黒死館殺人事件 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 962
レビュー : 101
  • Amazon.co.jp ・本 (531ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409054

作品紹介・あらすじ

黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、屋敷住人を血腥い連続殺人事件が襲う。奇々怪々な殺人事件の謎に、刑事弁護士・法水麟太郎がエンサイクロペディックな学識を駆使して挑む。江戸川乱歩も絶賛した本邦三大ミステリのひとつ、悪魔学と神秘科学の結晶した、めくるめく一大ペダントリー。

感想・レビュー・書評

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  • 1934年(昭和9年)。三大奇書、第一弾。
    小栗虫太郎の代表作。夢野久作「ドグラ・マグラ」、中井英夫「虚無への供物」と共に、本邦ミステリの三大奇書と呼ばれている。重厚長大で密度の濃い内容のためマス・ミステリ(大推理小説)とも呼ばれており、噂に違わず難解で、衒学趣味の定義そのもののような作品である。

    黒死館と呼ばれる屋敷で起きる連続殺人事件を主題とする。猟奇的殺人に始まり、切れ者の探偵が登場して、犯人を特定して解決する、形式としては古典的な本格ミステリ。

    しかし、物語を装飾する為に語られる薀蓄の量がハンパではない。トリックはとても把握しきれず、面白かったのか面白くなかったのかさえ、よく分からないという始末だった。読んでいるうちに何だか謎解きはどうでもよくなってきて、引用されている文献は実在するのか、とか、学術的知見はどこまで本当なのか、とか、最後までこのテンションでいく気なのか、とか、本筋と関係ないことの方が気がかりになってくる。

    知識に耽溺したい活字中毒者のための本。読む時には、百科事典またはウィキペディア、独語辞典などが傍らにあると良いかもしれない。

  • 「Mass(弥撒)とacre(英町)だよ。続けて読んで見給え。信仰と富貴が、Massacre――虐殺に化けてしまうぜ」

    結局法水がいたことで事態が進行したのか悪化したのかわからない迷宮。
    むしろ犯人と探偵が魅力的な謎を共同製作している趣き。
    さらには検事や捜査局長までもが突っ込みをいれたりうんざりしたりしながらも参画する。
    全員が同じ水準の知識を持っているという前提も変わっている。

    どこから飛び出してくるのかわからない西洋史学を主とした伽藍のような衒学だが、
    推理の過程は結構、化学・薬学・生理学・精神分析学に偏っているように感じる。(乱歩「心理試験」とか)

    ミステリとしては結構骨子もしっかりしているし、トリックはそこそこ幼稚なもの。
    だがいいのは文体。
    だからこそ個人的には言葉による推理や心理操作が面白かった。

  • 同じ三大奇書の一つであるドグラ・マグラが「読んだら狂う」本ならば、さしずめ本書は「読もうと思う時点で狂ってる」。ゲーテのファウストをベースにカバラ密教やグノーシス、その他中世のオカルティズムに関する知識を真偽問わず闇鍋に放り込み、ぐつぐつと煮立てた強烈ペダンティック小説。あらゆる情報が整理されアーカイブ化された現代では、知識が妖しさと絡み混じり合った本作の世界観はもはや再現不可能ではないだろうか。黒呪術的占星学(ブラックマジカルアストロジー)を例とした、中二病心を煽られる過剰なルビ使いだけでも楽しめる。

  • とても面白い本でした。
    たくさんの小道具や、小栗さん自身が考えたのか神秘な
    謎めいた秘方とでも呼べばよいのかしら。
    昔の人と言ったら、小栗さんに怒られてしまうかもしれ
    ませんが、この時代の言葉や文章に慣れていない人にと
    っては、とっつきにくい本かもしれません。
    それでも、読み進むうちに小栗さんの魔術にかかり、ど
    んどん、この本に惹かれていく人も多いのではないかと
    私は、想っています。
    昨今の小説とは言えない、作文を書くような方には、こ
    れほど、面白い小説は書けないでしょうね。

  • 短期出張の移動中に読了。初めて読みました。面白いことはたしか。この面白さを維持するための編集に際しては担当もさぞ大変だったことだろう。ルビの校正だけでもこれはつらい。今、校正で苦労しているので特にそう思うのかもしれないけど。

    そもそも「連続殺人」は、探偵(あるいは警察)が愚鈍であるために、真犯人が殺人を繰り返していく。金田一はそういうときに「しまったぁ」とか言って頭かきながらごまかすけれど、知恵比べで惨敗続きの探偵が最後にどのように挽回するかというところにこの手のお話しのカタルシスがあるように思う。

    とすれば、この程度ではネタバレにならないと思われるので書くけれど、本作はその点では失敗かもしれない。えらく賢そうに描写されている本作の主人公、法水の眼前でどんどん人が殺されていくわけだから。その点において彼は「ものは知ってるけれど役立たず」な人間の典型である。

    でも、その彼の役立たずさと衒学主義(趣味?)の組み合わせが、読み物としては異常に面白くなっているのだから、たいしたものではある。やはり気になるのは1934年雑誌掲載の本作を同時代の人はどう読んだのか、ということでありますが。

    ちなみに、この河出文庫版に収録されている澁澤龍彦の解説は犯人、動機まですべてばらしているので、推理小説としてこれを読む方は要注意。

  • 昭和九年に発表されたこの作品は、江戸川乱歩が絶賛したと言われていますが、推理小説という概念の領域を超え奇々怪々の作品にして自力での推理が不能であると判断したので、要点整理の書き込みをしていましたが中断しました。
     難解・事件の動機不明・事件は得体のしれぬ犯人によって予言通り進んでいく、事件の推移経過が明白にそれに向って集束されていこうとしても、探偵役・法水でさえも、どうにも防ぎようのない大魔霊の超自然力を確認するに他ならないと思われました。
    後半の残り150頁ぐらいから事件が大きく動き出す。それまでは我慢をして読むと伏線が繋がってくる。勿論、推理は出来ませんが、本書を読了するに当たり名著にして奇作であることが解りました。
    解説によると、三大奇書と呼ばれているそうですが、我こそはと思う人があれば挑戦されても良いのではないでしょうか。しかしながら、当方は紹介するに当たり本書の内容についての責任は負いかねます・・・。(笑)

  • 日本三大奇書の一つ。
    殆ど義務感で読み始めました。
    夥しい量の薀蓄はダーっと斜め読みした部分もチラホラ。まぁ、自分も衒学趣味的なところはあるのだが。
    解説で、澁澤龍彦さんが、犯人を明かしているのも印象的。
    犯人を知ってしまっている状態で本書を楽しめることはできるのでしょうか。
    今となっては試すことはできません。
    (再読する覚悟は持ち合わせていないのです。)
    ミステリが好きと公言するのなら、読んでおいて、損はないです。

  • 難解と聞いていたので敬遠していたのですが、名作なので一度は読んでみたいとも思い、手にとってみました。しかし、案の定さっぱり解りませんでした。
    神秘思想、占星術、異端神学、宗教学、物理学、医学、薬学、紋章学、心理学、犯罪学、暗号学など沢山の蘊蓄が盛り込まれているのですが、これが全く解りません。法水は中盤あたりで一度真犯人を指摘しますが、なぜかその意見を一旦保留にし、だらだらと蘊蓄を披露します。終盤でやっと真犯人を指摘するのですが、彼の行動に終始イライラしっぱなしでした。
    ただ、事件自体は興味を惹く謎が多く、雰囲気も中世的というか、オカルト的な感じが魅力的でした。

  • アンチ・ミステリの傑作。法水の詭弁に惑わされなければ割と最初の方で犯人は分かる。しかしその詭弁こそが中心なわけで、さっぱりわけの分からない部分もあるが、知識がたくさん出てくるのが好きな人は楽しんで読めるはず。

  • 中味が濃厚で、章毎の区切りが判然とし過ぎて居る為に、章を読み終わる度に"満腹感"を覚える。併し猶も"腹が避ける迄喰らい尽くしたい、貪りたい"と云う複次元的、或いは極人間的な貪欲の感覚に則り、更に頁を捲って仕舞う。
    惹き込まれる程に理解させようとはせず、置去りにされて呆然と立ち尽くし、(自棄的な)虚しさを感じさせるでも無く、押し引きを繰返し、恰も此の本其の物が"音楽の旋律"かの如く、鍵盤の上を往く指の如く、rhythmicalな調子で読み進めさせる本―飽く迄凡てに於いて"使役的"な一冊だと感じた。
    歌合戦と云う奇特な遣り取りを記し、其処から相手の心理を探り得る法水。その歌さえ、洗練された言葉が鏤められている。全てが暗号化された、不思議な空間である。
    叉、登場人物の発言の中にもある様に、黒死館の"悪魔"は矢張り法水に違いは無いのだろう。
    本書にはミステリ小説としての面白さは殆ど無い。本来、加害者の心理等に興味を揺すられるのが、ミステリ小説共通の醍醐味とも云えるだろう。それが、此の本ではソレが無く、探偵である法水の頭脳の俊敏さに圧倒される許りで、心理的な物が一切無い。

    三大奇書の内の「ドグラ・マグラ」/夢野久作 よりは遥かに読み易く、全体的に易しい(或いは筆者、小栗の"優しさ")印象を受けた。(奇書、と称すには正直の処、違和を覚える。)
    読み詰まる事無く、面白く読み進められたが、語句撰びに関しては秀逸・流麗で在り乍ら、(カテゴリ上、致し方無い事だが)会話文が多過ぎる面では小説として、叉、言葉の有つ繊細さ・美麗さを重視するには不足に感じる。奇書と云うには"奇"の要素が少なく、巧妙なトリックの荘厳さを感じさせるのみではある。

    登場人物の人格形成は精緻さの窮みで在り、恰も『黒死館』と称した"人形舘"を想わせる世界が繰り広げられて居る様に感じた。そして其の人形を弄る事が、此の本の、・・或いは小栗の趣旨でも在る気がする。

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著者プロフィール

1901年、東京生まれ。推理小説作家、秘境冒険作家。京華中学校卒。33年、『完全犯罪』でデビュー。雑誌「新青年」「オール讀物」等を舞台に活躍。著書に『黒死館殺人事件』『人外魔境』他多数。1946年没。

「2019年 『法水麟太郎全短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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