ノーライフキング (河出文庫 い 18-1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409184

作品紹介・あらすじ

小学生の間で空前のブームとなっているゲームソフト「ライフキング」。ある日、そのソフトを巡る不思議な噂が子供たちの情報網を流れ始めた。呪われた世界を救うため、学校で、塾で、子供たちの戦いが始まる。そして最後に彼らが見た「キング」の正体とは?発表当時よりセンセーショナルな話題を呼んだ、著者圧倒的代表作。

感想・レビュー・書評

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  •  最近、すべてのものはシティボーイズとラジカル・ガジベリビンバ・システムに通ずるなあ・・・と感じることが多いです。たとえばバカリズムの師匠(的存在)はいとうせいこうだったり、いとうせいこうの師匠はきたろうだったり、『仮面ライダークウガ』を観たらきたろう、『アオイホノオ』を観たらきたろう、SUZUKIにきたろう、夜中にふとナン男を観たくなって『竹中直人の恋のバカンス』、『ニッポン戦後サブカルチャー史』を観たら宮沢章夫・・・等々。
     というわけでいとうせいこうの『ノーライフキング』、これは子どもの頃から読みたかった本でした。知ったのは’91~2年ぐらいだったけども、なぜ気になってたかというとこの本の主人公の学年が小4で10歳、『ノーライフキング』発表が’88年なので僕は彼らと同い年、全くの同世代なのです。
     
     冒頭の序文、
     “日本の子供たちが、一斉に何かを乗り超えようとしたあの年。子供同士が持つ情報網は、それまでどんな歴史の中にもあり得なかった規模で巨大化し、複雑化していた。”
    と書かれています。
     よくある偶然だけど、この本の前に『幼年期の終わり』を読んでいて、この「幼年期」は人類という種族の幼年期だったけども、これを額面どおりの幼年期にした小説なんじゃないか、と・・・この序文を読んで思いました。正しいかどうかわかりませんが、それを踏まえて「あとがき」を読むと意味がよくわかります。奇しくも、ハヤカワ版『幼年期の終り』と新潮版『ノーライフキング』の表紙はどちらも上原徹さんが描いている(最初のハードカバー版は藤原カムイ)。『幼年期の終わり』+『スタンドバイミー』的な印象。
     作中に出てくるライフキングというゲーム、’88年当時というとドラクエIIIが発売された年なんですが、ゲームの内容からすると’86年に出た『たけしの挑戦状』の自由度にかなり近いです。『たけしの挑戦状』はポートピアやドラクエの影響も受けてると思うんですが、’86年にあの内容というのはほんとにすごい。大好きでした。
     
     小説の内容について。ハッとさせられた表現も多々あるものの、当時小学生だった身としては「いや~そんなこともないけどな」という部分も。ど田舎に住んでたので都市部の子どもたちとの差があったのかもなあ。ゲームの裏技情報は普通に雑誌や攻略本から得てましたし・・・。ただ、ゲーム関係なく「噂」的なものはやっぱりありましたね。
     作中で「リアルとは何か」「ゲームの内容は自分の部屋に帰るだけ、部屋から出ろというメッセージ」と自虐的に書かれているけども、落とし所としてはベタでもよかったんじゃないかなあと中途半端にも感じました。

     '88~9年は昭和が終わり、手塚先生や美空ひばりが亡くなったので子ども心に印象深かった年です。それと同時に宮崎勤事件もあったんで、「恐ろしい噂」やフィクションの世界なんかよりも現実世界の方がよっぽど恐ろしくて狂ってるなあと。
     宮崎勤は'62年生まれ、いとうせいこうは'61年生まれ、ついでにこの時期『トップをねらえ!』を作ってた庵野秀明は'60年生まれとほぼ世代が一緒です。なので『幼年期の終わり』的作品になってもおかしくはないですね。
     序文にもあるように「集団成長」を遂げる話ですが、パソコン通信やインターネットの無い時代に、横の繋がりが噂だというのは面白いところです。ここをネットワークに置き換えるとそのままサイバーパンク小説になると思う。

  • ゲームが出始めたときはおそらくすばらしく最先端な話だったんだろうなって印象。ちょっと時間が経ちすぎてしまいましたかね

  • 子供達の間で大流行しているゲームソフト「ライフキング」。
    このソフトにはⅠ~Ⅳのバージョンがあり、更には呪われたバージョンⅤがあるという。
    噂は噂を呼び、ついには現実を侵食していく。そして・・・

    僕も小3の時にやったドラクエⅢに衝撃を受け、タクティクスオウガで矛盾を知り、FFⅦで感動に至るのであるが、その後はゲーム特にRPGにはハマりすぎて徹夜も辞さなくなり、社会生活を送れなくなるのが分かっているので、手を出さないようにしている。

    それくらいゲームには心をのめりこませる何かがある。
    そして、そこにネットワークという魔力が加わり、子供達は否がおうにも闘いに巻き込まれていく。

    本書で語られる「新しいリアル」のその先の世界に、今、自分達はいる。
    ツイッタ―やフェイスブックなど、考えてみればとんでもない世界にいる。
    自分をグーグル化させよう!なんて提唱させる経済評論家がいる位だし。(僕もこんなレヴューを手軽に発信できるし)

    この時代の向こうにキングがいるのか。

    まだまだ闘いは終わらないんだ。

  • ファミコン全盛期の子どもたちのネットワークと、都市伝説的な噂が社会問題に発展する過程を描くなかで、80年代後半における、デジタルへの希望と不安が入り交じる時代感覚をすくい取ったサスペンス味のある小説。深く考えると考察の余地が多いし、汲み取れるメッセージ性もあるとは思うが、序盤はノスタルジーな感覚、ラスト付近はよくわからん不気味さが強く印象に残る雰囲気ゲー。あとがきにあるように「降りてきた」物語は神がかっている故、30年たった今も人をひきつける魅力があるんだなぁと。ファミコン世代なら一度は読んでほしい傑作。

  • 子供同士の関係性が表現された名著。

  • いとうせいこう氏の処女作とのこと。

    物語が降りてきて一気に書き上げたそうだ。それに習い自分も気合を入れて一気に読みすすめる。

    200ページ程なので、中編になるのかな?

    ビデオゲームをモチーフにした、社会問題を取り上げた文学小説といったほうがいいんだろう。
    自分の中で、良い小説と思える基準にしている
    難解な単語を使ったり、分かりづらい文章構造じゃないこと、はクリアしているので、数時間で読むことができたしいい作品なんだけど。
    途中何気ない文章が、とても怖く感じたり。

    ゲームソフトの呪い、クリアするための攻略法とやらが、若干抽象的でわかりづらいような。
    でも物語のポイントは子供世界のリアルと大人社会の軋轢を書きたいわけで、そういう、それこそゲーム的・物語的な仕掛けや伏線回収などエンタメ的なものを提供している種類の小説ではない。

    ゲームのワクワク的な面白さを期待してしまったのでその点では肩透かし。
    なんせこれは初版が30年以上前の本(1988年!)

    「ノーライフキング(無機王)」っていうタイトルは最高にかっこいい。サバン症候群的なさとるくんのキャラクターが気に入ったのでもっと活躍してほしかった。

  • 圧倒されました。誰も真似できないすごい作品。嫉妬する。★5でないのはただ自分が理解しきれていないから。

  • 感情移入できなくて
    読解できなかった。
    また読み直そう。

  • 小学校四年生の大沢まことをはじめ、子どもたちのあいだで「ライフキング」というゲーム・ソフトが流行し、学校や塾ではそのゲームをめぐるさまざまなうわさが取り沙汰されるようになります。呪われた世界を救うというゲームの世界観は、たちどころにうわさが広がっていく子どもたちの情報網を通じて現実世界へと流れ出ていき、大人たちのさまざまな反応を引き起こしていきます。

    1980年代の消費社会を背景にした作品で、たとえば大塚英志の『物語消費論』(角川文庫など)などによって提示された見取り図のもとで読むことが可能であるように思われます。大塚は、やはり本書と同時期に子どもたちのあいだで流行した「人面犬」にかんする都市伝説を、民俗学的な手法を駆使しつつ分析するとともに、昭和天皇をめぐるメディアと一般の人びとのまなざしが「不在の王」を取り巻きつつ構成されていくことについての分析をおこないました。本作に登場する「王」にも、同様の構造を見て取ることができるでしょう。

    「解説」の香山リカは、時代にあまりにも密着しすぎた本作との衝撃的な出会いと、現在におけるより深刻な困難について語っていますが、たとえば浦沢直樹の『20世紀少年』(小学館)のように、ノスタルジックなあじわいをたのしむという読みかたもありえるのではないかという気がします。

  • 序盤、おお!?と面白い流れなんだけど、
    中盤からいまやよくある噂と真相みたいな話になってしまった。
    しかし確かにリアルという言葉が今も通用しているし、コンピュータに子供が(大人も)支配されるという、先見の明はスゴイ。
    明確な答えという名のキングがまだ現れてないという結論もまたリアルだ。

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著者プロフィール

1961年生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・テレビ・舞台など、様々な分野で活躍。1988年、小説『ノーライフキング』(河出文庫)で作家デビュー。『ボタニカル・ライフ―植物生活―』(新潮文庫)で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』(河出文庫)で第35回野間文芸新人賞を受賞。近著に『「国境なき医師団」になろう!』(講談社現代新書)など。

「2020年 『ど忘れ書道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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