道化師の恋 (河出文庫 か 9-4 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 161
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309405858

感想・レビュー・書評

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  • 「目白4部作」の最終巻。ただし、完結編というわけではない。善彦のデビュー小説「道化師の恋」を巡る物語なのだが、なんとも不思議な味わいの小説だ。劇的な事件が起こるわけでもない。もっとも、颯子が事故死するのだから起らないというわけでもない。ただし、それもまた淡々としているし、次なる恋においても、両者にはほとんど葛藤らしきものが見られない。一方、登場人物たちの存在感は確かな精度で描かれる。例えば、端役だが元全共闘ノンセクト野沢一代さんの自然食偏愛などをからかいながら、それでいてリアリティ溢れる描きぶりなど。

  • とうとう4部作をコンプリートしちゃいました。
    凄い満足感!!\(^o^)/

    以前に書いた感想にも、何回読んだかわからないと書いてあるくらいだから、ちょこちょこ本棚から取り出して立ち読み(*^_^*)しているのまで合わせると凄い回数になっているんじゃないかな。

    先月は、実生活から浮遊した楽しみの中に入ってしまっていたので(あはは・・なんか意味深ですね。なんてことない話なんだけど。(*^_^*))頭の中がふわふわとおぼつかなくて、本を読んでいてもなんかしっかり響いてこない気がしたものだから、金井さんから活を入れてもらった、という面も。(*^_^*)
    うん、ようやく現実の世界に戻ってこれた感じがします。

    ↓は以前の感想です。


    目白4部作の4作め。

    何回目なのかわからないくらい読み返しているのだけど、すぅっと身体になじむ文章が気持ちいい。「文章教室」のその後がメインで描かれていて、いつものことながら、ディテイルにこだわった描写やあっちこっちに飛ぶおしゃべりがとても楽しい。

    この巻だけに登場する、早稲田の学生でたまたま一冊の小説を書けてしまったハンサムな男の子の線の細さが面白い。また、そのお母さんときたら、もう、これは金井美恵子さんお得意の、人がいいけど押しの強い、つまり身近な「母親」でおかしかったり、ちょっとイラついたり。

    「文章教室」の絵真さんは、美しいながらも落ち着いたお祖母ちゃんになっていて、その娘の桜子も、自分で鏡を見ながら「大島弓子の漫画のよう」と自らを感じるほど、やはり美しい・・。
    あんなにすったもんだで結婚して、優雅な生活を送っていたのに…なのだけど、金井さんの手にかかっては、うん、それもありかもね、となるのが嬉しい。

    「タマや」の夏之さん、アレクサンダー、そして、作者を思わせる目白の小説家がちらっと出てくるところは読者サービス?いえ、文庫本のあとがきで自ら、「書きながら考えていたより、よほどグロテスクな意地の悪い小説」と言われているくらいなのだから、これも、やっぱり・・・なのかも。

  • 誰が道化師か?
    前三作に比べ、直接的な皮肉が少なく、ロマンティックな印象。
    例えば桃子や花子に評されるとしたら「頭空っぽ」な桜子や善彦だからこそ、「綺麗な恋」ができるのだろうか?

  • 目白四部作再読了。「小春日和」と「タマや」が対になっているとしたら、こちらは「文章教室」と対になっているというか続編のような感じ。「作家」と「書くこと」をめぐる群像劇。

    主人公は、母のイトコで元女優の颯子さんとの恋愛経験をなんとなく小説にしたらデビューしてしまった新人作家の善之くん。現役大学生でイケメン。彼と、その母、実は遠縁だった「文章教室」の現役作家、そしてすでに結婚して子供もいる中野勉と桜子夫妻、画家のおじいちゃんなど、文章教室のおなじみキャラが登場。専業主婦となり母となった桜子が、かつて軽蔑していた自分の母親と結局似たようなことをいい、同じように不倫する皮肉。

    四部作完結編ということで集大成的に、桃子と花子と目白のおばさん、それに夏之とアレクも登場。アレクが出てくるとなんだかほっとする。登場人物の中で彼だけが映画や小説についての薀蓄を語らずひたすら陽気だからかも。タマ、みつかったかなあ。

  • 金井美恵子が面白くて立て続けに読んでいてそれこそ中毒で、本作を客観的に見られない状態なのだけれど、目下読み続けてきて、金井美恵子の小説は多声的だと思っていたけれども、どうやらそれは正確ではなさそうで、あくまで批評の実践の結果でしかないのだと思った。

  • 不思議な小説だと何で思うんだろう。
    でも、目白4作中ではイマイチかな。

  • 別になりたかったわけじゃないけどたまたま書いてみた小説が新人賞の候補になって作家ということになった大学生の主人公もその家族もまったく共感できず、『文章教室』の面々も再登場するが相変わらずで登場人物たちは魅力がないけどあとがきで書いてるように毒の塊のようなところや今まで読んできた金井作品に共通する書くことや文章についての考察や映画とか文学が物語に絡んでたり他の作品のパロディがあったりするところがすごく魅力的でイヤなやつらばかりなのに思わず引き込まれてしまう。目白4部作のラスト。続編の目白シリーズも期待大。

  • 読みながらの感想。

    金井美恵子の緻密ながらまんべんなく暴発してる感じ、楽しい! 一緒にするなと言われるかもしれないけれど、舞城王太郎とかサリンジャーとかをちょこっとだけ思い出す。女の人の作品ぽくないような…(道化師の恋読書中)

    すごい、私だって大江健三郎読んだわよ、とお母さんが婦人公論に載ってた 「夜よゆるやかに歩め」(←今は絶版)を挙げるところも何とも言えずリアルだ…長々と記される我が家のメニュウもそうだし、漫画雑誌名がばーって挙げられるところなんかも、こういう具体的なものたちに頭の中な満ちている人好き。
    それはハモですよ、へえ、これがハモ。魚へんに豊、鱧、という「秋刀魚の味」のエピソードが出て来るところも…この人美味しすぎる!
    ふーんイブサンローランのParisか…と引き出しから取り出す。レモンとか香草とかのにおい? これってバラだと思ってた。そしてあまり好きではない。

    ジョイスの『ユリシーズ』のようだった。鍵かっこがないところも、桜子のところでは女々しい思考になるところも、一文一文が長くて主語が一読では分からなかいところも。

  • 2010-07-11

  • 目白を舞台とする4部作のひとつ。金井さんの独特の文体が、一見読みにくそうでもあるが、どんどん読めるという私にとって不思議な小説。

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著者プロフィール

金井美恵子
小説家。一九四七年、群馬県高崎市生まれ。六七年、「愛の生活」でデビュー、同作品で現代詩手帖賞受賞。著書に『岸辺のない海』、『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『文章教室』、『タマや』(女流文学賞)、『カストロの尻』(芸術選奨文部大臣賞)、『映画、柔らかい肌』、『愉しみはTVの彼方に』、『鼎談集 金井姉妹のマッド・ティーパーティーへようこそ』(共著)など多数。

「2023年 『迷い猫あずかってます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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