青空感傷ツアー (河出文庫 し 6-2)

著者 :
  • 河出書房新社
3.23
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本棚登録 : 460
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407661

感想・レビュー・書評

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  • 柴崎友香さんの2作目。

    社会人3年目の主人公芽衣と5個下の音生。
    梅田の紀伊國屋前でバッタリ再会してから、出張先の東京でも再会し、大阪への途上で関空からトルコへ。帰国から知り合いのいる徳島の旅館へ直行し、その後石垣島へ。

    トルコあたりらへんを読んでる時に音生なんなん?ってなってた。無計画刹那系な超可愛い(らしい)女子。
    徳島の永井くんへの評価も上からやし、いよいよもう苦手!と思ってたけど、最終盤あたりにちょっと好きになってた。「え、言うほど悪い娘じゃないんちゃう?というか素直でええ娘やん」と見事に掌返しにあい、反対に主人公の芽衣こそしっかりせえよと思い始める不思議。

    女の人が読んだらきっともっと面白く感じるのかな。そんな小説でした。

  • 失業中の若い女性2人の気ままなトルコ、徳島、石垣島への旅の物語。特に事件が起こるわけでもないが、自然体の2人が爽やか。奔放な音生(ネオ)が時々見せる鋭い指摘が気持ち良かった。
    初めて市立の電子図書館を利用しました。蔵書が少し古い、予約可能が1冊など不満もありますが、24時間利用可能、文字サイズが変更可能で、音声付き書籍もあるなど重宝しそうです。

  • 物々交換の本棚で手に取ったもの。

    わたしは芽衣パターン。きれいな顔に弱くてなかなか行動に移せない。
    音生みたいな強烈な子、好きか嫌いかの両極端だろうな。次へ次はぐんぐんやりたいように進んでくのははたから見てたら気持ちいい。
    なんの計画もなくあっちこっち旅するのいいな、と思いながら音生みたいな子が隣にいないと出来なさそうだな。

  • 柴崎友香「青空感傷ツアー」
    河出の文庫版。
    素晴らしいクライマックス。なにより海なのがいい。クライマックスの海、言えば浅学の私は脊髄反射で保坂和志!「プレーンソング」!と言うだろう、ラストが海なのはいい。「陽の名残り」の海もいい。

    これは全体を通して言える事だが、地の文でその景色の奥にある土地の営みを予感しながらも、次の行で始まるそれらと一切関係のない会話。これが良い。

    そこで交わされた会話は後に感傷を生むのかもしれないと言うと大げさだけれど、その感傷の目の前には営みをたたえた風景もあるよね、と自然に思った。そりゃ素晴らしいやんけ。
    ツアーとは移動で、感傷とは後ろへ消えていった景色に覚える感情の事だ。

    解説を読む。またしても長嶋有が、柴崎友香の前作「きょうのできごと」の解説を書いた保坂が〜と言っている。この人も保坂好きすぎんだろと思う。

  • 『失恋したら、この本持って旅に出よう』
     この紹介文で、私はこれを手にした。まあでも、旅って言ったって、失恋した相手くらいしか一緒に行く人がいないんだけど。……って、どんだけ寂しい人間なんだ自分は。別に寂しいと思ったことはないけれど。なんて思いつつ、ページを捲る。
     果たしてこの本に、大きな意味があるのだろうか。恐らく、何か重要すぎるメッセージなんてどこにもない。ゆるゆると、時に激しく時間が過ぎていくような本だ。それが良いなと感じた。
     これが本当の失恋旅行なのかはわからない。そもそも、失恋しているらしいのは語り手ではなく、その友人……美しすぎる、ネオという名前の少女だけだ。だが、この世に「本当の」と冠せるものがいくつあるのかは甚だ謎だから、これもまた一種の失恋旅行であるには違いない。
     主人公の芽依は、様々なもの……景色でも人物でも、美しいものに惹かれている。その時の描写はとても綺麗でいて、しかも緻密だ。景色もさながら、特にこの作者は、恐らく、人が好きなのではと思う。人のこと……特に身体をよく観察している目だ。
     私はこの本を、綿あめのようなものだと思った。一色ではなく、様々に色のついた、レインボーの綿あめ。甘いのだけれど、色によっては別の味になる。辛味もあれば苦味もある。塩味もある。そんな具合の綿あめだ。しかも、ふわりとしていて、どことなく輪郭がぼやけている。
     失恋したとき、この本を旅行に持って行けば、何かしら変わるのかも知れない。読後にそう感じた。主人公たちの関西弁が、心地よく響いてくると確信できるからだ。失恋した相手以外に、本という相棒があるとすれば、私は最強かもしれない。もっとも、自分が寂しい人間という事実は容易く動かないが。

  • 主人公は大阪の人で、関西弁が小気味いい。当然のような顔で窓際の席を奪ってしゃべり続ける音生21歳、彼女はとても美しくてめちゃめちゃかわいいらしい、旅先で乗り合わせた徳島の男子高校生や、沖縄に来ていた大学生等が見惚れるほどの美しさは大変興味深い。主人公の芽衣26歳は突然決まったトルコ旅行へ、いいことばかりではない人付き合い、とても自然で気に入った。関空に帰りついて直ぐに徳島行きを決行、若さゆえのフットワークの軽さもいい。沖縄での自由な様子もいい。旅行記だけではなく、音生が都合よくふりまわす男との関係も自然な表現で描かれており気持ち良く読める物f語り。

  • 私の好みから言うと、こういうゆるふわガーリーな筋はむしろ苦手だ。
    が、柴崎友香に限定して、惹かれてしまうものがある。なぜだろう。

    一見、音生という奇矯なキャラクターや、旅先のきれいな風景、が読みどころに感じられるかもしれない。
    そういう表面的な読み方で満足することもできる、のだろう。
    が、私は柴崎友香が何気なく書き記す、視覚描写の的確さ、に惹かれているのだと感じながら読み進めた。(つまりは保坂和志と長嶋有の解説の通りなのだが。)

    例のごとく読書感想をネットで漁っていて、膝を打つ記事があった。
    (以下引用)
    いわゆる“行きて帰りし物語”的な、旅を通しての成長、変化が描かれる小説ではない。
    けれどかといって、音生の強烈なキャラクターを描くためだけに芽衣が語り手になっているわけではなくて、
    一言で言ってしまうと、“芽衣がとにかくいろんなものを見る”という小説
    (以上引用)

    永井くんにトルコで見たものを話す場面があるが、見るという行為、それを他者に話すという行為、の間に時間的な間隙がある。
    それはもちろん当たり前なのだけれど、この柴崎友香は間隙のせいで生じるズレの間隔を、「なかったことにしない」。
    するとそこに「記憶」という要素が加わるので、描写も会話も多層的になる。
    この「多層性」こそが、「確かに今ここに誰それがいる」という感覚をもたらす。
    登場人物の関係性でいえば、今ここにわたしとあなたが確かにいる、読者の読み方でいえば、すべての登場人物が確かな時間を積み重ねた上でいま本の中に開かれていく、という感覚が得られる。
    柴崎友香の作家性というか魅力はそのあたりにあるのではないだろうか。

  • 超美人、なだけにゴーマンな音生と音生に振り回されるのにこりごりにもかかわらず、その可愛さにやられてしまうっている私、芽衣。音生の失恋と私の失職をきっかけになぜかトルコ、四国、石垣島と旅することになる。

    突拍子もないストーリー展開に思えるが、旅行先と旅行から旅行への繋ぎがそう思える部分。それぞれの旅先では違った意味での我がまま二人組珍道中という感じ。

    あえて共感ポイントを探すとすると、もしかしてこれが親友?というアプローチかな。

    最後には見た目じゃない、言うこと聞くやつでもないという、本質的な人との付き合い方を示唆したような感じもするけど、たぶん改まってそんな大上段に構えているわけじゃないしー、といった主張も聞こえてくる。

  • ページをめくる手が止まらない、それくらい面白かった!柴崎さんの作品って内容自体は何てことはないのに何故だか面白い。大阪弁の会話の心地よさも抜群。そしてリアリティ。この子たち絶対知ってる子やわ…って思ってしまうねんなぁ。

  • 音生のことも芽衣のことも最後までそんなに好きになってあげられなくて読んでて複雑なまま終わった。

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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