インストール (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.22
  • (179)
  • (439)
  • (1250)
  • (222)
  • (53)
本棚登録 : 4367
レビュー : 618
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407586

作品紹介・あらすじ

学校生活&受験勉強からドロップアウトすることを決めた高校生、朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生、かずよしに誘われておんぼろコンピューターでボロもうけを企てるが!?押入れの秘密のコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、二人の成長を描く第三八回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 外山滋比古さんの本に、「とにかく読め!」「好きな文章は真似てみよ」的なことが書いてあったので、積ん読してたこれを。
    今まで、蹴りたい背中と勝手に震えてろを読んだことがあるけど、文体?が好きかもしれない。
    インストールは、主人公視点で書かれている。朝子がその時その瞬間に思ったことが伝わるような感じ。すらすら読みやすいが、皮肉めいた、どこか冷めたような朝子の視点が度々出てくる。そのせいか、自分の読むスピードに独特のリズムを感じる。
    他の作品の時にも思ったが、この、リズミカルに皮肉を散りばめているような感じが好きなのかもしれない。

    you can keep itは第三者視点。シンプルに綺麗な比喩が出てくる。
    兎にも角にも、こういうことなのですね、外山先生。

    本を閉じて驚いた。これ380円なのね。外税。

  • 高校生が書いたようなレベルではなかったので驚いた。
    しかし高校生にしか書けないような、主人公の心情が事細かに描かれていて新鮮味があった。
    個人的にはかずよしの性格や会話が面白かった。

  • リズミカルな文章の中に鋭い視点と皮肉めいた主人公の感情が見える、さらりと読めるお話です。高校生という微妙な年頃と不登校という設定はいくらでもドロドロと重くなりそうですが、中古のパソコンとエロチャットという一昔前のインターネットのアングラ感、そして小学生の男の子という要素か重なって少しコミカルになっています。この作者にしか書けないお話だなと感じました。

  • 『インストール』の瑞々しさも然ることながら、併録の『You can keep it.』が秀作だ。自己防衛心から物を介し人との接触を避けてきた城島の、致命的な失態から人間的繋がりが生じる描き方が見事だ。絢香の疑念の過程は男ならゾワッとする。感情的衝突を避けてきた城島が、奇しくも怒りと嫌悪という最悪の感情に直面し隠していた想いが沸々生まれる様は、10代後半であった綿谷氏ならではの視点だろう。それでいてカラッとして暗くない。もし4人がインドに行ったらどうなるんだろう、と後日談も楽しめそうな作品である。

  • 綿矢りさのデビュー作らしい

    短編2本で両方とも学生の話
    表題のインストールは登校拒否を決めた女子高生が
    祖父にもらったpcを捨てて
    それを拾った小学生とエロチャットでバイトをするなかで大人の世界を知る。そして最後に親の行動を知り成長?するといった話

    短い文章であっという間に読み終わった
    構成やキャラクターがとても面白く読み終わったあと
    いい意味で物足りなさを感じた。

    もう一つの話も同様短い・・・
    自分が使っているものを人にあげる城島の話
    you can keep itはいいから取っておきなさいという意

    綿矢作品は初めて読んだのだけれど
    とてもキャラクターや構成が好みだった。
    具体的には暗さがないところがよかった
    今度はもう少し長めの作品を読んでみようと思う。

  • いやあ、最高。何が良いって、まず主人公が不登校の女子高生ってのが最高。次に不登校を親に隠してるところが最高。さらにネットという非現実世界の中で大人になった気分に浸っちゃうのが最高。最後に何も変わってない自分に気がついて前に進もうとするところが最高。いずれも似た経験があるので、非常に強く共感した。絶妙な心理描写に終始、苦さと甘さのごちゃ混ぜになった恍惚の感情が胸の中で溢れ出し、空に向かって叫びたくなるような気持ちにさせられました。

    「17歳の書いた作品」という目線で評価するのは本来の作品評価とは違うと思うのだが、かすかな感情の機微を的確に捉えたどうしても10代にしかできないのではと思える表現が随所に光り、巷に並ぶのと同じ称賛の言葉を思わず口にしてしまう。一方で、綿矢りさの描く女性像には「男性向け」と言われても頷けるような、どこか「少年漫画のヒロイン」チックなキャクター作りがあると感じる。私が男性だからか、それが面白いように私にはハマる。そういえば文章のテンポの良さも漫画に通じるところがある。この辺の漫画的な要素は好みが分かれやすいかもしれない。少しコミカルさのあるキャラクター造形と軽快で緩急に富んだリズミカルな文章の上に、それらと対極にあるような感情のかすかな揺れを絶妙に描いていくところが綿矢りさの魅力なのではないかと思った。

  • 祝!!「大江健三郎賞」受賞。

    進化した綿矢りさ。

    このほど綿矢りささんが「かわいそうだね?」で「大江健三郎賞」を受賞した。
    「群像」5月号掲載の選評で「およそ信じがたいことが、(中略)たくみに読み手を納得させてしまう語り口で、現実のことに表現されている」と大江氏は評価した。『産経ニュースより』(なんかこの日本語、変だよなあ。産経新聞、書き間違ってないか?)

    いつこの本のレビューを書こうかと悩んでいたが、これをきっかけに書くことにした。
    なんといっても天下の『大江健三郎先生』であらせられる。
    その大江氏が自分ひとりだけで選ぶ賞なのだ。
    綿矢さんもうれしかったでしょうね。10年間、悩みぬいた甲斐があったというものです。
    もう迷わずに、悩まずに、次々と傑作を世に送り出してください。
    *第1回(2007年)は、長嶋有『夕子ちゃんの近道』が受賞なんですね。初めて知った。
    しかも『受賞作品は英語・フランス語・ドイツ語のいずれかでの翻訳、および世界での刊行』だって。彼女の表現の素晴らしさを外国語に翻訳するのは至難の業じゃないの?
    そこが心配ですな。いっそのこと、村上春樹氏に翻訳してもらえばどうでしょう。でも、彼は英語を日本語にするのは上手いけど、逆は得意じゃないか。

    この「インストール」は、当時史上最年少での「文藝賞」受賞作品。
    17歳の女子高生が書いたとは思えない、天才作家の類まれな才能を存分に味わえる鮮烈なデビュー作。
    なんとも痛快で、女子高生の心の葛藤を他の誰にも書けない表現で文章にしたこの作品に、私の心が、勝手にふるえた。

    個人的には綿矢りさの中で一番好きな小説だ。
    小説の完成度としては芥川賞受賞作「蹴りたい背中」のほうが上だろうが、主人公は“ハツ”よりこちらの“朝子の”ほうが魅力的だ。同様にサブキャラとしても、“にな川”よりも、ませた小学生“かずよし”のほうが。
    ハツより朝子のほうが可愛らしく感じるのは、こちらが高校一年、あちらが高校三年という年齢の違いだけではあるまい。
    文学作品としてみれば、やはりハツの心の葛藤のほうが深く斬り込んで描写されているが、朝子には、悩みを抱えながらも、あっけらかんとした痛快さがある。

    素直に他人と繋がることができない。
    「あんたにゃ人生の目的ってものがないのよ」と問われ、或いは自ら問いかける朝子。
    「何もそんなことで悩まなくても」「そんなに難しく考えなくてもいいじゃない」
    世の中の多くの高校生はさほど深く拘りを持たないようなことを簡単に割り切れない朝子。
    癒されるのは、妙に大人びた小学生かずよしのおかげだ。
    どこか憎めないかわいい小学生。でも後に朝子も知るのだが、彼の家庭も複雑な事情を抱えている。
    そんな素振りを見せずに淡々と朝子に接するとても健気な少年、かずよし。
    「蹴りたい背中」には、にな川への仄かな“愛”が最後に感じられるが、これは“愛”というよりも、年齢は違えど運命共同体のような親近感を覚えているようだ。
    それは某石原都知事(某じゃない……)いうところの閉塞感ではない。
    誰もが持ちうる、ごく普通の感情だ。
    おそらく都知事閣下には、死ぬまで理解できないだろう。
    若者の開放感を奔放に表したと評された彼のデビュー作で、芥川賞を受賞した「太陽の季節」とは全く相容れないものだからだ。
    おそらく彼には、本当の弱者の心は理解できない。
    いじめがあれば、いじめられるほうが悪いと思う人。いじめには、いじめられるだけの理由があるはずと信じている人。そんな弱い心では生きていく資格がないと思うような人。それが某知事だからだ(ここで某など使っても何の意味もないけれど)
    彼の作品を読めば、一目瞭然。
    「おおい雲よ」「青年の樹」など、すべて開放的で、悩みなんて、酒・バクチ・女・喧嘩・スポーツなどで簡単に吹き飛ばせる、と信じている主人公だ。
    だからホントのことを言うと、中学時代、悩みなんてこれっぽっちも持っていなかった私は都知事の小説が好きだった。
    それが変わったのは、まさかの高校受験失敗から。
    それからは心に葛藤を持つ人間、常に心に傷を負った人間になってしまったのだ。
    ここ一番で、自分があれほど勝負弱い人間だとは、それまで思ってもいなかった。
    ま、私のことなどどうでもいいのですが───

    ちなみに「インストール」だけでは短すぎて書籍化できないので、無理に書かせたと思われる「Can you keep it?」だが、これも、この短さで、それなりの、秀作だ(代名詞ばかりのなんと曖昧な表現……)。
    実際こんな奴いるか? という人物設定だが、そんな疑問をも思い切り弾き飛ばすストーリー。

    綿矢りさは本当に面白い。
    どこまで手を伸ばしても彼女の引き出しの奥に届かないのでは?と思わずにはいられない。底なし沼のような才能の持ち主だ。
    石原慎太郎に嫌われ、大江健三郎には好かれる。
    全く困った才能を持った女流作家だ。
    綿矢りさを評価できる大江氏は、作家として都知事と格が違うなあ、とあらためて尊敬した。
    そんなわけで、受賞記念として5月に講談社で行われる二人の公開対談まで申し込んでしまった(笑)
    (追記)「新潮5月号」(4/6発売)に新作「ひらいて」が掲載されているらしい。
    評価が高いので、GWに図書館から借りて読もうっと。

    • whitestone009さん
      綿矢りさ、良かったです。なぜ何年も読まずにいたのか。もったいない話でした。

      さて、コメントありがとうございます。馬歴は半年なので、同名の馬...
      綿矢りさ、良かったです。なぜ何年も読まずにいたのか。もったいない話でした。

      さて、コメントありがとうございます。馬歴は半年なので、同名の馬が居たなんてついぞ知りませんでした。なんせ「石」ですからね。
      早速調べてみました。山あり谷ありの人生、もとい馬生だったようですね。JRAの93年AJCCのコラムはなかなかに感動ものでした。
      ホワイトストーンVsレガシーワールドのように、思いもかけず、馬に気持ちを持っていかれる瞬間があります。その味を知ってしまったのが運のツキですが、そんな時は決まって投票をはずしちゃってるという運の無い馬ファンです。
      2012/04/18
    • kwosaさん
      koshoujiさん

      リフォロー&コメント、ありがとうございます。

      綿矢りささんは、『インストール』を単行本発売当時に読んで才能の萌芽を...
      koshoujiさん

      リフォロー&コメント、ありがとうございます。

      綿矢りささんは、『インストール』を単行本発売当時に読んで才能の萌芽を感じ、『蹴りたい背中』で完全にノックアウトです。
      金原ひとみさんの『蛇にピアス』もそうですが、話題作りの芥川賞受賞じゃないことくらい読めばわかりますよね。
      特に『蹴りたい背中』はミニマルな世界を描いている様で、玄関先からみる青空が全ての人々に繋がっているような広がりを感じます。一見グローバルな様でいて、全世界を巨大な城壁で囲い込もうとするかのような元都知事とは対極にあるような気がします。

      高木彬光、面白いですね。積ん読には『破戒裁判』が控えているので、そちらも楽しみです。

      2012年のブクログ本棚はほぼミステリ一色でしたが、基本的に何でも読みます。
      これからもよろしくお願いします。
      2012/12/18
  • ネットでのつながりに懐疑的な人が多い。顔を見たこともない人とメール交換する神経がわからないと。ネットの方が素顔がにじみ出ることを知らない人なんだなと思った。どんなに隠したって何通かメール交換すれば本質は見えてくる。
    昔,怠惰な時間を過ごした。世間の人が無意味な時間と評価しようが何しようが,ぼーっとしている時間に意味があるとそう言って抵抗していた。世の中に無駄なものはない。
    この本の中に気付いていても気付かぬふりをするそんなやさしさがあった。

  • 大好きな綿矢りさのデビュー作。
    17歳の若々しさが垣間見える作品。

  • 今さらながら、綿矢りささんはじめて読んだけど、めちゃめちゃ面白いじゃないか!朝井リョウのエッセイに出て来て、蹴りたい背中の人だよなーって思ってて古本屋よったら売ってて、小学生と高校生がコンピューターで一儲けっていう見出しに惹かれて買いました。もう設定からして面白いし、ところどころハラハラさせられる感じもたまらなくて、句読点の打ち方とか、綿矢さんならではとゆう独特な感じがして、すっと読めちゃいました。最後どうすんねんって思いながら読んでたけど、ちゃんと高校生で、ちゃんと小学生で。もうひとつのYou can keep itも好きだったな。あげて、すぐ去る。なるほどな。自分の中の哲学とゆうかなんとゆうか。城島はなんとゆうか優しすぎるのか、なんとゆうか。とにかく、他のも読んでみたくなりました。

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著者プロフィール

綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年生まれ。京都市立紫野高校在学中に17歳で初めて書いた小説「インストール」で、文藝賞受賞。19歳で書いた第2作の「蹴りたい背中」で、芥川賞受賞。史上最年少での受賞として話題になり、同作は120万部の大ベストセラーに。
その後、早稲田大学教育学部に進学、卒業後は、専業の作家として執筆を行う。2011年、『かわいそうだね?』(文芸春秋)で大江健三郎賞受賞。
上記以外のおもな著書に『しょうがの味は熱い』『勝手にふるえてろ』(文芸春秋)、『夢を与える』『憤死』(河出書房新社)、『ひらいて』『大地のゲーム』(新潮社)など。

「2015年 『ウォーク・イン・クローゼット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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