雨更紗 (河出文庫―文芸コレクション)

著者 :
  • 河出書房新社
3.46
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本棚登録 : 999
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (148ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309405971

感想・レビュー・書評

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  • 全ての境界線が曖昧な、水分をたっぷり含んだ水墨画のような話。
    長野作品に数多く登場する“二人の少年”の中でも、哉と玲の関係は特に異質で、甘美で、哀しかった。
    この話において「少年の視点で語る」のは重要なポイントだけれど、私は他の誰か…出来れば越智の視点でもう一度この話を読みたい。そうすればきっと、ぼやけた輪郭が実は単純な一本の線で、黒一色だと思われた色彩も暖かさを持っていたのだと気付けるはずだ。

  • 雨、雨、雨。白雲母でも玻璃でもない、光り輝く螺鈿の夜行貝の様に光沢はなまめかしく、蒼白い肌を持つ1人の少年は、哉と玲を間を揺蕩う。幻影に見るのは、過去に池で溺れて死んだ大叔母の弟、御幸か。そして先生や画家の暮林に抱かれる玲。発作の様に17、8歳の頃の少女に戻ってしまう大叔母。哉を現実に引き戻そうとする、叔母と玉於屋の女、常に着物姿の山口安。夏の初め前の雨降る児手山界隈はさながら異界のよう。どのページからも雨と濡れた土の匂いが漂ってくる。個人的には登場人物が「少年」ではなく「少女」の小説だったら、と思った。

  • 事の真相も、これからどう話が進んで行くのかもハッキリしないまま閉じられてしまう、宛ら辻褄の合わない夢の中の出来事のようでモヤモヤ感がある。なのに、そのモヤモヤ感すら耽美という世界に変えて「これでいいんだ」とうっかり思わせてしまう妙技、長野さん流石です。相変わらず言葉遣いが美しいです。

  • ああ、長野まゆみ。なんだかんだ、わたしはこの人の本を結構読んでいるんだけれども、久しぶりに読みました。夏になると読みたくなる作家さん。内容的には、少年と和と雨と狂気、この人の美学が余すところなく発揮されたもの。みんな頭がおかしくて、不穏な影があって、少年はうつくしくて、女性はこわい。この人の小説には美しいものがたくさん詰め込まれていて、それは汚くみすぼらしい現実を徹底的に排除することで、長野まゆみの持つ、そういう夢見る意志の強固さにわたしは惹かれる。

  • 初!長野まゆみ。
    きれいな文章やなぁ~。日本語を使いこなしてるって感じ。
    非常用漢字&聞きなれない言葉だらけで、分からん言葉はスマフォ片手に調べつつ読み進めた。でも唐紙とか水鹿子とか、勉強になった。
    ストーリーは、繊細で透明感があるけどどこか薄暗くて淫媚な雰囲気がします。現代劇ではあるけど、なんとなく非現実的な感じがする。
    人間関係や同一人物の把握が少し難しいけど、そこがこの物語の醍醐味でしょうな!

  • 初めて読み切った長野作品。少年アリスを読むのに疲れて、手を伸ばし読みました。ページも少なく薄い作品かなと思ったのですが、良い意味合いで裏切られました。
    耽美的で美しい文章表現と、こだわりを感じる少年への愛情がつまっています。
    普段は苦手ということもありBL作品には見向きもしないのですが、濃密とはいえない表現のおかげで読み切れました。
    作品としては、ちょっと時間が空いたから読むくらいの軽い気持ちで読めるのがいいですね。ごちゃごちゃ考える作品は後を引いてしまう、切り替えの下手くそな人間なので。

    女性キャラが珍しく終始登場していますが、嫌な女ですね。先生は女性嫌いなの?

  • うーん・・難しい話でした。
    つまり哉と玲は二重人格だったということですね。
    御幸というのは寧子の弟だと思いました。
    善松は親族ではなくて、小間使い兼二人の遊び相手という感じがします。
    寧子が善松に頼んで(命じて)御幸を池に突き落とし、殺させた。
    玲と哉、玲と御幸の関係ですが、水風呂に入るというところが一緒なので、主人格は哉で、御幸が哉に憑いて玲になっている・・・と思ったのですが、家族や安は「玲」だから主人格は玲ですね・・。

    殺された御幸が復讐をするため?に子孫である(寧子の孫である)玲に憑いて(玲となって)蘇った・・?
    寧子は歳のせいで、認知症のようになっているのかもしれないけれど、御幸を殺させたことを後悔して気を病んでいるのかもしれない。
    玲は自分が二重人格であることを把握しておらず、家族はそのことに困っている。
    復讐だとすれば成功しているのでしょうね。

    玲は自分が御幸であること(御幸が憑いていること)が嫌で、哉という別の人格を作りだしたのかもしれない。
    哉に弟がいるというのも引っかかるのですが・・。
    ううむ難しい!
    でも読み終わってすぐはよくわかんねえよ!と思ったのですが、こうやって考えてたら面白くなってきました(笑)

    語り口は哉だけど、哉はこの世には存在していない、というのが面白いですね。

    安の子どもというのは玲との、かな。

  • (あらすじ)「BOOK」データベースより
    その少年の肌は、あの碗の青貝のようで妙に照るんです…
    雨夜に哉を抱いたのは幽霊か?
    美しい教師に愛された少年は本当は誰なのか?
    雨にけむる生と死のあわいで揺れ動く
    魂の交流を描き絶賛された珠玉作。

  • ひらがなと漢字が丁度いい具合に調和した美しい文でつづられる神秘的で妖しくも淡くぼんやりとした世界。なんとなく京都の吉田神社~真如堂あたりを想像して読んでいた。多分雨の日にあそこあたりを歩いたからだろう。あとお屋敷というのが、森見さんの「きつねのはなし」と被ったんだろうな。時間をかけて、言葉を味わうように読んだ。

  • これが長野さんの世界なんだな、ぼやあーっと熱に浮かされたまま終わる感じ。
    妖しい。艶かしい。うつくしい。
    このお話で作者は何を伝えたかったのか?とか考えるよりは、ことばの言い回しや描写、その時その時の雰囲気を愉しんだ方がいい気がする。
    正直全然わからないまま終わったけど(笑)この後味の悪さがやみつきなんじゃないかなあ。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)
東京都生まれ。一九八八年『少年アリス』で文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で泉鏡花文学賞、野間文芸賞を受賞。

「2019年 『掌篇歳時記 秋冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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