薔薇への供物 (河出文庫 235A)

著者 :
  • 河出書房新社
4.03
  • (14)
  • (6)
  • (13)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 102
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309402727

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • バラ愛好家、というより「偏愛者」であった故・中井氏の、
    バラに纏わる短編選集。
    絶版です。
    昔、文庫の初版をゲットし、「引っ越し身辺整理」の際に
    処分してしまったのを(←バチ当たり!)
    古書店から再購入した次第。
    ですが、再読と言うとちょっと違う。
    各収録作は複数の作品集からテーマに添って
    ピックアップされたものなので、
    個別にもう何度も読み返してオチも知っている訳で。
    けれど、改めて読むにつれ、
    絢爛な色彩と濃密な香りが脳裏に立ち現れ、息苦しいばかり。
    作者自身による解説「薔薇の自叙伝」が痛々しい。

  • 怪奇幻想系アンソロで幾度か短編に目を通したことはございましたが、なんかもう絶対に好みな雰囲気だけは感じ取っておりました。
    満を持して、薔薇にまつわる短編集を拝読しましたが、美意識に耽溺するとは…凄まじい。
    まず文体があっさりしてるのに密度が凄い。何なんだろうこれは…凄いとしか言い様がない…。これが…中井英夫節…。唯一無二の幻想耽美な世界観。妖美とも奇異ともとれる”美”と”人外”の世界…。
    「火星植物園」幻想博物館、流薔園、薔薇の根への偏愛…。もうこれだけでお腹いっぱいでしょ…最高すぎる。
    「薔薇の夜を旅するとき」”白人女”と”車椅子”の美のための幻視行。人外の語る思い出はかくも美しく、恐ろしく、心惹かれてしまう…。
    「薔薇の獄」耽美さとは、花の美しさとは、鳥の匂いのする少年とは…。全てが完成されすぎてて読む劇薬すぎる。皆川博子作品が大好きな自分としてド性癖過ぎて泣いた。
    「薔薇の縛め」支配と被支配…薔薇の贄となる美貌の青年と彼を躾るよう賜った僕牧童頭の男…。大人のための西洋のおとぎばなしって感じのエロスとやや同性愛な雰囲気がヤバヤバのヤバすぎてファンタジークソオタクは全員読むべき。
    「被衣」信心深い奥様を、奔放に、そしてみだらに堕落させた薔薇の正体とは…。
    「呼び名」耽美さとリアルのスレスレを泳ぐ者の悲劇。生活感の強さに相まってのショッキングさでは収録作随一。
    「薔人」美から醜への墜落。綺麗も汚いも、一瞬の幻だと私達は目まぐるしく意識せざるを得ない。
    「薔薇の戒め」地獄に咲いても薔薇は薔薇。みすぼらしくても、枯れていても、薔薇は薔薇。
    「薔薇の罠」それは本当に薔薇だったのか。住民の恐れる真実とは…。一番不思議で、怖いのはこれかも。
    「重い薔薇」薔薇と共に埋めたものは、果たして。
    「薔薇への遺言」美しい青年詩人のような坊ちゃんと、彼に心酔する年上の親友と、坊ちゃんの家の老園丁の三角関係とかオタクなら全員好きでしょ…。
    「薔薇の自叙伝」自作解説との副題ではありますが、これまたこの世のものとは思えない事物の羅列すぎて…。どこまでがフィクションで、どこからが現実なのか…???中井英夫…こ、これが中井英夫…。目を開けて幻を視る者の言葉…。

  • 中井英夫による薔薇をテーマとした幻想小説のアンソロジー。とらんぷ譚の第一話、名作「火星植物園」が何度読んでも素晴らしい。精神病院の院長が語る恐ろしくも不思議な話。その結末はサキの「開いた窓」を思わせる仕掛け。独特の狂気と幻想世界は心地よい。どのジャンルにもはまらない人外の世界を味わえる。

  • 連作になっているものもあり、単独のものもあり。
    すべての作品タイトルに「薔薇」と入ってます。
    どうだ!
    美意識一本でこれだけ書ける、のお手本のような本です。

    ただ、もともとの掲載紙の制約なのか、
    かなり短めの話が多くて、少し勿体無い。
    せっかくのこだわりワールド、中篇までにはならないにしてももう少し紙幅を費やしてほしい作品が多かった。

    逆に言うと、こってり感がない分、多少一般向けというか、とっつきやすいかも。
    ストーリーや話のオチがある作品もあるし。
    (おいおい)
    (いらないもーん)

    こういう、世の趨勢を超越した次元に鎮座まします作品は
    時間が止まっていて、古びるってことがないですねえ。
    言葉遣いや語彙の非・新鮮さが却って古式蒼然とした
    味わいを増してくれるし。

  •  薔薇に関する12のフェティッシュで耽美的で不思議な短編集。
     中井英夫版・『夢十夜』であり『世にも奇妙な物語』。
     巻末に「薔薇の自叙伝」という17ページにも渡る自作解説が収録されています。
     これがまた氏独特の文体で味わい深いのです。
     御本人は「ない方がよかったのにといわれそうな気がする」と書かれていました。
     確かに、著者が解説するのは野暮だという意見もありますが、私は著者解説を読むのが好きです。
     作品が描かれた背景について一番知っているのはやはり書いた本人ですから、本人が解説するのが一番ふさわしいと思います。
     本短編集にも、「重い薔薇(「薔薇と柩と」改題)」「盲目の薔薇」「薔薇の獄 もしくは鳥の匂いのする少年」といった、著者の体験にまつわる作品が収録されています。
     特に「重い薔薇」は不可解でよく分からない作品で、自分では読み解けないので解説がほしいところです。
     これが本人以外による解説だと、どの辺まで真実に迫っているのか隔靴掻痒の場合もあります。
     ところが、ご本人がこういう体験を基にして書いた、と種明かしされると、もやもやが一気に解決します。
     もちろん、読む人によって解釈が色々違ってくるというのも文学作品の醍醐味です。
     文学や芸術の世界では、著者自身の“模範解答”以外にも無限の“別解”が存在することが可能です。
     ですから、著者本人も含め、色々な人と作品論を語り合えると楽しいですね。
     この自作解説には著者の人生や他の作品への言及も色々とあるので、それに乗せられて他の作品ももっと読んでみたくなりました。
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20161006/p1

  • 「火星植物園」「薔薇の夜を旅するとき」「薔薇の獄 もしくは鳥の匂いのする少年」「薔薇の縛め」「被衣」「呼び名」「薔人」「薔薇の戒め」「盲目の薔薇」「薔薇の罠」「重い薔薇」「薔薇への遺言」「薔薇の自叙伝(自作解説)」

  • 2013/11/2購入

  • バラにまつわる短編集。

    繋がってるようで繋がって無かったり
    繋がってたり。

    どれも怪しい雰囲気がして
    またじっくり読みたい本です。

    今回は図書館で借りたケド
    やっぱり買いですな^^

  •  幻想小説の大家 中井英夫の主要テーマである「薔薇」

     それを集めた短編集。うっとりしちゃいます。この世ではありません。

     収録作品 
     ◆火星植物園
     ◆薔薇の夜を旅するとき
     ◆薔薇の獄―もしくは鳥の匂いのする少年
     ◆薔薇の縛め
     ◆被衣〈かつぎ〉
     ◆呼び名
     ◆薔人〈ばらと〉
     ◆薔薇の戒め
     ◆盲目の薔薇
     ◆薔薇の罠
     ◆重い薔薇
     ◆薔薇への遺言

     因みに中井英夫のお父さんは東京帝大の植物学の教授で、植物園の館長などを歴任されていたので、
     中井さんの植物の知識は半端じゃないみたいです。

  • この世界観、くらりとやられてしまう。精神病院の廃屋に咲き乱れる薔薇、それを襲う大火…!

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

中井英夫(なかい ひでお)
1922~1993年。小説家。また短歌雑誌の編集者として寺山修司、塚本邦雄らを見出した。代表作は日本推理小説の三大奇書の一つとも称される『虚無への供物』、ほかに『とらんぷ譚』『黒衣の短歌史』など。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中井英夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
倉橋由美子
三島由紀夫
中井 英夫
山尾 悠子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×