薔薇十字の魔法 (河出文庫 た 4-8 種村季弘コレクション)

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  • 河出書房新社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309403687

感想・レビュー・書評

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  • 秘密結社というのは構成や活動内容どころか、
    そもそも存在自体を秘しているからこその「秘密」結社、なんですな。
    言われてみれば当たり前だけど、
    そんなことにもうっかり気づかずにいたワケで。
    さて、この魅惑的なネーミングの組織は、
    錬金術で人々の暮らしをよくしようという、白魔術発想の団体だったようで。
    17世紀初頭、ヨーロッパで知られるようになったのだけど、
    始祖のクリスチャン・ローゼンクロイツという名前がなんだか怪しい――
    と思っていたら、どうやら人物名を組織に冠したのではなく、
    理念ありきの後付けだったんじゃないかというお話。
    ただ、イメージの雛形になったクリスティアンという少年は実在したらしい。
    著者曰く、

     あるいは偶々ローゼンクロイツの綽名を授かったクリスティアン少年が、[略]
     あえてローゼンクロイツの名を宿命として選択したのかもしれない。【p.234】

    とのことで、この条が事実だとしたらドえらいロマンティックやなぁ……
    なんて、ミーハーな自分は思ってしまうのだった。
    ところで、Ⅱ.薔薇十字の魔法「不死の人」にて、
    長生きのためには新陳代謝を遅らせるのだ、人工冬眠だ!
    とて、娘の世話で冬眠を実践するアメリカ人夫妻の話が出てきて、
    山尾悠子『ラピスラズリ』の《冬眠者》を想起してニヤニヤしてしまった。

  • ヨーロッパの裏面史をいろどった薔薇十字団の歴史について論じているエッセイです。

    薔薇十字団がはじめて表舞台に登場したのは、1614年にクリスティアン・ローゼンクロイツの生涯を記した『薔薇十字団の伝説』が刊行されたときのことにさかのぼります。著者は、この本の編者であるヨハン・アヴァレンティン・アンドレーエをその真の著者とする見解を紹介しながらも、「クリスティアン・ローゼンクロイツは実在の一人の人格であるよりは人格化した原理、現身の実体をことごとく昇華したローゼンクロイツ的原理の人格的表現と解するのが妥当であろう」と述べて、薔薇十字団がヨーロッパの精神史のなかでどのように位置づけられるのかという点に焦点をあてて議論をおこなっています。

    著者の該博な知識にもとづくヨーロッパ精神史についての考察に関心のある読者にとって興味深く読める本であることはもちろんですが、薔薇十字団に関係した人物の肖像や、その魔術的側面についての紹介が本書の多くを占めており、単純にたのしんで読むことができます。

  • 11/12 読了。

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著者プロフィール

種村 季弘(たねむら・すえひろ):1933-2004年。東京都生まれ。東京大学文学部卒業。ドイツ文学者。該博な知識人として文学、美術、映画から魔術、神秘学にいたるまで多彩なジャンルにわたり執筆活動を展開した。著書に『ビンゲンのヒルデガルトの世界』(芸術選奨文部大臣賞、斎藤緑雨賞受賞)、『書国探検記』、『魔術的リアリズム』など、訳書に『パニッツァ全集』(全3巻)などがある。

「2024年 『種村季弘コレクション 驚異の函』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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