うつろ舟―渋澤龍彦コレクション   河出文庫 (河出文庫 し 1-41 澁澤龍彦コレクション)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309406626

作品紹介・あらすじ

常陸の国はらどまりの浜に流れついたガラス張りの"うつろ舟"。そのなかには、金髪碧眼の若い女人が、一個の筥とともに閉じ込められていた。そして繰りひろげられる少年との夢幻的な交歓-古典に題材をとりながらもそれを自由自在に組み換え、さらに美しくも妖しい一つの"球体幻想"として結晶させた表題作のほか、珠玉の八編。渋沢龍彦、晩年の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • Tasso再読祭継続。
    『ねむり姫』同様、様々な典籍に材を取った幻想時代劇、
    全8編。
    『ねむり姫』が「陽」なら、こちらは「陰」。
    凄惨な怪談の気配が濃厚だが、表題作は
    キーワードの「多幸感」が示すとおり、妙に朗らか。

    以下、特に印象深い作品について。

    ■「魚鱗記」
     江戸時代の長崎で流行したという「ヘシスペル」なる
     水槽の魚を使った賭け事、
     それにまつわる悲劇、そして怪異。
     ラストは小泉八雲の怪談のように、しんみりと物悲しいが、
     事件の鍵を握る不気味な少年の素性は謎のまま。

    ■「花妖記」
     鞆の浦に着いた商人が出会った、
     地元の分限者の次男坊は、昼から飲んだくれ、
     奇妙な話を始めた……。
     エロティックと見せかけて、おぞましい怪談。
     夢野久作の短編をエレガントにしたような。

    ■「菊燈台」
     土佐の伝説「宇賀の長者」、
     延いてはそれを翻案した田中貢太郎「宇賀の長者物語」を
     ベースにした奇談。
     人魚と契り、記憶を失って人買いに攫われ、
     製塩所の苦役に就く美青年は……。
     水の精、また、火の精の死の抱擁。

    ■「ダイダロス」
     タイトルはギリシア神話に登場する発明家で、
     イカロスの父。
     宋から日本へ渡り、
     源実朝のために巨船を建造した陳和卿だったが、
     船はあまりに大きく重すぎて進水すらままならず、
     浜辺で朽ちていった。
     面目を失った陳は隠れ家に蟄居し、
     人語を解す鸚鵡と語らいながら酒に浸っていたが……。
     幾重にも折り重なった人の夢を切り裂いて海に還った
     一匹の蟹もまた、何ものかの夢の中に棲む、
     堅い甲羅よりむしろ儚い泡に近い存在だったのかもしれない。

  • 『ダイダロス』は由比ヶ浜の砂に埋もれた大船がモティーフ。実朝自体は登場しないが、彼の寂寞、墜えた夢が濃霧のように朽ちていく船を覆っている。
    表題の『うつろ舟』補陀落渡海ではなく「他界から来た神々の乗り物」としてのうつろ舟。言葉通りならば中は空っぽということか。諸行無常 の法文を象徴しているのだろうが、そんな故事説話、死や仏法さえも作家の手にかかれば皆等しくお遊びの種になる。
    どの短編も稚気とユーモアが感じられて、後味は清々しい。澁澤玩具のイリュージョンにクラクラと酔う悦び。

    「わたしは実朝公の夢に、かたちをあたえてやりたかった。もし実朝公が空を飛びたいといったら、翼をつくってやったかもしれない。まあ、一種の玩具のようなものだが、わたしはもともと職人だからね、玩具をつくる以外になにができたろうか。それに、あの実朝公が、玩具以外のなにを必要としていたろうか」

  • 澁澤文学を読むと、よくわからない欲望が満たされるのを感じる。

    本作はいくつかの怪談からなる短編集である。どれも耽美的なものであり、文字の行間を追うと、花の香りにも似た濃厚過ぎる芳香が漂ってきそうだ。

  • コレクターが災難に逢ふのは、澁澤フィクションのお約束である。
     『髑髏盃』の、アルハラ受けたお姉さんがひっくり返ると女性のナニから這子(わからなかったらサルボボみたいなのでいいです)みたいなのが出てきて、と言ふのは不気味でよい。
     『うつろ舟』多分映像化不可能。なんかよい。
     他大変よろしい。

  • 2008年11月3日~4日。
    この人の小説にははずれがない。
    少し曖昧な終わり方が多いが、それも味。

  • 日本の美的感性の発明というか、提示

  • 2014

  • ※収録作品(福武文庫と同じ)
    「護法」「魚鱗記」「花妖記」「髑髏盃」「菊燈台」「髪切り」「うつろ舟」「ダイダロス」

  • 時代的には江戸時代をモチーフにした幻想小説。

    怪しい感じが面白かったし、短編で読み易かったです。

  • 護法
    魚鱗記
    花妖記○
    髑髏盃
    菊燈台
    髪霧
    うつろ舟◎
    ダイダロス

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