闘争のエチカ (河出文庫 は 5-1 BUNGEI Collection)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309404080

作品紹介・あらすじ

変容しつづける「世界」の中で、言葉は「生」や「歴史」に、どのような場所でまみえることができるのだろう-。現代日本を代表する二人の評論家が、超えるべき「現在」を相手に根源的な"闘争"を宣言するスリリングな対話。

感想・レビュー・書評

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  • (01)
    1980年代末頃の蓮實重彦と柄谷行人との対談集である。5回にわたる対談は便宜的に3章に分けられている。
    主に、批評と文学についての議論であり、二人の対話は2020年の現在においても有効であろう。今もってこのような視点で批評と文学を捉え論じている批評家は少ないように思える。つまり、批評と文学は、当時から既に衰退の局面にあり、本書の延長に考えたとき、現在はさらに劣化した状態にあるようにもみえる。
    議論は、もちろん、そこにとどまっているわけではない。交通空間や絶対外国人など、他ではあまりお目にかかれないワードを用いながら、抽象と具体に及ぶ。
    構造主義、記号論、ポストモダニズム、ディコンストラクションといった現代思想の方法の検討が行われ、ドゥルーズやフーコーほかの20世紀のフランス(*02)の論陣を援用し、19世紀のキルケゴール、マルクスらにたびたび遡って批判が加えらる。
    イメージや物語を暴き、歴史や小説を擁護する。道徳に対して倫理を強調する。無責任や凡庸、そして日常と反復と列挙を掲げる蓮實氏の態度は、興味深い。

    (02)
    吉本隆明への厳しい批判も見受けられる。また、中上健次、三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹、大西巨人、島田雅彦といった戦後の作家らへの評をあり、20世紀の日本の言論史の概観としても読める。

  • 蓮実重彦、柄谷行人関連で初めに読んだ本だったと思う。
    当時の印象は、二人が膨大な本を読んでいて、何か語ろうと思ったらこれぐらい読まなければならないのか、と思ったことだろうか。
    あと三島由紀夫が読めなくなって、中上健次を一生懸命読むことになったきっかけでもあったような気がする。
    とにかく何というか影響力が強い。
    保坂和志が「あの二人は影響力が強すぎるのでどこかで引退したほうがいいのでは」という主旨の発言をしたらしいが(うろ覚えだが)わかる気もする。

  • 戦前の京都学派も岩波文化も、実は一種のニュー・アカデミズムだったのですからね、と言っている。

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著者プロフィール

蓮實重彦(はすみ・しげひこ):1936年東京生まれ。60年東京大学文学部仏文学科卒業。同大学大学院人文研究科仏文学専攻修了。65年パリ大学大学院より博士号取得。東京大学教養学部教授(表象文化論)、東京大学総長を歴任。東京大学名誉教授。仏文学にとどまらず、映画、現代思想、日本文学など多方面で精力的な評論活動を展開し続けている。著書に『表層批評宣言』『凡庸な芸術家の肖像』『映画の神話学』『シネマの記憶装置』『映画はいかにして死ぬか』『映画 誘惑のエクリチュール』『ハリウッド映画史講義』『齟齬の誘惑』『映像の詩学』『『ボヴァリー夫人』論』『伯爵夫人』『ジョン・フォード論』ほか多数。

「2023年 『ゴダール革命〔増補決定版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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