ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 578
レビュー : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309405346

感想・レビュー・書評

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  • しばしのインターバルを経てTasso再読祭再開。
    様々な典籍に材を取った幻想時代劇、全6編。
    何度読んでも味わい深く、しみじみ面白い。

    眠りに落ちたまま年を取らなくなった珠名姫と
    異母兄つむじ丸の物語「ねむり姫」や、
    望楼に幽閉された万奈子姫の悲恋「夢ちがえ」が
    殊の外、切ないが、
    もう一人の姫こと「きらら姫」が
    遂に正体不詳で終わるところにニヤリとさせられる。

    以下、多少の余談なぞ。

    「ぼろんじ」(虚無僧の意)において、
    主人公の兄を振武軍に導き入れたとされる
    澁澤成一郎(1838-1912)は
    明治以降、幼名に復して澁沢喜作と名乗った実業家で、
    日本資本主義の父と呼ばれる澁澤栄一の従兄であり、
    作者の親類にも当たる。

    「夢ちがえ」の「箱の蓋を持ちあげてみると」の条(p.178)では、
    つい、泉鏡花「天守物語」
    朱の盤の登場シーン(これは汁が出ました)を連想。

    「画美人」の、
    ガラス鉢の金魚に情事を見られている気がする……云々は、
    作者の初期短編「撲滅の賦」のヴァリアントだろうか。

    江戸の大工の倅・音吉が
    鎌倉時代へ時間旅行する「きらら姫」。
    彼は地震で倒壊した日蓮上人の草庵を建て直すのだが、
    日蓮の弟子・日興が「伯耆房」の名を賜り、
    日蓮と共に身延山に入った経歴が、
    鳥取の地名である「伯耆」を苗字として名乗る人々が
    山梨県の身延町に存在するという謎に迫る鍵ではないか……
    と愚考する。

  • 星たちの燃ゆる障子の向こう側、狐火が誘う怪しい魔の入り口は恍惚と見た夢に似て妖艶。懐に差し入れたほんの少しの遊び心が、跳ねた小石と川面を撫でて、沈んでゆくのもまた一興。山越え谷越え向かった城の、庭で描くは女の愛。それが毒だと知らぬが仏、絡まる蛇は見知った欲望、すべてゆめゆめ忘れるな。

  • 現実と夢が交差する「夢ちがえ」が印象的、幸せの絶頂から不幸のどん底につき落とされるのつらすぎる

  • 梅雨入りして体調が優れず、読みさしの他の本を読む気になれなかったので手に取ったが、「狐媚記」を読んで、まさに今読むべき本だったのだと感じた。男女の性が交錯する「ぼろんじ」や、私の故郷・長崎をモチーフにした「画美人」にも惹かれたが、「こんな小説を私も書いてみたい」と強く思ったのはやはり「狐媚記」だった。澁澤の横文字混じりの文体は全く好きになれないけれど、もっと彼の小説を読んでみたくなった。

  • 2008年10月8日~9日。
    面白い。
    そして凄く切ない。
    無償の思いの美しさと残酷さに心が震えます。

  •  現実から、ひょいっとはみ出してとける。不思議と現実のはざまを語る。そんな短篇集だと思う。上るのではなく潜るのに近いけれど、手引きがあるので溺れずに済む。ただ、その手引きがどんなもので、どこへぼくたちを連れて行くのかを考えはじめるとすこし怖くなる。グロテスクが道中にあるような、白骨を横目に潜っていくような、感覚。初期短篇選や唐草物語より、語り口が軽妙な気が、なんとなく。
    2017.8.不明.

  • 2016.5.11 読了

  • 久しぶりに澁澤にハマってしまいそう。

  • 時代劇ものって読みやすかったっけみたいな本です。

    内容は落語の左甚五郎の、題が出てこない。話のようで

    すね。

  • 少し難しかった。漢字の勉強をした後また再び読みたい。

  • 平安や江戸が舞台の幻想夜話。
    他の作品も読んでみたいです。

  • 2014/10/22

  • 定家『明月記』に想を得た『ねむり姫』紡錘は螺旋好きならではのモティーフか。妖の異類婚姻譚『狐媚記』幽玄さの中に獣臭漂うエロティシズムにうっとり。『夢違え』精神分析的な夢奇譚はシュニッツラーを思わせる。『ぼろんじ』トーキー時代の股旅映画のようなとぼけた感。くるりと反転するカメラワークが快感。『きらら姫』江戸、鎌倉を舞台にした時空越え。江ノ島から湾を横断する地下道に興奮。どれも楽しく、何度読み返してもしみじみと味わい深い。ときどき入るイマドキ言葉もお茶目。
    そういえば、いばら姫も紡錘(糸車の)で指を刺して眠るのだった。
    紡錘りの舟から始まり、杓子の舟で終る短編集。

  • 幻想文学っていいなあ……という気分にはなったけども、"澁澤龍彦の"良さを感じるにはやや物足りない。他のものも読んでみようという気にさせられるといえばまあ、そう。
    面白さとは関係ないが、時代物なのに外来語が入るのはいつものこととはいえ突然のE.T.にはさすがに笑った。

  • 12/18 読了。
    再読。ほとんど忘れてたので読みながらオチを思い出すのが楽しかった。

  • 澁澤龍彦といえば、エッセイの数々で、古代ギリシャから中世、ルネッサンス、果ては現代文学から現代芸術全般に至るまで、まさしく博覧強記の衒学趣味。だが、ここには彼のもう一つの顔―すなわち、日本の古典をこれまた縦横無尽に駆使した、翻案幻想物語の語り手としての澁澤がいる。彼の語る物語はそのいずれもが、空間も時間も周囲からは隔絶し、ぽっかりと中空に浮かんでいるかのような独特の様式を持っている。ここに収録された6篇のいずれもが、そんなスタイルだ。澁澤の語る物語を読むのは、まさにしばし仙窟に遊ぶといった趣きなのである。

  • 【収録作品】
    ねむり姫/狐媚記/ぼろんじ/夢ちがえ/画美人/きらら姫

  • 随分昔に購入していた本です。
    西洋風のおとぎ話を日本の昔話に置き換えた風ですね。そして必ずしもハッピーエンドにならない辺りがさらに面白い。幻想小説と言うのはこういう感じの取りとめの無いものなのかなあなどと思いした。面白かったです。また何か違う本も読んでみようと思います。

  • 短編集。この作家さんは初めて知りましたが、近現代というより現代作家さん?
    なのに近現代風というのがなんというか掴みきれず。
    雰囲気はありましたが、自分好みかと言われるとちょっとキツかったです。

  • 中世日本のあやかしの短編集。
    何と言っても面白かったのは表題作のねむり姫。
    夢と現の間にとらわれるねむり姫とつむじ丸の想いの交差は何とも言えない

  • 相変わらず夢心地になる。
    ただしいつにも増して読めない漢字が多いので、手元に筆順辞典(これが役に立つ!)と広辞苑を登録したEBPocketをインストールしたiPod Touch(など)を常備する必要あり。

    また、この人はおそらく小説よりもエッセイなどの方が人気があると思うが、私はむしろ小説の方が気持ち良い。

  • 後白河法皇の院政の頃、ある中納言家に珠名姫とつむじ丸という腹ちがいの兄妹がいた。珠名姫はその名の通り美しく、つむじ丸は放蕩濫行が目に余る少年で、お互いに接することなく暮らしていた。物語は、珠名姫が裳着(女の子の成人式)を迎えた14歳の年に、突然の永い眠りにおちるところから始まる。眠ったまま、長い年月にわたって京を漂う珠名姫と、盗賊となって数奇な人生を歩むつむじ丸は、無意識の中で引き合う運命にあった…。私の苦手な幻想的世界がみごとに計算されている物語である(ようだ)。「眠れる森の美女」や仏教思想などを下敷きにしているが、舞台を日本の中世に設定したその必然性がよく分からない。当時の仏教思想にこだわらずとも、他のものでも代用がきくのでは?という感じ。日本の中世的物語だと思って読んだ私には、何となく違和感があった。

  • ねむり姫・狐媚記・ぼろんじ・夢ちがえ・画美人・きらら姫の六篇

  • 読めない漢字が沢山あったので辞書を引きながら。
    時折出て来る横文字が洒落てます。
    夢と現のあわいに漂う6編。

  • 「ねむり姫」「狐媚記」「ぼろんじ」の三作が良い。

  • 可も不可もないといったところか

  • 「夢ちがえ」「狐媚記」「画美人」が特に好き。後味は決して良くない、むしろ残酷と言ってもいいような話なのに、美しい物語だったと感じる不思議な読後感。端正な文章の中に時折顔を出す悪ふざけ(と言っていいのか分かりませんが)がくすりと笑えて楽しい。「(省略)。特異体質だな。」「いやですよ。そんな近代のテクニカル・タームは存じませぬ。」。ついつい笑わされる。

  • 面白い。相変わらずの雰囲気。
    話は玉石混合。

  • 河出文庫の表紙違いの作品を読んだ。「狐媚記」「きらら姫」が面白かった。

  • 短編集。
    『ねむり姫』と『夢ちがえ』が残酷で美しくて良かった。
    古い日本の物語なのにちょこちょこ横文字が出てくるところが澁澤氏らしくて好きです。

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著者プロフィール

1928年東京生まれ。東京大学仏文科卒。フランス文学者、エッセイスト、小説家、翻訳家。マルキ・ド・サドやジョルジュ・バタイユの著作の翻訳・紹介をする一方、人間精神や文明の暗黒面に光を当てる多彩なエッセイを数多く発表。晩年は小説を発表するようになり、遺作となった『高丘親王航海日記』は第39回読売文学賞を受賞した。1987年没。

「2018年 『ドラコニアの夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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