ポロポロ (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.60
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本棚登録 : 265
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407173

作品紹介・あらすじ

独立教会の牧師だった父親が開いていた祈祷会。そこではみんながポロポロという言葉にはならない祈りをさけんだり、つぶやいたりしていた-著者の宗教観の出発点を示す表題作「ポロポロ」の他、中国戦線で飢えや病気のため、仲間たちとともに死に直面した過酷な体験を、物語化を拒否する独自の視線で描いた連作。谷崎潤一郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ただ、ポロポロ。言葉でも祈りでも願いでも宗教体験でもなく、身につくものでもなく、ご利益のあるものでもない。ぽっかりと空いた底の見えない穴のような観念をポロポロの中に垣間見た。

  • 癒やされるものを感じた。とはいえ、口当たりの良い文章が書き連ねられているわけではない。もちろんコミさんだから奇を衒った表現でこちらを驚かせるわけではないが、言い淀みがあり、すんなりと真っ直ぐストーリーを進めないぎこちなさが存在するのだ。そのぎこちなさはしかし、語義が矛盾してしまうがとても心地良い。それはそのまま、すんなり「物語」を(なんなら小説を)語ってしまってたまるかというコミさんの几帳面さや誠実さの表れであるだろう。ここまで誠実に語ろうとする姿勢は、時代を超えて人の胸を打つ。スケールがでかくない問題作

  • 解説:田中克彦
    ポロポロ◆北川はぼくに◆岩塩の袋◆魚撃ち◆鏡の顔◆寝台の穴◆大尾のこと

  • 挫折

  • 中国戦線の地獄っぷりが淡々と書き連ねられてる短編集。短編集とは言え、地獄っぷりをあぶり出すために淡々とだけど幾重にも重ねられる。最後はどこまでが物語でどこまでが本当なのかわからなくなるけど、今も昔も日本人は日本人だと痛感させられる戦記モノ

  • 田中小実昌 「 ポロポロ 」戦中記。武士道と無関係な生き方。食糧事情と衛生状態の悪さから 生きるのに 精一杯。便のことばかり。

    ポロポロの意味が難しい。ネガティブ要素、神秘要素は含まれていないようだが、言葉に出来ない何かを意味
    *霊体験
    *異質の中にある さらなる異質を暗喩=生きにくい社会を示唆

    *誰にでもあるものが僕には欠けている
    兵隊にいくときは 誰でも死ぬことを考えることが 僕にはなかった

  • 今月の猫町課題図書。昭和19年、太平洋戦争の終末期に入営し、中国で終戦を迎えた著者の回想記。ではあるのだが、著者はかたくなに「物語」を拒絶する。前半におさめられている『岩塩の袋』、『魚撃ち』あたりは「地獄のような経験を冷徹な筆致で描写」といった感じの文章なのだが、後半の『寝台の穴』、『大尾のこと』では、戦争やその記憶を「物語」にしてはいけないとでも言うのか、明示的に物語化を拒否する記述が表われる。そしてあらためて冒頭の『北川はぼくに』を読み返すと、あれは北川が自分の壮絶な経験を物語にしてしまいたかったのではないかと思い至るのだ。表題作『ポロポロ』のみは他の掲載作品と異なり銃後における実家の様子を描いていて、これはこれで面白いのだが、連作集としてみるとやや蛇足な気もする。

  • 五月の読書会課題本。短編私小説集である。表題作は牧師をされていた父親の思い出がメインであり、それ以降は太平洋戦争末期の中国における著者の従軍体験がメインとなっている。生と死が背中合わせのシビアな状況でありながら、それを飄々とした独特の雰囲気の文章で語られているので、よくある戦争体験記にあるような嫌味な感じがなく、想像していたよりも楽しく読めた。

  • ポロポロの感覚は、よくわからない。例えば信仰ではなくても、自分の中にこういう感覚って何かあるかなと考えたのだが、思い浮かばなかった。語感も捉えようのない感じで、そういうものなのだろうと思う。
    解説でも書かれているように、物語化を拒否するというのはこの「ポロポロ」の感じを伝えるのに適していると思った。ヴォネガット『スローターハウス5』で「そういうものだ」という表現が繰り返し出てくるが、ちょっと似ているかも。
    これから読む人へ。表題作以外はひたすら下痢話なので食前に読むのはやめた方がいいです。

  •  初めて読む田中小実昌。
     初めて読んで途端に惚れてしまった。
     この「ポロポロ」は7編からなる短編集なのだが、自伝的回想録になっている。
     最初の一編で表題作の「ポロポロ」は、独立教会の牧師だった父親との回想になっているが、残りの6編は第二次世界大戦時に召集され、中国に渡り、やがて終戦を迎え1年程経過するまで、が描かれている。
     独特の語り口のせいか、戦争中の描写などにあまり悲惨な印象を受けることはない。
     悲惨な印象を受けることはないが、それでも読んでいると物凄い状況だったことが判る。
     それにしても、ほんとうに独特な語り口であり、とても素敵な日本語の使い方をする。
     決して正確な日本語ではないだろうし、国語の先生などからすれば間違いだらけの日本語なのだろうが、ほんとうにグイグイと心に入ってくる。
     特に自分の葛藤を表現する時など、たどたどしく、そしてくどいまでの繰り返しがあるのだが、それらが見事なまでに心にしっかりと入ってくる言葉たちであり、文章なのだ。
     いや、グイグイと入ってくる、というよりはグイグイと引きずられていく、といったほうが正確かもしれない。
     それがこの人の言葉であり、この人の思考なのだろう。
     彼がとことん「物語」を否定していた理由も読んでいるうちに痛いほどにわかってくるような気になる。
     他の作品もぜひ読んでみようと思う。

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著者プロフィール

田中小実昌

一九二五年、東京生まれ。小説家・翻訳家。東京大学文学部哲学科中退。七九年、『香具師の旅』で直木賞を、『ポロポロ』で谷崎潤一郎賞を受賞。二〇〇〇年没。主な著書に『アメン父』『上陸』『自動巻時計の一日』『くりかえすけど』、訳書に『湖中の女』(レイモンド・チャンドラー)、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(ジェームズ・M・ケイン)などがある。

「2020年 『ほのぼの路線バスの旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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