- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309406589
作品紹介・あらすじ
一九九七年、神戸市須磨区で起きた小学生連続殺傷事件-「神戸少年事件」で犠牲となった山下彩花ちゃん(当時十歳)の母が綴る、生と死の感動のドラマ。少年の凶器に倒れた愛娘との短すぎた生活、娘が命をかけて教えてくれた「生きる力」。絶望の底から希望を見いだし、生き抜こうと決意した母が、命の尊さと輝きを世の中のすべての人に訴える。
感想・レビュー・書評
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1997年に起きた『神戸連続児童殺傷事件』で犠牲となった山下彩花さん(当時10歳)の母親が、彩花さんの母親として、ひとりの母親として、被害者の親族として、人間として、様々な想いを書いた一冊。
元少年Aが書いた『絶歌』だけを読む気になれず、この本と、亡くなったうちではもう一人の被害者、土師淳くんのご両親が書いたものを読むことにした。
彩花さんの母親は、強行に及んだ犯人を決して許すことはできない、今後も永久に許すことはできないとしながらも、どうして少年がこんな犯行を犯すまで追いつめられてしまったのか、中学生の子どもをもつひとりの母親の気持ちになり、どうにか更生させてあげたいと考える、相反する気持ちをもっている。
なぜ壮絶に憎むべき犯人にそのような気持ちになるのかというと、もちろん事件当初は、犯人に言い表せないほどの憎しみをもっていたが、即死してもおかしくないほどの重傷を負わされ、担当した医師からは「今、生きているのが不思議なくらいです。」と言われた彩花さんが亡くなるまでの一週間の間、また亡くなってからも心の中や、生活の端々で感じる彩花さんの面影から、彩花さんに教えられたからと語る。
人間は生まれてくるときから、運命や使命を背負っている。いくら科学が発達しても、一人の人間を造ることもできないし、その命を終わらせることもできない。造るきっかけや終わらせるきっかけを与えられたとしても、その人間の背負った運命に基づいて死んでいく。
彩花さんも、あれほどの重傷を負わされても、一週間も生き、腫れ上がった頭や顔も早期に元に戻り笑顔をつくって亡くなっていったが、それは両親や兄に生きる力を教える使命を背負っていたからではないか。
自分には想像できるはずもない、苦痛と悲しみと憎しみがあっただろう著者であるが、ただ苦痛や悲しみだけをもったのでは、彩花さんの『死』がそれだけになってしまう、どうにか自分たちの『糧』にしていこうとする、母親の健気な力強さを感じた。
また、マスコミやメディア等の被害者の人権や感情を無視したような取材や報道のあり方、記者の全員がとは言わないが、被害者である自分たちが逃げ隠れしないといけないような現状と、勝手にどんどん明かされる実名報道や捏造報道に怒りと悲しみを覚え、ノイローゼになりそうだった。そして、少年が次に起こした犯行で逮捕され、彩花さんの命を奪ったことも明らかになると、マスコミの取材はさらに加熱し、娘の死を悼む家族にとってかなりの苦痛だったようだ。
未成年者の犯罪が起こるたびに、話題となる少年法に関しても、加害者が一方的に圧倒的に守られた法律で、被害者は何も救われない現実がある。
ただ、彩花さんがそうだったように、著者は友人や親友に恵まれ、近隣の方々や地域の方々、自治会などにも守られ、人の温かさを感じられたことは救いだった。
読んだ本について毎回書評を書かせてもらっているとはいえ、こんなに拙い文で書評にしてしまうことも躊躇われたが、子どもをもつひとりの親として、事件を風化させてはいけないし、被害者の気持ち、関係者の気持ち、加害者となる若年者について、多くの人にこの本を広めていって、多くの人に考えるきっかけを与えられたらと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中学か高校のころに買った本。
神戸連続児童殺人事件の被害者でやる山下彩花ちゃんのお母さんの手記。
事件までの日々、そして事件からの日々を書いたこの本は詳細に苦しみや悲しみそして愛を伝えてきてくれる。
被害者の家族が書いた本なのだから悲しみや憎しみが中心になるのだと思い込んでいたが、彼女は違った。娘が生まれてきてくれたことへの感謝。
生きる力。
そして驚くべき点は容疑者酒鬼薔薇への慈愛…
この点については理解しがたい人も多いと思うが決して綺麗事ではない本音だと思った。
『私たちの宝物だった、たった1人の愛娘を、あんなかたちで奪い取ったあなたの行為を、決して許すことはできません。
一方で、もし私があなたの母であるなら…真っ先に思い切り抱きしめて、共に泣きたい。言葉はなくとも一緒に苦しみたい』
人を憎むことはとてもエネルギーがいること、
許し愛すことでどれだけ救われるか。
そしてそうすることを許してくれた娘への感謝。
幼い私には理解することが
難しい部分もたくさんあったが
また時をおいて、読み返してみたい -
素敵な友人から薦められて読んでみました。
命の尊さ・儚さを直球でうけた感じ。
あまりにも強くて、涙がでなかった。
言葉にあらわせない。 -
さかきばら事件の被害者の母親の手記です。
魂が震える内容です。 -
こんなに素敵なお母さんと
もっと一緒にいたかっただろうに…。
このような残虐な事件は二度と繰り返してはいけないと思った。 -
なぜこんな優しくなれるのか。彩花ちゃんのお母さんに感服。
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彩花ちゃん、優しい子だったんだね。
その優しさを利用して殺めてしまう犯人は本当に酷い。
事件そのもの以上に、自分の子どもとどう向き合っていくか、に重きをおいた本のように感じた。
彩花ちゃんが生きていれば私より年上。
どんな女性になっていたんだろう。きっと綺麗で優しい女性になっていたんだろうなぁ。
御冥福をお祈りします。 -
何らかの形で、あの子の生きた証を残しておきたい。当事者から見た事件の記録というよりは、一人の母親として子供を産み育てることの素晴らしさを伝えたい。人の真心、やさしさ、思いやり、そのすべてを、彩花が人生をかけて私に与えてくれた。
怒りや恨みより、穏やかな思い出や感謝、やさしさが救いです。 -
自分の中にステレオタイプ的な”被害者家族像”がガッツリ出来上がっているんだなあ、と痛感させられる。その固定観念とはだいぶ異なる内容にそこここで戸惑ってしまうけど、遺族の心のありようなんて色々あって当然だよな。