- 本 ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309405933
感想・レビュー・書評
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2015/07/16
芥川賞がとても話題になったこの日に、受賞作を。
森田剛が主演の舞台にもなった作品。
舞台を観に行ったのだけど、この原作からあの舞台かできたのがすごいわ。
「屋上」の、ポニーの残像のシーンがとても印象的。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん。これが芥川賞。鬱屈とした感じがいいのかな??わからん。
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ブエノスアイレス午前0時
A カザマ、温泉卵をゆでる
たばこを吸う、
朝食、温泉卵+コーヒー
みのやホテル
オーナーは竹村
硫黄が匂う、雪深い湯治場
そこにある、場違いなダンスホール
B 法被を着るカザマ
かつて東京で働いていたUターン組
竹村からダンス用のドレスをとってくるよう言われる
派手な衣装 ポマードやナフタリンの匂い
年寄りばかりのスワッピングパーティ
雪国の閉息感
バスの団体客、窓から覗くミツコの顔
C
ドレスを女将に届ける
団体客のチェックイン
竹村、サルビア会に興奮
D
廊下を不自然に進んでいくミツコ
止めるカザマ
ミツコとのであい
目が不自由
リャマのペンダント
「電報を打たないと」つじつまの合わない言動
ヨシコ登場
三人でフロントへ
「温泉卵の匂い」
硫黄の匂いは懐かしい
主人が肺ガンでなくなったという昔話
フロント電報を頼むミツコ
E
「耄碌した」ミツコの話を同僚にする
ダンスパーティの準備
F
トイレでたばこを吸うカザマ
サルビア会の老人たちの噂話
ミツコがかつて娼婦だったこと
G
ダンスパーティの開催
その給仕をするカザマ(必要があれば踊る)
男たちのプロポーズを待つ女たち
ミツコにプロポーズするカザマ
恥ずかしさから断るミツコ、だが代わりに卵を所望する
主人が肺ガンでなくなったという昔話ふたたび
H
温泉卵を持ってきたが、ミツコは忘れているよう
ムエルテ・デル・アンジェル
自分はカメリア(赤)のどレスは似合わない、という(実際は青のドレス)
殻をむいた温泉卵を渡す
ミツコが誤って卵を落とす
それをメンバー女性の一人が踏み、大騒ぎ
I
翌朝、いつものように温泉卵をゆでるカザマ。ただし、数は多い。
今晩もミツコがホールに来るかを賭けている従業員たち。
横浜の埠頭で娼婦をやっていたというミツコの過去を思うカザマ
そこに見知らぬアルゼンチンの風景が重なる
J
旅館に戻ると、ミツコがいなくなったと大騒ぎ
ヨシコ、姉は基本的に耄碌しているがときどき正気に戻るときがある
騒動をしっかりわかっているのではないか
朝風呂(しかも、男湯)にはいっていた様子
だが、アルゼンチンにいている様子
K
ホールの清掃に取りかかるカザマ
きのうのことがあり、念入りな掃除とシューズの弁償2万円を命じる竹村
自分の卵のことに責任を感じるカザマ
L
夕方、また降り出す雪
再度始まるダンスパーティ
出席しているミツコ
プロポーズするカザマ
受けるミツコ
「タンゴが実は一番好きなの」
「ウォークから、怖いわ」
しかし、流ちょうに踊るミツコ
みなの注目を集めている二人
(90min/70p/39*15*70=40950文字)
人物
カザマ
ミツコ
ヨシコ
竹村
(女将)
(サルビア会のメンバー)
(従業員たち)
場所
雪深い湯治場、みのや温泉
ダンスホール
カザマはかつて東京に働きながら、故郷新潟に戻ってきたUターンの男。いまは、寂れた温泉旅館で、閉息感を感じながら働いている。
その旅館には、オーナーの趣味で場違いに豪華なダンスホールが備え付けられている。
ある日、いつものように老人のダンスパーティの団体客が訪れる。
そこには盲目の老女、ミツコがいた。
彼女はかつて埠頭で娼婦として働いていた、と噂されている。
認知症も煩い、つじつまの合わない言動を繰り返すミツコ。彼女の話の舞台はかつて住んでいたと思しきアルゼンティンのブエノスアイレス。
あるダンスパーティの夜、カザマが供した温泉卵をミツコが落とし、それをほかの客が踏んで大騒ぎになる。
翌朝、一瞬行方不明になるミツコ。だが、程なく見つかる。
その日の晩もパーティに訪れるミツコ。
そんなミツコにカザマはプロポーズを申し込む。 -
P134
第119回 芥川賞 受賞作品 -
B913.6-フジ 000367433
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140711
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1998年上半期、芥川賞受賞作。ちなみに、この時は花村萬月『ゲルマニウムの夜』との同時受賞。タイトルはピアソラの曲名から。物語中でブエノスアイレスは老嬢ミツコの回想、あるいは幻想の中の街。舞台は新潟県と福島県の県境に位置する雪深い温泉町。作者の故郷でもあるようだ。ただし、私小説ではない。読者の共感性はしいて言えば、主人公のカザマに寄せられるのだろうが、それにしては万事に醒めていて、人を寄せ付けないようなところもある。この土地の持つ閉塞感に息苦しくなるような作品だ。
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べつにつらく悲しい話ではないのに、息苦しくなるような閉塞感がわだかまっていて、なんかちょっとやな感じです。でも読み直してしまう。不思議に素敵。
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弁慶から頂戴した一冊。文章から漂う空気と言うか、匂いがとても良くて、個人的にはとても好きな調子の本だった。
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技術的に乾いた演出。それでも情景、景色は鮮明だった。そういう普通の世界の流れの終焉に、甘い狂気にも似た困惑が顔をのぞかせる。老婦人とのダンス。そのとき、情景の中で、紅い世界が鼓動し始める。どんな道を辿って来た登場人物たちの流れも、総て、この赤い世界の中で雲散霧消していく。それはまるで、ブラックホールに感情が
消えて行くかのようだ。物語のすべては、老婦人とのダンスという特異点に消えて行く。ブラックホールの周囲の歪む時空のような、わだかまりを残して。
著者プロフィール
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