- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309407661
感想・レビュー・書評
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失業中の若い女性2人の気ままなトルコ、徳島、石垣島への旅の物語。特に事件が起こるわけでもないが、自然体の2人が爽やか。奔放な音生(ネオ)が時々見せる鋭い指摘が気持ち良かった。
初めて市立の電子図書館を利用しました。蔵書が少し古い、予約可能が1冊など不満もありますが、24時間利用可能、文字サイズが変更可能で、音声付き書籍もあるなど重宝しそうです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主人公は大阪の人で、関西弁が小気味いい。当然のような顔で窓際の席を奪ってしゃべり続ける音生21歳、彼女はとても美しくてめちゃめちゃかわいいらしい、旅先で乗り合わせた徳島の男子高校生や、沖縄に来ていた大学生等が見惚れるほどの美しさは大変興味深い。主人公の芽衣26歳は突然決まったトルコ旅行へ、いいことばかりではない人付き合い、とても自然で気に入った。関空に帰りついて直ぐに徳島行きを決行、若さゆえのフットワークの軽さもいい。沖縄での自由な様子もいい。旅行記だけではなく、音生が都合よくふりまわす男との関係も自然な表現で描かれており気持ち良く読める物f語り。
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ストーリーはともかくね、会話が、しかも女の子たちの会話が続いてくことほどいいことは他にないってくらいたのしかった。最初は嫌やったけど最後はたのしかった。
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とっても自然な関西弁で描かれた女の子2人の物語。
特に何かが起こるわけでもないのに、彼女たちの目線を通して癒されるような気持ちになるのが不思議。
登場人物に決して無理をさせない優しさが、柴崎氏の持ち味なんだろうと思う。 -
若さととびきりの美貌があれば怖いものなし!
一瞬で周りの人を虜にできる美貌の持ち主 音生 と並の容貌ながら根っからの面食いの 芽衣。
2人の行き当たりばったりの旅と、男性観…「きょうのできごと」と同じく気取らない関西弁が生き生きした、リアル女子トークが楽しい。
そうそう、美人より並の見た目の子の方が面食いだったりするんだよね。
最初は美人だけどあまりにも強引で傲慢な音生に反発を覚えたけど、芽衣のちゃらんぽらんさもなかなか。でも憎めない2人組です。 -
柴崎友香の著書の中で一番好き。主人公のグダグダ感が人ごととは思えない。
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最初に思ったのは“面白くなさそう”だった。
そして、音生と語り手(主人公)のどっちかが絶対作者だなと思った。
ネオは超絶美人でわがままで自分の思い通りに生きてきたようなタイプ
主人公はぱっとしないで面食いで人の意見に左右される典型的干物女みたいなの。
作者がネオにあこがれて書いた小説か、自分がネオみたいな生き方をしてきたのを客観的に記述してみようという作品なのかなーっと。
解説を見る限り「どちらでもある、“作品自体”が筆者なのだ」という見解だったみたいですが。
内容自体は自由気ままに色んなとこいって現実逃避してるだけの作品みたいに感じました。
自分なりにこの作品にストーリー性を持たせるなら、主人公が優柔不断で責任転嫁ばかりする人間で、そうした人間性を要所要所で指摘されている。
そうした中で超絶可愛いネオとともに過ごす期間で自分を見つめなおして、最後沖縄で“自分のあり方”というものを見つけてネオと別れて一人で大阪に戻る、みたいにしたかった。
けど、終わり方は最後までネオにゾッコンであって、「まっいいか」というスタンスで終わっていた。これは腑に落ちなかった。
でも、この作品のよさがそこにあるということが解説から分かった。
解説では、9.11以降の小説では楽天的なものは批判され、メッセージ性の強い作品が好まれる(というか求められる)ようになっていたと書いてあった。
そうした中で今のままで変わる必要はない!ありのままに生きたらいいじゃん!
という真っ向から平凡さ、悪く言えばだらしない生き方を描く。
多分こんな能天気な生き方をしていたら今の不況の世の中じゃやっていけないだろう。
でも、それを描き、リアリティのある仕上がりにする。
これが作家の力かな、なんて思った。
解説によってとっても味のある作品になったと思います。
小説に対して“意味”を求めすぎていた自分にとっては
こうした表現方法で“意味”を持たせるってのは新しかったです。 -
柴崎さんは会話のリズムがうまいと思う。特に関西弁ね、その肝は。だからとても入り込みやすい。何が面白いかって聞かれるとわかんない。何か大仰なことが起こったりするわけではないから。けど、読んでて気持ちよいのです。保坂さんも大のお気に入りらしいね、「きょうのできごと」で解説書いたり、あとはたしか何かの文芸誌で対談してたのも読んだことある。(06/2/5)
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物々交換の本棚で手に取ったもの。
わたしは芽衣パターン。きれいな顔に弱くてなかなか行動に移せない。
音生みたいな強烈な子、好きか嫌いかの両極端だろうな。次へ次はぐんぐんやりたいように進んでくのははたから見てたら気持ちいい。
なんの計画もなくあっちこっち旅するのいいな、と思いながら音生みたいな子が隣にいないと出来なさそうだな。 -
柴崎友香「青空感傷ツアー」
河出の文庫版。
素晴らしいクライマックス。なにより海なのがいい。クライマックスの海、言えば浅学の私は脊髄反射で保坂和志!「プレーンソング」!と言うだろう、ラストが海なのはいい。「陽の名残り」の海もいい。
これは全体を通して言える事だが、地の文でその景色の奥にある土地の営みを予感しながらも、次の行で始まるそれらと一切関係のない会話。これが良い。
そこで交わされた会話は後に感傷を生むのかもしれないと言うと大げさだけれど、その感傷の目の前には営みをたたえた風景もあるよね、と自然に思った。そりゃ素晴らしいやんけ。
ツアーとは移動で、感傷とは後ろへ消えていった景色に覚える感情の事だ。
解説を読む。またしても長嶋有が、柴崎友香の前作「きょうのできごと」の解説を書いた保坂が〜と言っている。この人も保坂好きすぎんだろと思う。