天皇の国・賤民の国: 両極のタブー (河出文庫 お 15-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309408613

感想・レビュー・書評

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  • 長い間、国家権力によって呪縛されタブーとされていた天皇制批判が敗戦によって解禁され、学問研究の自由が保障されたので古代史をはじめとする歴史研究も大きく前進した。
    天皇を直接この目で見ることはタブーだった。天皇を見ると目が潰れるとまで言われていた。
    天皇王権に最後まで果敢に抵抗した蝦夷や隼人などこの劣等の先住民に対する抑圧と差別である。
    アマテラス依頼の皇統を中心とした単一にして純潔な日本民族という歴史の偽造はこのような抑圧と差別と搾取の過程で作為されたものである。
    ヒンドゥー教のカーストと告示した穢れの伝播思想、タブーはまさに共同幻想と呼ばれるべきものであった。旅回りの役者は身分が一番低かった。部落には差別と抑圧と貧困と戦いながら、このようを生き抜いてきた古老が多い。筆舌しがたい苦難の人生を送ってきたにも関わらず、いやそれゆえに部落の古老たちは心優しく、涙もろい。義理人情に厚い。
    底辺という視座からは人の世の冷たさ、暖かさ、全てのものがよく見えるのだ。生き抜くための血みどろの経験から学んだ深い知恵と透徹した人間観を持っているのだ。

  • 「賤民の側から天皇の存在を逆照射するとき、天皇の支配構造がはじめてくっきりと浮かび上がってくるのではないか」という問題意識から、階級社会的観点で天皇制を論じるのは意義深い事ではあるとは思うのだが、本書はエッセイ集であるのでどこまで論拠が正しいのかよくわからない。ただし、昭和の終わりに書かれた文章が多い(明治の終わりの文豪達の話も出てくる)ので、平成の終わりに読んでみて時代・世相比較してみるのは中々面白かった。
    バラモン(ヒンドウ)と仏教の関係を鎮護国家に当てはめる等の比較思想的な試みは面白いのだが、こういうのは自由度が高い分説得力が欠けてしまうのが難点か?
    伊藤博文の下での実行部隊としての井上毅の存在と役割についてはあまり考えた事はなかったので、もうちょっとフォーカスして考えてみてもいいのかな?という気づきにはなった。

  • いろんな原稿を集めたものなのでダブりが多いが一読に値する内容です

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著者プロフィール

沖浦 和光(おきうら・かずてる): 1927−2015年。大阪府生まれ。東京大学文学部卒業。桃山学院大学名誉教授。民俗学、比較文化論、社会思想史専攻。被差別民と被差別部落の研究をおこなった。国内外の辺境、都市、島嶼を歩き、日本文化の深層をさぐる研究をつづけた。主な著書に、『宣教師ザビエルと被差別民』 (筑摩選書)、『幻の漂泊民・サンカ』 (文春文庫)、『天皇と賤民の国』 (河出文庫)がある。

「2023年 『「悪所」の民俗誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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