黒死館殺人事件 (河出文庫 お 18-1)

著者 :
  • 河出書房新社
3.52
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本棚登録 : 1590
感想 : 122
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  • Amazon.co.jp ・本 (531ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409054

作品紹介・あらすじ

黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、屋敷住人を血腥い連続殺人事件が襲う。奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎がエンサイクロペディックな学識を駆使して挑む。江戸川乱歩も絶賛した本邦三大ミステリのひとつ、悪魔学と神秘科学の結晶した、めくるめく一大ペダントリー。

感想・レビュー・書評

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  • 日本三大奇書のひとつ【黒死館殺人事件】

    これは、一言で面白いって済ませたくない。
    さすが奇書。脳味噌直撃!
    +゚*。:゚+(人*´∀`)ホゥ…+゚:。*゚+.

    降矢木の館で起きた殺人事件。
    一族の住む通称「黒死館」には、当主の他、幼い頃に異国から引き取られた弦楽四重奏団が住む。
    事件を担当する法水の捜査方法もまた独特で、詩を織り交ぜた言葉で、心理的に誘導し告白を促せようと罠を仕掛けていく。

    詩的な法水の言葉が難解である点がハードルを上げているが、だからこその奇妙な世界観なのだろうなぁ。
    単純に昔の作品だからということも相まっているのだろう。メモがすごい量です笑

    綾辻行人の『暗黒館の殺人』を彷彿とさせるが、やはりそこは日本を代表する奇書としての存在感が証明されますね。

    作中、ゲーテの「ファウスト」が出てくるので、読んでおけばもっと楽しめたなぁと後悔。

    閉鎖、血族、心理、宗教、音楽、詩、などなど様々な要素を凝縮していて、一冊なのに数冊の本を一気に読んだような満足感。
    残り20%からはもう目が止まらなくなります。
    (電子書籍だったのでw)

    今度は三大奇書残り『虚無への供物』いきたい。

    あぁ〜読み終わっちゃったぁ〜という気持ちになった数少ない作品でした。
    冒頭に戻って、しばらく余韻に浸ります。(´△`)

  • 1934年(昭和9年)。三大奇書、第一弾。
    小栗虫太郎の代表作。夢野久作「ドグラ・マグラ」、中井英夫「虚無への供物」と共に、本邦ミステリの三大奇書と呼ばれている。重厚長大で密度の濃い内容のためマス・ミステリ(大推理小説)とも呼ばれており、噂に違わず難解で、衒学趣味の定義そのもののような作品である。

    黒死館と呼ばれる屋敷で起きる連続殺人事件を主題とする。猟奇的殺人に始まり、切れ者の探偵が登場して、犯人を特定して解決する、形式としては古典的な本格ミステリ。

    しかし、物語を装飾する為に語られる薀蓄の量がハンパではない。トリックはとても把握しきれず、面白かったのか面白くなかったのかさえ、よく分からないという始末だった。読んでいるうちに何だか謎解きはどうでもよくなってきて、引用されている文献は実在するのか、とか、学術的知見はどこまで本当なのか、とか、最後までこのテンションでいく気なのか、とか、本筋と関係ないことの方が気がかりになってくる。

    知識に耽溺したい活字中毒者のための本。読む時には、百科事典またはウィキペディア、独語辞典などが傍らにあると良いかもしれない。

  • 学がなくても文字が読めれば読書はできる、とおもってきたしこれからもそれは変わらないが、今回ばかりは「読み終えたことをほめて!」と考えてしまった。法水さんが言ってることの2割くらいしかわからない……と落ち込みながらはんぶん程度読み、その辺りから文体から解放されてなんとかゴールできた印象。もともと好きで読んでいるのが本格ミステリというジャンルのせいか、頭で考えてしまうと行き詰まる気がした。ミステリではない、奇書なのだ、とおもえれば案外楽だったのかもしれない。ただ、『ドグラ・マグラ』を挫折した悔しさが役立った!

  • 再読のため、あらすじ省略。

    この徒労感……黒死館読んだぜ、って感じ……。初読時はミステリー読むつもりでいたからダレまくったけど、今回は法水が徹底的にミスリードすることを頭に入れて読んだのでそんなにイライラしなかった。支倉も熊城も途中から法水の話まともに聞いてないし(笑)。こいつに好き放題させるな熊城。
    解説で渋澤が「トリックはあくまで装飾的かつ抽象的であり、読者をして謎解きへの興味へ赴かしめる要素はほとんどないと思われる」って書いてるのは笑った。要するにこれは推理小説ではなくて、極めてピクチャレスクな殺人事件という〈絵〉があり、法水が思う〈一番面白い絵解き〉を語ってみせる、という作品なのだ。実際、中盤以降は伸子が真犯人だとわかっていて、わざと推理を陰謀史だの叙事詩だのに持っていき、時間稼ぎをしてやった感すらある。
    『法水麟太郎全短編』でも思ったが、法水は自分と犯人とのあいだでしか成立しない〈狂人の倫理〉を語ることによって、魔術的な事件を完成させるという意味では共犯者であるといえるのではないか。名指しで追い詰めた人間が無実だと判明するだけではなく、法水自身無実だとわかっている人をハッタリのために追い込んだりするので本当にタチが悪い。そうこうしてる間にも連続殺人が進行していく。法水にとっては全てが遊戯であり、彼が伸子の死をもってこの事件の幕を下ろしたいと願ったからここで終幕となっただけで、騙り続けようとすればいくらでも続けられたのだ。
    虚構の殺人事件を創り出し、悲劇のための舞台を設定し、解かれるために用意された謎を解いて幕を下ろす〈探偵小説〉というもののパロディを、一九三五年にしてやりきってしまったのが『黒死館殺人事件』だ。法水は永久に謎が湧き出る泉のような黒死館という場につかわされた、ツアーガイドのような探偵なのである。

    • みいさん
      残り三分の一、挫折しようかと思ったけれど、がとさんの感想を読んで、少し気が楽になった。
      もう少し頑張ってみよう………。(正直ヘトヘト)
      残り三分の一、挫折しようかと思ったけれど、がとさんの感想を読んで、少し気が楽になった。
      もう少し頑張ってみよう………。(正直ヘトヘト)
      2023/07/07
  • ミステリ界の三大奇書のうち、この本だけ読んでいないなと思い立って読み始めた。最初から探偵が登場するし、推理小説の形をとっているが、ずっと煙にまかれている気分。魔術や神話、天文学など広範囲な知識が披露されるのだが、それで謎が解けるかというと、私の理解力を超えている。さらに、登場人物がシェークスピアやゲーテを熟知していて、詩句を言うと続きが返ってくる。昔の人って博学だったのか、それとも小説の中だけのことなのか。仮名遣いこそ新しくなっているが、漢字や外来語の表記は古いものなので読みにくい。このままでもそれなりに面白いけれど、たぶん、ちゃんと読み込んだらもっと面白く感じるだろうとは思う。とはいえ今更「ファウスト」を読むのは大変。(若い頃に挑戦して挫折した記憶あり。)

  • 三大奇書の1冊、まずは読み切った自分を褒めたい。ストーリーは不穏な空気漂う館ミステリー。そこだけなら、ただの平凡な小説で終わっていただろうが、やはり、奇書と呼ばれる所以あり。

    宗教、魔術、残虐な事件、神話など、ありとあらゆる情報が出てくるため、何を読まされているのかわからなくなった。宇宙のような本と、言ったらいいのか、ここまで読みづらい本はドグラマグラ以来か。そちらの本は2/3で挫折したけど、、、

    正直、自分如きにこの本をどうこう言うことはできない。何がどうなったのか、今でもよくわからないが、ただ不思議な魅力はある。読みづらいのに読みたい。これもこの本の魔力なのか。

  • とても面白い本でした。
    たくさんの小道具や、小栗さん自身が考えたのか神秘な
    謎めいた秘方とでも呼べばよいのかしら。
    昔の人と言ったら、小栗さんに怒られてしまうかもしれ
    ませんが、この時代の言葉や文章に慣れていない人にと
    っては、とっつきにくい本かもしれません。
    それでも、読み進むうちに小栗さんの魔術にかかり、ど
    んどん、この本に惹かれていく人も多いのではないかと
    私は、想っています。
    昨今の小説とは言えない、作文を書くような方には、こ
    れほど、面白い小説は書けないでしょうね。

  • 「Mass(弥撒)とacre(英町)だよ。続けて読んで見給え。信仰と富貴が、Massacre――虐殺に化けてしまうぜ」

    結局法水がいたことで事態が進行したのか悪化したのかわからない迷宮。
    むしろ犯人と探偵が魅力的な謎を共同製作している趣き。
    さらには検事や捜査局長までもが突っ込みをいれたりうんざりしたりしながらも参画する。
    全員が同じ水準の知識を持っているという前提も変わっている。

    どこから飛び出してくるのかわからない西洋史学を主とした伽藍のような衒学だが、
    推理の過程は結構、化学・薬学・生理学・精神分析学に偏っているように感じる。(乱歩「心理試験」とか)

    ミステリとしては結構骨子もしっかりしているし、トリックはそこそこ幼稚なもの。
    だがいいのは文体。
    だからこそ個人的には言葉による推理や心理操作が面白かった。

  • 昭和九年に発表されたこの作品は、江戸川乱歩が絶賛したと言われていますが、推理小説という概念の領域を超え奇々怪々の作品にして自力での推理が不能であると判断したので、要点整理の書き込みをしていましたが中断しました。
     難解・事件の動機不明・事件は得体のしれぬ犯人によって予言通り進んでいく、事件の推移経過が明白にそれに向って集束されていこうとしても、探偵役・法水でさえも、どうにも防ぎようのない大魔霊の超自然力を確認するに他ならないと思われました。
    後半の残り150頁ぐらいから事件が大きく動き出す。それまでは我慢をして読むと伏線が繋がってくる。勿論、推理は出来ませんが、本書を読了するに当たり名著にして奇作であることが解りました。
    解説によると、三大奇書と呼ばれているそうですが、我こそはと思う人があれば挑戦されても良いのではないでしょうか。しかしながら、当方は紹介するに当たり本書の内容についての責任は負いかねます・・・。(笑)

  • 同じ三大奇書の一つであるドグラ・マグラが「読んだら狂う」本ならば、さしずめ本書は「読もうと思う時点で狂ってる」。ゲーテのファウストをベースにカバラ密教やグノーシス、その他中世のオカルティズムに関する知識を真偽問わず闇鍋に放り込み、ぐつぐつと煮立てた強烈ペダンティック小説。あらゆる情報が整理されアーカイブ化された現代では、知識が妖しさと絡み混じり合った本作の世界観はもはや再現不可能ではないだろうか。黒呪術的占星学(ブラックマジカルアストロジー)を例とした、中二病心を煽られる過剰なルビ使いだけでも楽しめる。

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著者プロフィール

小説家。1901年東京生まれ。本名、小栗栄次郎。1927 年、「或る検事の遺書」を、「探偵趣味」10月号に発表(織田清七名義)。1933年、「完全犯罪」を「新青年」7月号に発表。「新青年」10月号に掲載された「後光殺人事件」に法水麟太郎が初めて登場する。1934年、『黒死館殺人事件』を「新青年」4~12月号に連載。他の著書に、『オフェリヤ殺し』、『白蟻』、『二十世紀鉄仮面』、『地中海』、『爆撃鑑査写真七号』、『紅殻駱駝の秘密』、『有尾人』、『成層圏の遺書』、『女人果』、『海螺斎沿海州先占記』などがある。1946年没。

「2017年 『【「新青年」版】黒死館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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