- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309409085
作品紹介・あらすじ
学生課で紹介された猫シッターのアルバイトで、一朗は〈猫飼亭〉なる屋敷を訪れる。家主とその美しい兄弟の奇妙な注文に応えるうちに、「極楽」をのぞきみることになり……庭の桜が妖しく誘う、四つの物語。
感想・レビュー・書評
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長野まゆみさんたぶん初読み。猫が出てくるファンタジーを想像していたら全く違って驚いた。もしかしてBL物を書かれる方?こんな世界は学生の頃の漫画以来かも。懐古趣味的な世界感やぐるっと一回りして日暮くんが幸せになりそうな所がよかった。
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読了。猫飼亭の主人とその兄弟と、そこを訪れる人との不思議な世界。BL?官能小説?だけど直接的な表現はされておらず、綺麗な文章の中に妖艶な状態が織り混ざっている。独特で不思議な世界に迷い込んだ感じでした。
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猫ってそっちの猫かーい!というツッコミは他の方のレビューを事前に読んでいたので出なかった。しかしこれまで読んできた長野さんの小説の中ではとりわけ耽美でしっとりしていた気がする。大変好きです。はい。
〈猫飼亭〉という立派な屋敷に住まう美しい兄弟たち。そしてその屋敷に誘われた青年たちに起こる不可思議な出来事を蠱惑的に描いた作品集。それぞれの話は独立しているが、共通して猫飼亭の兄弟たちとの関わりを持っている。長野さんの小説にありがちな、透明な細い糸で登場人物たちが実は繋がりを持っているという構造になっている。
最初と最後のお話では大学生の梓一朗が主人公となっている。一朗は女友達との旅行費を稼ぐために学生課で紹介された猫シッターのアルバイトを引き受ける。同じく雇われた日暮星とともに猫飼亭に訪れると、屋敷の住人である駒形芳白に出会い、「猫になる」という契約を結ぶ。もうこの時点で勘のいい読者は「一朗逃げろ!」と思うが、芳白の使う隠語を理解できていない一朗はすんなりと契約を結んでしまう。しかし「逃げろ!」と思っていても本心ではこのまま溺れてくれ、とさえ願っている自分がいる。悔しいがまんまと長野さんの術中にはまっている。
またこの本のよいところは、長野さんの用いる美しい言葉遣いだ。猫飼亭を装飾する骨董品や芸術作品の数々が丁寧に紹介されていて、想像が膨らむ。また、『鳩の栖』と同じように、今回も桜の季節から始まり、四季折々の物語が展開している。
「桜の季節には、日ごろの無粋者もすこしは景色に心をうばわれ、春らんまんの花吹雪に酔いもする。」
この一文から物語は幕を開け、美酒に酔いしれるかのような心地よさに揺られる。これから一朗が体験する不思議な出来事を予兆するかのような妖しさを含んでいてどきどきしてしまう。 -
「猫」道楽、ね。
好きな人は好きな雰囲気の物語。
〈猫飼亭〉の屋敷の中のクラシカルな、薄暗い屋敷の中でキラキラしたものに囲まれているような感覚。
文庫自体も余白が多く古臭さが漂う感じも良い。
(一行35文字・一ページ14行、他の出版社の文字数・行数まで調べてしまい、河出文庫はダントツに余白が多いことを知った、、、。)
3、の話では淳也のもどかしさが伝わり涙を誘われた。
どの話でも男たちが満たされていくのが艶めかしい。 -
あはははは
長野まゆみさん、やっぱりBLなのね
日暮星のことば
「(略)どうせ、よけようとしても、べつの災難にぶつかる。何もかもがうまく進まない宿命なんだ。」
わたしもそうだな⋯(T‐T) -
日暮と一朗の話が一番好きだった
思ってた以上にガッツリBLでびっくりしたけど文章が綺麗でスラスラ読めた。
少しずつどこかで交わりを持つ登場人物達が物語を運んでいくのがおもしろい。猫が可愛かった。 -
再読。レビューが低いのは、『猫好きで手に取ってみたらとんでもなくBLだったぜ!!オーマイ!!』のパターンですかね(笑)
綺麗な文体に隠語多用の耽美系長野作品です。
少年との絡みもあるので苦手な方はそっと本棚に戻されるのがよろしいかと思います。
隠語で濁してるけど察しがいいと(あるいは界隈に足突っ込んでいれば)、だいぶがっつりやっちゃってます。
私は高校時代に出会ってどっぷり自分のBLの基盤にしちゃったので、綺麗な文章で紡がれるこのお耽美な世界がたまらなく好きです。長野作品にお決まりのお兄さんや少年も好き。ヘテロだったのに絡まれちゃう主人公って展開も好き。
そんな方はぜひ。 -
あらすじも読まず、猫の話だと思って読んだら違うネコの話でびっくり(笑)
今まで読んだ長野作品はさらっとしている感じだったけれど、これは割とガッツリ書かれているので読む人を選ぶかもしれない。
提灯の話が好きです。 -
いきなりのボーイズラブでびっくり。笑
長野まゆみさんがそういう系統のお話を書く作家さんだということは知っていたけれど、背表紙の作品説明を読んでもそんな感じはしなくて、単純に猫好きだから読んでみたのだけど、猫道楽ってそういう意味か(ダブルミーニング?)…と妙に納得。
(ちなみに長野まゆみ作品を読むのは初めて)
大学生の一朗は学生課で紹介された猫シッターのアルバイトをするため、猫飼亭という屋敷を訪れる。
しかし世話をするべき猫は見当たらず、おかしいと思い始める。
そして流されるままに家主とその美しい兄弟たちの奇妙な注文に応えるうちに、彼は不思議な世界を覗くことになる。
言葉の遣い方が美しくて、耽美な雰囲気ってこういうことを言うのかな、と。
根強いファンがいる理由は分かる気がする。“和”な感じで綺麗というか。
同性愛者であるという背徳感を背負いながらも普通の顔をして生きている青年たちが、何の因果か誘われるようにして猫飼亭を訪れ、美しき兄弟たちによってその背徳感を拭い去るきっかけを与えられる。
四つの短編の主題は恐らくそういうことなのだけど、重くはなく、さらっと読める。
知らないで読めば私のように面食らうだろうけど。笑
猫も出てくるには出てくるけど、そんなに重要な役割ではない…かな。
でも作品に色っぽさを与えるためにすごく役立ってるとは思う。これは多分、犬ではなく猫じゃなきゃ駄目だ。
綺麗な日本語がたくさん使われている小説で、そこだけ切り取ってみても楽しめるかも、と思った。