰まった歌が、時代や季節ごとに並び1つの物語が出来上がっていた。初めて短歌や歌集に触れた。美しいさを感じた。31文字でも思い、景色は伝わることに驚かされた。今まで触れようとも思わなかった文化が、たった1度触れ合っただけで虜にされた。自分でも31字の歌を作ってみたいと思った。

    美しき 世界を見せる コトバたち 充分すぎる 31字

  • 短歌といえば古くさいイメージがありますが、使われている日本語、話題は現代のもので、また、とても日常的です。その日常の小さな事柄に大きなスポットを当てている気がします。ただし、形式は伝統的な七五調です。読んでいて愉快な気持ちになるし、はっとさせられるところもありました。

    私は滅多に本を読まないのですが、そんな人でも短歌は暇な時にいつでも読めるので、読書が苦手な人にもオススメです。ぜひ、勉強に疲れた時や空き時間によんでみてください。少し読むだけで世界が広がって見えますよ。

    本館3階東閲覧室(人文系) 911.168||Ta
    くるみ

  • 日常のなんでもないことが本当は大切な一瞬で溢れていて、たまに現れる生々しさによってなんでもないことが際立つような。思わずスキップしに外に出たくなるような、優しい音楽のような、音読したくなる短編集。
    #サラダ記念日 #俵万智 #短歌 #読書記録

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著者プロフィール

俵万智(たわら まち)
1962年大阪府生まれの歌人。同四條畷市、福井県武生市で育ち、福井県立藤島高等学校を経て早稲田大学第一文学部に入学。
1986年『八月の朝』で角川短歌賞受賞。1987年『サラダ記念日』を刊行し、空前の大ヒットとなる。他の歌集に『かぜのてのひら』『チョコレート革命』『プーさんの鼻』『オレがマリオ』など。他の著作に『愛する源氏物語』『俵万智訳 みだれ髪』など。2018年に『牧水の恋』を刊行。

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