最後の吐息 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 78
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407678

作品紹介・あらすじ

蜜の雨が降っている、雨は蜜の涙を流してる-ある作家が死んだことを新聞で知った真楠は、恋人にあてて手紙を書く。咲き乱れるブーゲンビリア、ベラクルスの熱風、グァバの匂い、ハチドリの愉悦の声。メキシコを舞台に、鮮烈な色・熱・香・音が甘やかに浮かび上がる恍惚と陶酔の世界。短篇「紅茶時代」を併録。第三四回文藝賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 【本の内容】
    蜜の雨が降っている、雨は蜜の涙を流してる―ある作家が死んだことを新聞で知った真楠は、恋人にあてて手紙を書く。
    咲き乱れるブーゲンビリア、ベラクルスの熱風、グァバの匂い、ハチドリの愉悦の声。
    メキシコを舞台に、鮮烈な色・熱・香・音が甘やかに浮かび上がる恍惚と陶酔の世界。
    短篇「紅茶時代」を併録。
    第三四回文藝賞受賞作。

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    [ 参考となる書評 ]

  • これは……ひっさびさにつまらんなあ。

    ハチドリ、ハイビスカス、ハチドリ、ハチドリ、ハチドリ、グアバ、グアバ。

    実体を伴わない単語によるイメージばかり。
    山田詠美女史との対談を読んで興味を持ったのだけれど、対談で述べられているほど二人の共通項は(読者の視点から見て)多くはない気がする。

  • 最近『俺俺』を読んで、この著者がデビュー作から訴えて来ていると私が感じていたことは勘違いではなかったと確信した。

    「最後の吐息」はこの本のタイトルでもあるのだけど、この本で登場する、南米に滞在している日本人の真楠が、日本にいる恋人の不乱子に向けて何度かに分けて書き送る小説のタイトルでもある。
    読んでいると、この小説内小説のほうについ目を奪われがちなのだけれども、これが小説内小説であることを決して忘れてはいけない。このミツの物語は挿入なのだから。この小説で最も重要なのは、ミツの物語でない部分。
    身を切られるようだったのは、ミツの雨が降っている、雨はミツの涙を流している、と書き送ったあと、文庫本でのP89からの、初めて不乱子から返事が寄越されるところだった。「二人が交わったように見えるのは文字の上だからで…文字で交わりたくて、でもどれほど近づいても無理で、それでも交わってみようとするから…私が手紙を書き続けて来たのはそんな文字の上の交わりに変わってしまうのを拒否したいからでした。私は書くことで、私とあなたの間がずれていくことに敏感でいようとしたわけです。」

    ここで、冒頭のハチドリになってしまいたい、猫になってしまいたい、と願う真楠のことが思い出される。あるいはこの文庫の同時収録されている「紅茶時代」にも出てくることだけれど、「交わり」どころか相手そのもの、自分の欲するものそのものに自分がなりかわってしまいたいという、ほとんど著者の願いとも解釈できそうなこの願望。
    これは「女」というものを対象としているのかも実はあやふやだ。というのも小説内小説においてミツの恋人になる女は、「ジュビア」と「雨子」。ジュビアとは日本語で「雨」を意味するらしいから、ミツは実は「雨」と交わりたい、「ミツの雨が降っている、雨はミツの涙を流している」を願っているだけなのではないか?彼女たちは実は「雨」という名前をもっているからこそ選ばれた女たちなのではないか?という軽く頭をなぐられたような絶望に襲われる。

    「それでも手紙を書くことであなたに会いたい」と締めくくられる不乱子からの糾弾の手紙に対して、それでも不乱子になってしまいたい、という、「会う」というぶつかり合い、あるいはズレのようなものを無視した欲望がはっきりと提示され、しかしその欲望は、小説内小説で、「小さな黒い活字のような」蟻に食われてミツが革命を果たせないまま死ぬという、不可能の形をとって終わりを告げる。

    パロディの形をとっているとか、マジックリアリズム系であるとか、そういう特徴もあるけれど、彼は全然それだけじゃない。ちゃんと読めば、彼がオリジナルに訴えていることがちゃんと手に取るようにわかる。とてもストイックで、完成度の高い小説だと思う。もっと多くの人に読まれたらいいのに。


    あと同時収録の「紅茶時代」は彼らしさが最大限に爆発してる小説で、本当にすばらしい、何度も爆笑させられたし。後の小説ではこういう調子が控えめにされてきていて、登場人物たちのぶつかり合いというか火のつきそうな痛々しい擦れ合いが目立つようになるけれど、この著者が愛に満ちた人物であるだろうことがこの作品ではよくよく分かる。

    『目覚めよと人魚は歌う』のレビューに続く。

  • これが星野智幸の原点。そう思うと感慨深い。
    これは、夢だ。夢の論理によって書かれている。そして、書くことについて思考する。なぜ書くのか。書き手はいつもその理由を探す。

  •  「まだ読んだこともない作家が死んだ」。メキシコの大学院に通う真楠は、新聞での訃報を読み、自分の恋人にあてた手紙として小説を書く。咲き乱れるブーゲンビリア、ベラクルスの熱風、グァバの匂い、ハチドリの愉悦…。原色のメキシコを舞台に、中上健次、ガルシア・マルケスへのオマージュのもとくりひろげられる陶酔世界。ラテンアメリカの濃厚な香りが漂う異色作。

  • メキシコで金の魚細工を作る日本人青年の話ですが、あからさまに中上健次の『千年の愉楽』を意識した文体と内容です。自然と身体の相互作用の生々しい描写は、独創とは言えないにせよ、単なる模倣では出せない濃密さを漂わせています。(「SWIFTIANA」2006年2月1日の記事参照)

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著者プロフィール

星野智幸(ほしの ともゆき)
1965年ロサンゼルス生まれ。東京都立戸山高等学校、早稲田大学第一文学部文芸専修をそれぞれ卒業後、産経新聞社記者に。1991年産経新聞社を退職、1991年から1992年、1994年から1995年の間、メキシコに留学。1996年から2000年まで、字幕翻訳を手がけていた。
1997年「最後の吐息」で文藝賞を受賞しデビュー。『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、『俺俺』で大江健三郎賞、『夜は終わらない』で読売文学賞、『焰』で谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞している。

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