小春日和(インディアン・サマー) (河出文庫―文芸コレクション)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 417
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309405711

感想・レビュー・書評

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  • 『カストロの尻』前哨戦として購入。
    底本が1988年刊行。私、何歳よ。

    大学進学と共に、小説家のおばさんの家で同居することになった桃子。
    お互いに気持ち良く生活出来ているとは言えないものの、桃子の大学生活を聴くことで、おばさんの小説やエッセイのテーマに変化が現れる。
    この小説やエッセイがそのまま挿入されているのも、この作品の面白さで。
    桃子や花子といった少女たちと。
    おばさんや母が過ぎてきた少女時代と、彼女たちの描く少女像は、それぞれ微妙にズレがあったりする。

    桃子がメンチカツを作っていると、弟が欲しいと言い、桃子は自分で作れと突き放す。
    ところが、母は弟には作れないといい、一緒に作ってやるよう(それどころか桃子が作り上げた分を先に弟に渡そうと)命じる。
    それを桃子は憤慨し、弟が降参する。

    この関係性。じわっと面白さがくる。
    過渡期と言えるのか分からないけれど、それぞれが見ている時代の枠組みと、そこに拘泥するまいと気取る登場人物達が、また大きな枠に入れられているような。

    多分、順番は違うと思うのだけど、手に入る本が限られているので読めるものから読んでいこうと思う。

  • 「目白4部作」の3作目。これら一連の小説群には、やはり目白というリージョナルなトポスが必要だったのだろう。本編は猫のタマと、夏之、及び紅梅荘などを通して前作との連続性を持っている。物語内の第2の語り手(書き手)である「おばさん」も前作に顔を出していた。また、本編は作者によれば「少女小説」ということなのだ。とはいっても、主人公の桃子は小説中で既に19歳から20歳であり、少女というにはいささか薹が立っていたりするのだが、著者にとってそんなことは重々承知の上なのだろう。これまた、小説を読む楽しみに満ちた小説だ。

  • 「快適生活研究」を読んで、さかのぼって登場人物がだぶる作品を読んでいます。
    金井さん、外れないですねー!

    大学1年の桃子と、友達になった花子、桃子の叔母のちえこ。
    3人の女性の出会いと~何気なくリアルな生活。

    大学に入学した桃子は、母の妹のちえこの元で暮らすことになります。
    東京の大学に通うのに、女の子を一人暮らしさせるわけにはいかないと、母が決めてしまったのです。
    桃子の母のことをコンサバという叔母。
    母が保守的なのは事実で、家業の旅館を継いでいる長女だからか。桃子の弟が上京したら、一緒に住んで弟の面倒を見るものと決め込んでいるのだから。
    ちえことは気が合う桃子ですが、やはり突然一緒に生活するのには気詰まりな面も出てきて当然でしょう。厄介者なのではないかと距離感を考える桃子。

    ちえこは作家で、友達には華やかな生活を想像されて、羨ましがられます。
    更年期の上に中高年性ウツ症だからというおばさんは、ほとんどいつもゴロ寝しているのだが。
    日常生活の中で唐突に締め切りに苦しむ様子が、傍目にもわかる次期があった後、彼女が書いた作品が載っています。
    桃子との生活や最近の経験がどこかしら反映しているのが、また微妙に面白い。
    ちえこが自分も若かった頃を振り返ったり。

    桃子の両親は離婚していて、父親は東京にいる。
    フラワー・アーチストと同居しているということだったが、電話では素人とは思われない声。会ってみたら男性だった…
    などという世界が変わるような出来事もありつつ。…いや、でも別に世界は変わらない?

    ちえこは1ヶ月か2ヶ月と言って海外旅行に出かけ、桃子の母は無責任だと怒る。
    桃子はすっかりゴロ寝にはまって最初は家に引きこもる。
    ちえこは意外にも、誰かと一緒らしい…

    心地良い女の子の世界。
    作者なりの「少女小説」を書こうとしたものらしく、少女小説の基本を押さえた部分と、わざと外した部分と。
    親元を離れて叔母の元へ、って確かにあるパターンですね。
    そして、親友が出来て!
    中学生の男の子のように見える小柄な花子が、かわいい。
    初めてのことにわくわくしたり、スランプのような時期もあり、ちょこっと成長する経験もあり。

    おかしな経験を、あれこれ喋りまくる口調でどんどん描かれます。
    「快適生活研究」ほど全編爆笑ものではないけれど。
    共感と微苦笑と~時には吹き出します。
    下宿して、友達とえんえん長話をしていた学生時代を思い出しました。
    というか~ゴロ寝しながら読んだので、ちえこと桃子のゴロ寝にすっかりシンクロしておりましたよ。

    著者は1947年、高崎生まれ。
    67年、「愛の生活」で小説家デビュー。
    この作品は88年、単行本化。

  • 乙女の自覚を持つ人々と「好きな作家は誰か」という話をする時、かならず名前が出るのが金井美恵子という作家です。中でも乙女支持率ナンバーワンなのが、大学生になったばかりの少女たちを主人公にしたこの作品です。
     舞台は華やかなバブル経済真っ只中の東京、といっても、主人公の桃子と花子は、当時人気のあったトレンディドラマに憧れたりなどしません。映画や読書を楽しんだり、一緒に住む小説家のおばさんとビールを飲んだり、親や同級生を意地悪な目線で批評したり。そんな二人の生活と、小説家のおばさんが書いたエッセイや短編が、とびきり読み心地のいい文章で綴られていきます。
     読みながら、桃子と花子ってちょっと自分みたい、と乙女は思ったりします。「乙女」なんて言葉を使う人は、あまりいなかった時代の桃子たちからは、なんだそれ、と迷惑がられてしまうかもしれませんけれど。

  • 著者のとっかかりとして、読み易い一冊。
    物語の筋としては大した起伏はないんだけど、背後にある圧倒的な知識や教養をうっすら(うっすらがポイント)感じられる。

  • 大学に入りたての主人公・桃子の、半分愚痴まじりのような気だるい口調の一人語りにグイグイと引き込まれた。
    ちょっとクセがある登場人物ばかりだけど、言ってしまえばどうってことのない、特に大きな事件が起こるでもない日常が綴られる。
    でも、この日常がずっと続くわけではない。
    そんな予感をうっすらとまといながら、若い桃子と花子がモラトリアムを満喫している様子を見ていると、まさしく小春日和の日に昼寝をしているような気持ちになる。

    ただ、ところどころに挿入されるおばさんが書いた小説やエッセイが、長閑な日常の中の不思議なアクセントになっている。
    桃子を含めたおばさんの周りの日常が、おばさんのテキストには反映されている。
    というか、そもそも桃子達の日常も作者・金井美恵子が書いたテキストである。
    そのことを思い出して、今自分が読んでいるのは一体何なんだ?と一瞬クラっとするような感覚に陥る。それが楽しい。

    唐突に終わってしまったような印象があるラストだが、30歳になった桃子と花子を描いた続編があるとのこと!絶対読もう。

  • こんな感じの作風なんだ。トヨザキ社長の熱烈推薦作家ということもあり、気になってずっと読みたかった作品。『ああ、好きそう』ってところまでは何となく分かるんだけど、じゃあなぜそう思うのか、っていうことの答えが出せない。物語は面白いけど、これより興味深い内容は他にもあると思うし(その時点で違う?)… 一文あたりが基本的に長かったり、唐突に作中作が挿入されたり、そういう部分も魅力として計上されるんだろうか。とか書きながら”計上”とか言ってる時点で考え方が違うんだよ、って自分でツッコんでみたりして。要するに、良品であることは分かるけど、絶対無二である理由が分からないのです。残念!

  • 三十年前に書かれた少女小説。登場人物が魅力的なのかなー?なんだかよくわからない不思議な魅力がある。続編連載中なのかな?まとまって読むのが楽しみ。

  • 面白かった!
    クセのある女たちが出てくるのだけど、どこか憎めず、心地よい生活を送っている。
    パパが同性愛だったりと、今になって読み返せば新しい物語。

  • 最近「噂の娘」を読んだら久しぶりに目白四部作を読みたくなったので再読。著者自身が「少女小説」だと言うこれはもっともとっつきやすい金井美恵子かもしれない。大学生の女の子の一人称語りは一種ライトノベル風だし。

    母の妹であり作家の「おばさん」の部屋に居候することになった大学生の桃子。母は旅館の女将、離婚した父はホテルの支配人。ザ・ギンザで買い物し、六本木のシネヴィヴァンで映画を観て、日常的に酒を飲み煙草を吸いながら文学について語る80年代半ばのインテリ不良女子大生の生活は、リアルなのかファンタジーなのかその両方なのか。バブルで景気が良かった頃の話だなーという感じがする。わりと近い世代なのだけど。

    目白のおばさんのキャラクターが作者自身ぽくて共感しやすい。離婚の原因になったお父さんの愛人が男性だったのは驚いた(笑)桃子の親友・花子ちゃん(見た目は中学生男子、自分をオレとか言っちゃうけどサブカル通)は、同年代だったら苦手なタイプだけど、自分の年齢がおばさん寄りになるにつれ可愛いと思えるようになった。

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著者プロフィール

金井美恵子(1947.11.3~) 小説家。高崎市生まれ。1967年、19歳の時に「愛の生活」が太宰治賞候補作となり、作家デビュー。翌年、現代詩手帖賞受賞。小説、エッセイ、評論など刺激的で旺盛な執筆活動を続ける。小説に『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『タマや』(女流文学賞)、『兎』、『岸辺のない海』、『文章教室』、『恋愛太平記』、『柔らかい土をふんで、』『噂の娘』、『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』、『お勝手太平記』など多数。また第一エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』より『目白雑録』シリーズまで、エッセイ集も多数刊行している。

「2015年 『エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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