インストール (河出文庫)

著者 : 綿矢りさ
  • 河出書房新社 (2005年10月5日発売)
3.22
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  • 本棚登録 :4163
  • レビュー :593
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407586

作品紹介・あらすじ

学校生活&受験勉強からドロップアウトすることを決めた高校生、朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生、かずよしに誘われておんぼろコンピューターでボロもうけを企てるが!?押入れの秘密のコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、二人の成長を描く第三八回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。

インストール (河出文庫)の感想・レビュー・書評

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  • いやあ、最高。何が良いって、まず主人公が不登校の女子高生ってのが最高。次に不登校を親に隠してるところが最高。さらにネットという非現実世界の中で大人になった気分に浸っちゃうのが最高。最後に何も変わってない自分に気がついて前に進もうとするところが最高。いずれも似た経験があるので、非常に強く共感した。絶妙な心理描写に終始、苦さと甘さのごちゃ混ぜになった恍惚の感情が胸の中で溢れ出し、空に向かって叫びたくなるような気持ちにさせられました。

    「17歳の書いた作品」という目線で評価するのは本来の作品評価とは違うと思うのだが、かすかな感情の機微を的確に捉えたどうしても10代にしかできないのではと思える表現が随所に光り、巷に並ぶのと同じ称賛の言葉を思わず口にしてしまう。一方で、綿矢りさの描く女性像には「男性向け」と言われても頷けるような、どこか「少年漫画のヒロイン」チックなキャクター作りがあると感じる。私が男性だからか、それが面白いように私にはハマる。そういえば文章のテンポの良さも漫画に通じるところがある。この辺の漫画的な要素は好みが分かれやすいかもしれない。少しコミカルさのあるキャラクター造形と軽快で緩急に富んだリズミカルな文章の上に、それらと対極にあるような感情のかすかな揺れを絶妙に描いていくところが綿矢りさの魅力なのではないかと思った。

  • おもしろかった。
    不登校を始めた、JK朝子と超然とした小学生の青木君が、押し入れの中で風俗嬢のフリをして、エロチャットのアルバイトをする。
    しっかりした青木君と、平均以下、JK力の低い朝子の掛け合いが面白い。

    もう一つのYou can keep it.は、少し痛い話。
    この手の痛い話は、苦手だ。

  • 『インストール』の瑞々しさも然ることながら、併録の『You can keep it.』が秀作だ。自己防衛心から物を介し人との接触を避けてきた城島の、致命的な失態から生じる人間的繋がりが生じる描き方が見事だ。絢香の疑念の過程は男ならゾワッとする。感情的衝突を避けてきた城島が、奇しくも怒りと嫌悪という最悪の感情に直面し隠していた想いが沸々生まれる様は、10代後半であった綿谷氏ならではの視点だろう。それでいてカラッとして暗くない。もし4人がインドに行ったらどうなるんだろう、と後日談も楽しめそうな作品である。

  • 綿矢りさのデビュー作らしい

    短編2本で両方とも学生の話
    表題のインストールは登校拒否を決めた女子高生が
    祖父にもらったpcを捨てて
    それを拾った小学生とエロチャットでバイトをするなかで大人の世界を知る。そして最後に親の行動を知り成長?するといった話

    短い文章であっという間に読み終わった
    構成やキャラクターがとても面白く読み終わったあと
    いい意味で物足りなさを感じた。

    もう一つの話も同様短い・・・
    自分が使っているものを人にあげる城島の話
    you can keep itはいいから取っておきなさいという意

    綿矢作品は初めて読んだのだけれど
    とてもキャラクターや構成が好みだった。
    具体的には暗さがないところがよかった
    今度はもう少し長めの作品を読んでみようと思う。

  • 綿谷さんの作品を読むのは2作目。
    ざらざらしていて、生々しい印象が強い。

    本作は、時代背景に即して女子高生の成長を描いている。
    それは、何者にもなれない自分が、さらに全てを掃除してしまって空っぽになりかけたところに現れる救いによって始まる。
    コンピュータでフーゾクチャット嬢のバイトを始め、やりがいを感じつつもあった。その中で、彼女が気付いたこと。
    それは、彼女は普通の人間が好きだということ。学校にいては普通の人間を疎ましくも感じるけれども、ネット社会の異常性には付き合いきれないことを彼女は知ることになる。
    そして、母達を騙すことなんてできないということ。自分の小ささも実感するのだ。

    主人公の心情変化は唐突なものもありついていくのが少し大変だが、道を外れたいといった欲求に潜む危険さが伝わると同時に可能性を無駄にしないようにしようと思える一冊でした。

  • ぐいぐい引き込まれる文体とテンポの良い展開が相まり、読むのが楽しかった。学校をプチドロップアウトして小学生とのエロチャットバイトに精を出す設定が、自分が捨てた使えないパソコンをインストールしなおしてもらって、新たな生の喜びを見つける変身・成長の物語(主人公も著者も若さに溢れる女子高生なんだから!)として素晴らしい。才能は若いうちから芽生えている。

  • 思いつきで手に取って読みました。今更感はありますが、高校生の時に読まなくてよかったと思いました。苦悩が重すぎて、当時読んだら嫌いになってたかもしれない。
    「あっ、この人はマジで才能があるんだ・・・!」と思いました。こんなことを思うのは初めてです。小説を読んで、この人は文章力があるとか、描写がいいとか、設定がいいとか、そういう感想を持ったことはあります。しかし、「インストール」はそういう普遍的な感覚を超越しています。
    文章力という言葉で表すのが憚られるような文章です。説明が上手いのではなく、リズム感が卓越しています。こんな句読点の使い方、体言止め、心情の入れ方、音楽的と言えばいいのでしょうか。圧倒的です。苦しいほど美しい。誰がこんな文章を書けるでしょう。設定は確かに平凡かもしれませんが、平凡な設定からこれだけの苦しみを書き起こしたのには驚きます。
    彼女は他の誰にも真似ができない、輝くものを持っています。「インストール」には才能の輝きと共に、思春期の苦しみが編み込まれています。書くことの痛みがこちらにも伝わってきます。先輩作家が、文庫本の最後の解説で「苦しくてもあなたには才能があるから書かねばならない」と書いていました。本当にそう思います。

  • 今さらながら、2001年文藝賞受賞のこの作品を読んでみた。当時、彼女は17歳。日本語力や、着想力の斬新さが高く評価されているが、私が一番驚くのは、その緻密な構成力だ。「かずよし」との出会いからエンディングまで、実に”しゃらくせぇ”「いき」な作りに仕上がっている。電脳世界の仮想空間というだけなら、これほどに新鮮な息吹を伝えられなかっただろう。すなわち、「かずよし」を設定したことこそが、この小説世界を立体化させたのだ。あくまでも真剣な(つまり滑稽でもある)聖璽と、浮かれたキャラクターのリアルな雅さんも秀逸。

  • 何かの賞を受賞した有名な作品ようですが、特に素晴らしいとは思わなかった。特に最初の部分は読みづらい文章だった。

  • 祝!!「大江健三郎賞」受賞。

    進化した綿矢りさ。

    このほど綿矢りささんが「かわいそうだね?」で「大江健三郎賞」を受賞した。
    「群像」5月号掲載の選評で「およそ信じがたいことが、(中略)たくみに読み手を納得させてしまう語り口で、現実のことに表現されている」と大江氏は評価した。『産経ニュースより』(なんかこの日本語、変だよなあ。産経新聞、書き間違ってないか?)

    いつこの本のレビューを書こうかと悩んでいたが、これをきっかけに書くことにした。
    なんといっても天下の『大江健三郎先生』であらせられる。
    その大江氏が自分ひとりだけで選ぶ賞なのだ。
    綿矢さんもうれしかったでしょうね。10年間、悩みぬいた甲斐があったというものです。
    もう迷わずに、悩まずに、次々と傑作を世に送り出してください。
    *第1回(2007年)は、長嶋有『夕子ちゃんの近道』が受賞なんですね。初めて知った。
    しかも『受賞作品は英語・フランス語・ドイツ語のいずれかでの翻訳、および世界での刊行』だって。彼女の表現の素晴らしさを外国語に翻訳するのは至難の業じゃないの?
    そこが心配ですな。いっそのこと、村上春樹氏に翻訳してもらえばどうでしょう。でも、彼は英語を日本語にするのは上手いけど、逆は得意じゃないか。

    この「インストール」は、当時史上最年少での「文藝賞」受賞作品。
    17歳の女子高生が書いたとは思えない、天才作家の類まれな才能を存分に味わえる鮮烈なデビュー作。
    なんとも痛快で、女子高生の心の葛藤を他の誰にも書けない表現で文章にしたこの作品に、私の心が、勝手にふるえた。

    個人的には綿矢りさの中で一番好きな小説だ。
    小説の完成度としては芥川賞受賞作「蹴りたい背中」のほうが上だろうが、主人公は“ハツ”よりこちらの“朝子の”ほうが魅力的だ。同様にサブキャラとしても、“にな川”よりも、ませた小学生“かずよし”のほうが。
    ハツより朝子のほうが可愛らしく感じるのは、こちらが高校一年、あちらが高校三年という年齢の違いだけではあるまい。
    文学作品としてみれば、やはりハツの心の葛藤のほうが深く斬り込んで描写されているが、朝子には、悩みを抱えながらも、あっけらかんとした痛快さがある。

    素直に他人と繋がることができない。
    「あんたにゃ人生の目的ってものがないのよ」と問われ、或いは自ら問いかける朝子。
    「何もそんなことで悩まなくても」「そんなに難しく考えなくてもいいじゃない」
    世の中の多くの高校生はさほど深く拘りを持たないようなことを簡単に割り切れない朝子。
    癒されるのは、妙に大人びた小学生かずよしのおかげだ。
    どこか憎めないかわいい小学生。でも後に朝子も知るのだが、彼の家庭も複雑な事情を抱えている。
    そんな素振りを見せずに淡々と朝子に接するとても健気な少年、かずよし。
    「蹴りたい背中」には、にな川への仄かな“愛”が最後に感じられるが、これは“愛”というよりも、年齢は違えど運命共同体のような親近感を覚えているようだ。
    それは某石原都知事(某じゃない……)いうところの閉塞感ではない。
    誰もが持ちうる、ごく普通の感情だ。
    おそらく都知事閣下には、死ぬまで理解できないだろう。
    若者の開放感を奔放に表したと評された彼のデビュー作で、芥川賞を受賞した「太陽の季節」とは全く相容れないものだからだ。
    おそらく彼には、本当の弱者の心は理解できない。
    いじめがあれば、いじめられるほうが悪いと思う人。いじめには、いじめられるだけの理由があるはずと信じている人。そんな弱い心では生きていく資格がないと思うような人。それが某知事だからだ(ここで某など使っても何の意味もないけれど)
    彼の作品を読めば、一目瞭然。
    「おおい雲よ」「青年の樹」など、すべて開放的で、悩みなんて、酒・バクチ・女・喧嘩・スポーツなどで簡単に吹き飛ばせる、と信じている主人公だ。
    だからホントのことを言うと、中学時代、悩みなんてこれっぽっちも持っていなかった私は都知事の小説が好きだった。
    それが変わったのは、まさかの高校受験失敗から。
    それからは心に葛藤を持つ人間、常に心に傷を負った人間になってしまったのだ。
    ここ一番で、自分があれほど勝負弱い人間だとは、それまで思ってもいなかった。
    ま、私のことなどどうでもいいのですが───

    ちなみに「インストール」だけでは短すぎて書籍化できないので、無理に書かせたと思われる「Can you keep it?」だが、これも、この短さで、それなりの、秀作だ(代名詞ばかりのなんと曖昧な表現……)。
    実際こんな奴いるか? という人物設定だが、そんな疑問をも思い切り弾き飛ばすストーリー。

    綿矢りさは本当に面白い。
    どこまで手を伸ばしても彼女の引き出しの奥に届かないのでは?と思わずにはいられない。底なし沼のような才能の持ち主だ。
    石原慎太郎に嫌われ、大江健三郎には好かれる。
    全く困った才能を持った女流作家だ。
    綿矢りさを評価できる大江氏は、作家として都知事と格が違うなあ、とあらためて尊敬した。
    そんなわけで、受賞記念として5月に講談社で行われる二人の公開対談まで申し込んでしまった(笑)
    (追記)「新潮5月号」(4/6発売)に新作「ひらいて」が掲載されているらしい。
    評価が高いので、GWに図書館から借りて読もうっと。

    • whitestone009さん
      綿矢りさ、良かったです。なぜ何年も読まずにいたのか。もったいない話でした。

      さて、コメントありがとうございます。馬歴は半年なので、同名の馬が居たなんてついぞ知りませんでした。なんせ「石」ですからね。
      早速調べてみました。山あり谷ありの人生、もとい馬生だったようですね。JRAの93年AJCCのコラムはなかなかに感動ものでした。
      ホワイトストーンVsレガシーワールドのように、思いもかけず、馬に気持ちを持っていかれる瞬間があります。その味を知ってしまったのが運のツキですが、そんな時は決まって投票をはずしちゃってるという運の無い馬ファンです。
      2012/04/18
    • kwosaさん
      koshoujiさん

      リフォロー&コメント、ありがとうございます。

      綿矢りささんは、『インストール』を単行本発売当時に読んで才能の萌芽を感じ、『蹴りたい背中』で完全にノックアウトです。
      金原ひとみさんの『蛇にピアス』もそうですが、話題作りの芥川賞受賞じゃないことくらい読めばわかりますよね。
      特に『蹴りたい背中』はミニマルな世界を描いている様で、玄関先からみる青空が全ての人々に繋がっているような広がりを感じます。一見グローバルな様でいて、全世界を巨大な城壁で囲い込もうとするかのような元都知事とは対極にあるような気がします。

      高木彬光、面白いですね。積ん読には『破戒裁判』が控えているので、そちらも楽しみです。

      2012年のブクログ本棚はほぼミステリ一色でしたが、基本的に何でも読みます。
      これからもよろしくお願いします。
      2012/12/18
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