ショートカット (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.34
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本棚登録 : 413
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309408361

感想・レビュー・書評

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  • この人の描く日常と異性同士の係わり合いがとっても好きです。

    普段も素敵な人間関係気付いてるのかなぁと考えてしまう。

    遠距離恋愛がテーマの連作短編集です。

  • 12/21は
    遠距離恋愛の日
    「1221」の両側の1が1人を、中の2が近附いた2人を表すため。距離と交通機関をテーマにした小説を。

  •  
     映画館で「寝ても覚めても」という作品の予告編を観ながら思いだした。

      柴崎友香。

    「きょうのできごと」(河出文庫)で登場して、行定勲が映画にした。小説は読んでいたが、映画をテレビで見て、映画もいいなと思った。

     そのときからずっと読んでいるが、面白いことに出来が悪いと思った「春の庭」(文春文庫)という作品で芥川賞をとった。ぼくの先生の一人の哲学者が「ヒャクキン小説」とおっしゃるのを聞いて、二の句が継げなかった記憶がある。ともあれ、この作家に「芥川賞」は似合わないと思った。「そんなたいそうなことじゃないんです。」って、本人がいいそうな気がする。

    「今このとき」が書かれている小説、それがやっぱりおもしろい。だから「これ、いいよ。」そんなふうに紹介したい。ところがこれがムズカシイ。ぼくが好きな小説はすこし変なのかもしれない。そんなふうに思うこともある。「ショートカット」(河出文庫)もそんな一冊。

    《今日の仕事が終ったらすぐに、由史くんに電話しようと思っていた。由史くんは仕事中かもしれないけれど、それでもどうしても話したかった。おなじ場所にいるだけでなにも言わなくてもわかることが、電話の向こうとこっちで別々の景色を見ながらいくらしゃべってもきっと伝わらないって、決定的にわかり始めていた。だけど、そのことを、電話をかけて、確かめたかった。電話の向こうの由史くんに伝えたかった。》『やさしさ』

    《「なんで、今日、こんなとこまで来たんやろ」和佳ちゃんは声を落とさないで言ったけれど、なかちゃんは聞こえないのか聞こえていないふりをしているのか、その言葉には反応しなかった。角度の高い太陽のせいで小さくなっている影を引き連れて、相変わらず周りの建物や空を見回しながら歩いていた。足元を見ると、自分の影もとても短かった。「なんかさ、後から考えたら筋が通ってないのに、その場ではわかったような気になって返事してしまうことって和佳ちゃんもある?そんな感じ?」「うーん。」》『パーティー』

    《「なんか、意外。和佳ちゃんはそういうとこはさらっとした感じかと思ってた。」「なんで?どこが?だって、わたし、好きな人とめっちゃ遠くの知らへん場所で暮らすって決めてるねんもん。好きな人についていって見知らぬ遠くの街で暮らすっていうのこそ、女の子の醍醐味やん。」わたしより三つ年上の和佳ちゃんは、中学生の女の子みたいに、その夢になんの疑いも持っていない眼で語った。「そうかな?大変そうやん。知らへんとこなんかいったら。」「大変やけど、愛があれば苦労もできる。それが愛。」「遠くって、どのぐらい遠く?」
    船が出る、一応港と呼べる場所なのに、どこを見渡しても行き止まりに見えた。近くの工場から、鉄を削る音やとても重くて固いものがぶつかり合うような音が重なって響いてくる。空は、だんだんと雲のほうが多くなっていた。
    「とりあえず、日本やったらあかん。希望は太平洋を越えたくって、近くても東南アジア。」「じゃあ、外国の人と結婚すんの?」》『パーティー』

     この本のなかには『ショートカット』『やさしさ』『パーティー』『ポラロイド』という四つの短編小説が入っている。それぞれ別の話なんだけれど、一つめの引用で「由史くん」に電話しようとしている女性と二つめと三つめの引用で「和佳ちゃん」と話している人は登場人物としての名前は違うようなのだけど、どうも同一人物ではないかという感じの小説群。就職して東京に行ってしまった彼を思う『ショートカット』、その彼と別れそうになっている『やさしさ』、彼と別れた『パーティー』、新しい彼と出会う『ポラロイド』という連作。

     気いったところを探して引用しはじめてみたけれど、ドンドン書き写してしまいそうになってしまう。この案内をここまで読んできた人は「どこがおもしろいねン?」きっと、そう思っているだろうと思う。

     こんな言い方をするともっと意味不明になってしまいそうだが、今、ここにたしかにあって、みんなには見えない本当のことにとらわれてしまうとか、仲の良い友達と一緒にいるのに、自分が一人ぼっちだと感じるような経験をしたことはないだろうか。一緒にいる人は、きっと変な気がする。

     この小説はそんな気分をとてもうまく書いている。この人の小説を読んでいると、そんな気分の中に主人公と一緒にワープしてしまうような、スリリングなリアリティがとても心地よい。

     例えば一つめの引用で「由史くん」に電話をかけたいと切実に思っている彼女はこの時、友達と電車の先頭車両に乗っている。

    《一人しかいないのに進行方向を指差して確認している運転手にも、それ(前方の風景)は同じように見えているはずで、不安にならないのか不思議に思った。進む先が見えていないのに、どうしてちゃんと進めるんやろうって。目の前の線路が見えているだけで、ただ昨日も乗っていたからだいたいのことがわかるだけやのに。》

     なんて事を不思議に思いながら、前方を見つめている。

    《発車のベルが世界を分ける。ドアが閉まって、わたし達は空気と一緒に運ばれる。移動していることを感じないまま》
    今、立っていた世界から引きちぎられるように遠ざかっている自分を見つけてしまう。

     今ここにいるということがなにげないことなのに、哀しい。そこに立って見せているこの作家の作品は、なかなか「ヒャッキン」では買えないものなのではないだろうか。

     うーん、これではやっぱり案内になっていないか?(S)

  • 作者は同い年だけど、私にはやや乙女チック過ぎたかも。

  • 始まりは興味を惹かれたけど、
    全体を通したら思ってたのと違ったという感じ。
    各キャラもあんまり好きになれず。

    終わり方は爽やかでよかった。

  • ワープ。

    その後の傑作「パノララ」につながる秀作。

  • 17/01/25 ⑥
    関西弁なのにやさしい。ほろほろにやさしい。

    ・それから、どこか遠くを見つめるような目をして、
    「おれは、あの人に会いたい」と、言った。(P25 ショートカット)

    ・「会われへんようになるなんて思わへんかった。卒業しても、家も近いし、次があるって思ってた。なんの根拠もなかったのに、今思うと」
    「それは違うで。会いたいって思ってるから、会えるんやで。誰でも、たぶん。(P38)

  • 行きたい気持ちさえあればいつでも好きなところへ行けるんだ、という明るい短編集。別れの予感がする遠距離恋愛の話が多いのだが暗さはまったくなく、読後は晴れ晴れとした気分になった。柴崎友香の中でも一番爽快さのある作品だと思う。
    恋人に対して離れていく心、それから人生そのものを非常によく象徴している『やさしさ』の次の一節が印象に残っている。
    「発車のベルが世界を分ける。ドアが閉まって、わたしたちは空気といっしょに運ばれる。移動していることを感じないまま。(85P)」

    解説で「その小説以外のことをいろいろ考えてみたくなって、その小説を読んでいるのに、その小説のことを、つい忘れてしまう」から柴崎友香の小説は素晴らしいのだと言っていて、柴崎友香の作品の魅力を絶妙にうまく表現した説明だと思った。言われてみると私も、彼女の作品を読んでいたはずがいつのまにか自分の身の回りのことを回想していることが多い。彼女の作品には、平凡な生活を送っている私のような人でも、自分と自分の周りの世界を重ねられる懐の深さがある。

  • 遠距離恋愛がテーマの連作短編だけど、全然甘くない。
    甘くないどころか、終わりを予感させるような作品が多いけど、だからといって切なくもなく、体温が低めの人達の話という感じ。
    日常を切り取っての描写が、私のツボに入らないので、波長が合わないんだろうなあ……。
    文章は読みやすいので、波長が合う人には面白い作品なのだと思われます。

  • 最初に読んだのは図書館で借りた単行本やったけど、文庫本も買った。発売当時友だちにもらった手紙がはさまってて余計にいとしく感じました。

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著者プロフィール

柴崎友香(しばさき ともか)
1973年、大阪府生まれ。大阪府立大学総合科学部国際文化コース人文地理学専攻卒業。大学卒業後4年OLとして勤務。1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞最終候補に残る。1999年、「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学ブック・チャート BEST200』に掲載され、同作が収録された『きょうのできごと』が2000年刊行、単行本デビュー。その後同作は2003年に行定勲監督により映画化された。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞・織田作之助賞大賞、2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。
主な著作に『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』『わたしがいなかった街で』『週末カミング』『パノララ』『かわうそ堀怪談見習い』『千の扉』『公園へ行かないか? 火曜日に』など。『寝ても覚めても』が東出昌大主演、濱口竜介監督で映画化されカンヌフェスティバルに出品された。2018年9月1日公開。書籍の増補新版も刊行されている。

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