- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309408835
作品紹介・あらすじ
要するに、何が大事なの?世の中の問題あれこれを脚色なし遠慮ぬきに説明しよう。ネットはどうなる?会社ってなーんだ?株って儲かるの?プライバシーって本当に大切?…名物コラム「山形道場」をはじめ、現在を生きるための指南が満載。快刀乱麻、悪口雑言、山形浩生の社会ケーザイ雑文集。
感想・レビュー・書評
-
さすがにネタが20年近く前の話題が多いだけに、古臭くなってる物もある。特にネット関係。
ただ、未だに古びてない物もあるのはさすが。
山形氏の癖なのか、多少上から目線の所もあるが、自分はバカを自覚しているのであまり気にはならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前、呉智英の文章で、なぜ吉本隆明は論争に強いのかを論じたものを読んだことがあります。吉本は、花田清輝を始めとする大物に論争を挑み、勝利してきました。この理由について呉は、吉本がマルクス主義の教義の外に立っていたことが、彼の強さの理由だと論じています。
本書の著者である山形浩生の「強さ」にも、同じような理由があるように思います。学者や評論家の多くは、ナショナリズムや市場主義、ネット社会といったテーマについて論じていますが、彼らはいつも、そうしたテーマについての「思想」を語っています。しかし著者は、「思想」を語るのではなく、「思想」がその上で実現されるはずの「インフラ」について語っており、そこに著者の、他の学者や評論家たちに対する「強さ」の理由があるのではないでしょうか。
「反・反共」の立場を標榜していた丸山眞男の時評は、戦略的な言説として読まれる必要があります。同じような例として、近年では仲正昌樹の名前をあげることができるかもしれません。仲正のスタンスは「保守」ではなく、「反・反ネオリベ」と呼ぶべきものです。著者の戦略について考え始めると、仲正と同じような「反・反ネオリベ」的な言説に見えてくることもあります。しかし、やはり著者の言説は、「思想」的なレヴェルでの戦略として読まれるべきではないのでしょう。そうした「思想」的な考慮を働かせる暇があるんだったら、とっとと制度設計に取りかかるべきだというのが、おそらく著者のスタンスなのだと思います。仲正の本は「思想」の解毒に効果がありますが、著者の本はそこからさらに一歩踏み出して、読者を実践へと促すような効果があると言えそうです。
そうした意味では、本書は「啓蒙的」ないし「啓発的」な著作として理解できるように思います。もっとも個人的には、それこそ「ないものねだり」とは知りながらも、やはり「思想」的なもの足りなさを感じてしまいます。 -
夫から名前は聞いていたので、試しにどんな本か読んでみた。世の中の経済の仕組み、会社とは何か、といったあたりは自分の経験と照らしあわせて読めるので、スイスイ読めて楽しかった。コンピュータ関係の話をする人という前提がなかったので、そこらへんの話が出てきたときはちょっと面食らった。まあ、専門的な知識がないと読めない、という文章でもないが、少々とっつきにくい感があった。
本書に通底しているスタンスは、うわべだけで理屈をこねくりまわしてもっともらしいようなこと言う人って多いけど、もっと掘り下げて考えてみませんか、ということだと思う。多分。失礼ながら、いわゆる理系の人でそういうことを考える人がいるとは思ったことがなかったので、感心(?)と同時に深く共鳴したものである。 -
やっぱり今読むと古臭いのは否めないな…本の内容は山形さんのホームページでも読めちゃったりするし…まあ、本で読めるのはありがたいんだけどね。
まあ、読んだら読んだで今でも山形先生が持つ凄まじい先見性と知性と口の悪さをピリピリと感じます。
NPO/NGOのところは、本質を抉りすぎて誰かが飛び蹴りしてきそうなんですが…
山形浩生さんがクッソ頭良いのは勿論の事だけど、ここまで経済の話を読みやすくできるんだな~と思っちゃう。
もう、この人に経済語らせたら誰も勝てないよ…
-
「商売だビジネスだということになると、しょせん人間なんて金とセックスと虚栄心だけで動くのよ、と斜に構える人たちもいる。かわいそうに。セックスはさておき、金と虚栄心の根拠をつきつめていってごらん。(⋯)いったい、人は最終的になぜ何かに価値があると思うのか。それは結局(衣食が足りているという前提のうえでだけれど)、ひとえにこの夢にかかっている」(p.263)
「インターネットの大部分では、いつかどこかにいる「わかってくれる」誰かに向けて、受け手のいない情報が発信され続ける世界になりつつある。(…)その一方の携帯電話の世界では、相手も自分と同じくらい(あるいは自分以上に)無価値だという前提の中で、人びとは相互に拘束しあって、時間ではかれる最低限の無価値な「関心」を(金を払って!)交換しつづける」(p.312-313)
「尊厳だの人命尊重だのは別に実体があるわけじゃなくて、そういうことにしましょうという人間のおもいつきでしかないわけで、結局は実はどういう形で若い連中が年寄りを養うようにさせようか、という話の裏表でしかない。戦争で死んで年寄り守るのがいいのか、生きて働いて養うのがいいのか。つまりは社会がどういうかたちで若手の労働力にたかろうとするかという、同じ穴の狢みたいな話ではあるのだ。そしてもちろん、どっちがいいかは状況しだい、だよね。ただ、若い頃にはみんな自由を語りたがって、歳をとるにつれて急に態度がかわり、社会もだいじ、滅私奉公しましょうとかるのは、自分がどっちに近い存在かという認識がだんだん変わってくるからなわけだ。大人になるってそういうこと」(p.244)
「新聞社内部にミニチュア世論みたいなものがあって、それがブヨブヨした無意識として記者さんやデスクたちを支配してる。書く人は客観公正中立な記事を書いているつもりやんだよ。読者を考えて、そこにあわせて情報の出し方をきちんと操作するーーそれを意識的にやっているのは、スポーツ新聞も、あと小林よしのりくらいだ」(p.255) -
NGO/NPOで爆笑。
単行本「山形道場―社会ケイザイの迷妄に喝!」を読んだ日付で登録。その後、こちらの文庫版の「要するに」も読んだ。 -
エッセイはエッセイでいい。町山さんとかと同じにおいを感じる。(12/7/2)
-
図書館で見つけたので、久しぶりに山形さんの本を読んでみました。既読感があったので、もしかするとネットの記事を読んでいたのかもしれません。
前に読んだ本では特につっかかることがなく、わかったつもりになっていたんでしょう、今回読んでみて内容を理解することができませんでした。まさしく「何が書いてあるかわからない」でした。
それは恐らく、著者がとても根っこの部分について考えているからだと思います。例えば「プライバシーが重要って言うけれど、そもそもプライバシーって何?というか、さらにプライバシーという価値観が生まれたのは何故?みたいに。
読みながら、著者が持ち出すお題をちょっと考えてみたけれど、これといった仮定さえも思いつきませんでした。
これが本当の意味での「考える」ということなんだなと思い知りました。
負けました。 -
HotWiredやらサイゾー、ワイヤードに掲載されていた記事を集めた本。HotWiredは本当に素晴らしいサイトだったな。
日本の産業にはそれなりに競争力もあって、お役所とかにとやかく指導される必要なんかほとんどなかった。
人はなぜ太りすぎて後悔するんだろうか。それは基本的には人は目先の快楽には負けやすく、将来の苦労については甘い見通しをしてしまうから、といっていい。
スーダンには奴隷を買うNGOがある売られているかわいそうな奴隷を買ってあげて解放してあげましょう、ということだが、奴隷商人からしたら、こんないい客はいない。
グラミン銀行は村で女性を集めてお金を貸す。ほとんど返金されるような仕組みになっている。バングラディッシュの村落共同体の仕組みをうまく活用したシステム。
ユダヤ教ではユダヤ教徒同士が利息をつけてお金をやり取りしてはいけないことになっている。(異教徒ならOK) イスラムではいあまでもダメ。
デジタルキャッシュなんかが本気で出回って、価値が国境をドカドカ往来するようになったら、世界の金融システムは崩壊する。そんな危険がちょっとでも見えたら、国家は一致団結して即座にインターネットをつぶす。
情報の価値の格差がこれから拡大する。同時にホワイトカラーや知識業種の在り方が変わる。その影響、被害を受けるのは間違いなく情報ブローカー。
「世界」や「中央公論」には総合のかけらもない。主流知識人のお仲間雑誌。ワイヤードの方がずっとまともだった。 -
20101107読了。
個人的におもしろかったのは以下の話。
NGOは良いものばかりでない
電力自由化の弊害
企業の間接部門の生産性の高さ
について。
前作の新教養主義宣言よりはエッジがない感じはする。
ただ、まえがきにある、役に立たない専門的すぎる知識をいかにブレイクダウンして現実に役に立つ知識として広めていくかという話は、思い当たることも多く刺激になった。