文章教室 (河出文庫 か 9-2 BUNGEI Collection)
- 河出書房新社 (1999年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309405759
感想・レビュー・書評
-
著者自身をまるで反映しない登場人物たち。
エッセイもそうだけど、全ては皮肉なのだ。
なのに読んでしまう、あー面白いくすくす、と思いながら。
あちらこちらの仕掛けを理解することは、まるでできないんだけど、こんな浅薄な読者でも許してもらえるだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
色々な楽しみ方がある本だと思う。風俗小説として読むと、人々の思惑が交差しあう様子や人々の持つ心の空虚などに共感や苛立ちを覚えることができて楽しかった。また、本作は地の文と主人公の日記からの引用文、作中の現役作家の著作や実際に存在するだろう書籍からの引用文とを繋ぎ合わせてできた小説であり、この引用文というのが抜き出すとどれも似たり寄ったりに感じられることから、「文章を書くこと」とはどういうことなのか?という投げかけや皮肉にもなっているように思う。
-
「書く」ことをテーマにした小説なのだが、実は「書か/けない」ところの方が重要である気がしてならない。一番最初のそういうシーンは、佐藤絵真が愛人と入ったホテルで「深紅の花柄のベッドの上に丸ごと置かれたニワトリ」を見たときの「うろたえぶり」をノートに「書くことができない」というところで、その「文章化できない」という事態は、もう一人の主人公である現役作家が失恋した際にも訪れる。剥き出しのままの「いま」の現実に直面するときがおそらくその機縁で、一方の主婦はそこに「嘘」(フィクション)を交えることで対処し、他方の作家は「告白」という禁じ手を使うことで、逆に文壇で評価されてしまう。強烈な皮肉のビルドゥングス・ロマン。