アブサン物語 (河出文庫 む 2-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.84
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本棚登録 : 170
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309405476

作品紹介・あらすじ

我が人生の伴侶、愛猫アブサンに捧ぐ! 二十一歳の大往生をとげたアブサンと著者とのペットを超えた交わりを、出逢いから最期を通し、ユーモアと哀感をこめて描く感動のエッセイ。ベストセラー待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 縁あって作家の村松氏のもとで暮らすことになった猫との出会いから別れまでを綴ったエッセイです。
    しわがれた声で鳴くので、「ヨーロッパあたりの波止場の酒場でアブサンで喉を嗄らした、ちょいとそそられる女」から連想してアブサンと名づけられました。(オスでしたが…)
    「アブサン」がフルネームなのですが、なんだか「〇〇さん」と"さん"付けで呼ばれているような風情もあって、ほっこりします。

    村松氏は幼い頃に猫を飼った経験がありますが、奥さんは猫を飼うのは初めてです。
    猫がゴロゴロ喉を鳴らす音を「怒っている」と思って戸惑っていた猫初心者の奥さんに、経験者として優位な発言をしていた村松氏。
    ですが、あっというまにアブサンと奥さんは仲良くなり、"経験者の優位"が通用しなくなるのがほほえましかったです。
    会話を読んでいるだけでも素敵なご夫婦であることが伝わってきました。

    「第十三話 太陽と風と自然体」に私が猫を愛する理由が凝縮されているように感じました。
    「見事な自然体を見せてくれて、時には人生の師とも見える佇まいをあらわす伴侶」…本当にそのとおりだと思います。
    アブサンの最期に目を潤ませつつ、目の前でのんきな顔してくつろぐ我が家のにゃんこに改めて愛しさを感じながら読了。

  • 愛猫アブサンとの21年間を描いたエッセイ。
    いつか再読するだろうと手元に置いてました。
    猫との関係、伴侶って言葉が相応しいです。
    最後の最後まで。
    寂しいのは、それだけ一緒にいた証かな。
    思い出になっても出会えた喜びを大切に。

  • マルノウチリーディングスタイルで、作家さんの誕生日ごとに並んでいるバースデー文庫を買ったらこれでした。だから最初は内容で読みたいと思ったわけじゃなくて、そもそもあんまり動物が好きではないし、ペットを飼うのもむしろ嫌なほうなんだけど、読んだらほっこり、じんわりしてしまった。解説にもあるとおり過剰な表現ではなく、あったことを書いているという感じなんだけど、確かにそこには誠実な愛情が滲み出ている。そしてあっさりゆったり力の抜けた文章で語られるものだから楽しく油断して読んでいたら、エピローグで泣きそうになってしまった。それでもエピローグも抑えた描写で、ちゃんとアブサンと向き合っていたのだなという姿勢が見える。

    先日読んだ「昭和の犬」といい、淡々と抑えめに書かれた動物の話なら読めるなあと思った。それは、「動物の気持ちがわたしには分かる!通じ合っている!」と思い上がることのない誠実な愛情が良いのだなと思う。人間同士だって相手の心など分からないのだから。

  • 20121125読了。
    やっぱりどこのうちの猫さんも可愛いなぁ。読んでると知らずに微笑んでしまってます。猫の描写が鮮明で、著者の松村さんと、奥さまがどれだけアブサンを大切に想っていたかが伝わってきます。猫さんは、人を区別するんですね 笑。微笑ましい話だけではなく、動物と暮らすと避けては通れない『別れ』のお話も出てきます。村松さんはアブサンが死んでしまった後、友人に花をもらったり、電話をもらったりするんだけど、そのときに「子供が亡くなったわけではなく、老人の大往生を看取ったわけでして…」と、いいます。私はそんなこというのね…と寂しい感じがしましたが、先を読んだら、それは村松さんのアブサンに対する、すべての猫に対する深い深い愛だと気づかされました。私も、もっと強くなければいけなかったな。

    私の愛猫みぃは、修行にいきました。当時は帰ってこないと大変泣きましたが、姿かたちを変えて帰ってきてるんですって。

  • 和田誠さんの挿絵の可愛さにまずココロをぎゅっと掴まれました。
    アブサンを拾ったのではなく出逢ったってくだりに猫愛を感じられ、私も何処かで出逢わないか、ネコ屋でペット用ボックスを見ておこうかと思います。

  • 格闘技ファンの作家というイメージか先行して、今まで読んでなかった村松友視さん。カバーのイラストの猫がなんとも可愛くて買った本なのに本棚にずっと眠っていた。
    最初に、アブサンの原点を探しに行くシーン。日比谷公園にはあるある、野良猫がいっぱいいるところ。数多い野良猫の中から縁あって伴侶になり、心を通わせられたと思い込み(人間の勝手な思い込みかも、と思いつつ)、その存在に依存して暮らすようになるのだから、たかが猫、されど猫なのである。猫の素人の奥様よりは、昔、猫と暮らしてきた自分に、よりなつくはず、いう自負を持つ村松さんと奥様のやり取りが微笑ましい。最後の数ページは涙しながら読んだ。感情的な文章ではなく、淡々とアブサンとの別れを描いていて、生き物を伴侶にしている者が、まず必ずと立ち会うであろう訣別を、自分なりに覚悟させられた。
    読まず嫌いだった村松さんの本、今後は読んでみたいと思った。

  • 猫愛。

  • 猫を飼っていた時のことを思い出した。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00266148

  • 2019.7.1
    ぅあぁぁぁぁあーっっーわー!
    猫飼いてーーーーーーーーーー」ーー!!ー!

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。慶応大学文学部卒。『時代屋の女房』で直木賞、『鎌倉のおばさん』で泉鏡花賞受賞。著書に『アブサン物語』『北の富士流』『アリと猪木のものがたり』『猪木流』『老人の極意』『老人流』等。

「2022年 『ゆれる階』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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