野ばら (河出文庫 な 7-2 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 1296
感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309403465

感想・レビュー・書評

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  • 何度読んでも、夢と現実の境を見失ってしまう。
    捕まらない現実と重なり続ける夢の重さに、うっすら恐怖感すら覚えるような感覚。
    甘く幻惑的な薫りが満ちた世界の危うい美しさの精度が凄まじかった。
    月彦、銀色、黒蜜糖、なんて名前を違和感なく登場人物に付けることのできる世界観を持った小説は、そうそう無い。

  • 長野まゆみ先生の作品は「箪笥のなか」が初読で、それ以外は読んだことが無い。今作はBL要素薄めという事で読んでみたが、やや雰囲気はあるかも

    覚めても覚めきらない連続する夢の中の世界。ストーリーはあまり起伏が少ないが、登場人物の名前や出てくる小物(日常生活でよく見かけるものも)幻想的で美しく、世界観を味わう為の作品と感じた

  • 再読でも面白かったです。
    月彦はいつから夢の中にいて、どこからどこまでが夢の中なのか…なにもかもが夢の中です。
    銀色と黒蜜糖が猫なら、他の少年たちも猫なのかな。性格がちょっとキツイところも猫っぽいです。
    そして今回も植物の美しさにうっとりしました。
    バラ科の鉄や、回転式螺子の昼顔。紅玉石の柘榴も綺麗です。
    硬質な世界。堪能しました。

    持ってる本の装丁はこちらではありません。
    白と明るい緑の格子模様に、白い花の植物が描かれているのですが何の花だろう。

  • 覚めることのない夢の世界に囚われている少年月彦。
    それはただ偶然見ているのではなく、意図的に見させられている。
    銀色と黒蜜糖も夢によって囚われ、夢を使って脱出しようとしている。

    彼らの正体がわかるにつれ、夢の舞台はどこなのか、夢を操っているのは誰なのかがわかっていく。
    不思議な、不思議な世界観で、読んでいる方も夢か現実かわからなくなってくる。
    それでも読んでいくとだんだん謎が解けていき、スッキリしていくのだが、「影をなくす」という意味だけはわからなかった。

  • 主人公、月彦と一緒に微睡みながらゆらりゆらりとお話を追った。これを読みながら何時の間にか眠ってしまったときは、とても良い夢が見れた…。
    また、眠れない夜がきたらこの本を開こう・・・

  • ずっと夢の中
    出てくる言葉一つ一つが美しい
    高円寺の読書喫茶的なところで読んだのも合わせて良かったな

  • 私は不眠と過眠に悩まされていたとき、夢の中の夢というのを繰り返し見ていた経験があるのだが、その状態を彷彿とさせる作品だった。主人公の月彦が何に囚われているのかはっきりしないが、側から見ていて健康な状態ではないことは分かる。不健康な世界であるから月彦はずっとなんとなく居心地が悪そうなのだが、野ばらに囲まれた世界を離れたいとも思っていない。(その点がやはり不健康なのかも)
    長野まゆみが描く夢の世界は美しいだけで我々を歓迎しないし、追い出したりもしない。そこに居場所を求めるか否かでこの作品の見方が変わりそうだとも思った。私は居場所を求めなかった人間だからか、唐突すぎる展開に少し辛さを感じた。他人に夢の話を聞かされるとどう反応して良いか分からないときがあるが、丁度その感じ。しかしとびきりの美しい夢の話であるから惹かれてしまうのだけど。
    読了後、物語中のキーとなっていたミシンはなんだったのか気になった。規則的に音を鳴らすことで時間感覚を保っている何かだろうか。夢は時間感覚がなくなるものだから、夢と現実をかろうじて繋ぎ止めてるのだろうか。逆に規則的に音が鳴ることによって眠りを誘っているものだろうか。同じ周波数の音を聞き続けると麻薬を服用するようなリラックス効果が得られると聞いたことがあるが、そういう類のものだろうか。どれも正解な気がする。
    ラスト、ミシンは錆びれて崩れ落ちてしまって、野ばらの庭には誰も残されていないような描写が見られるが、月彦は夢を抜け出せたのだろうか。それとも月彦の存在そのものが消えてしまったのだろうか。いずれにせよ残った野ばらの庭に、今度は我々が囚われてしまうのかもしれない。

  • 長野まゆみ好きの娘が推す一冊。
    終始夢か現かはっきりしない靄の中に漂うような感覚。
    ずっとこのまま続けば良いのになと自身の少女時代を思い出す。

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 再読。
    長野まゆみさんのお話は、文章が本当に美しくて。その美しさを味合うために読んでいる感じ。
    月彦と、美しい二匹の猫。風変わりな理科教師。そういえば、大人はだいたい何か知ってそうなんだけど、多くは語らず。というか、結局、いつも謎ばかり残ってしまうんですけどね。
    解説がちょっと怖かったなぁって思ったら、今読んでもやっぱりちょっと怖かった…。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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