僕って何 (河出文庫 み 1-4)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 181
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409245

感想・レビュー・書評

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  • 拠り所がないと人間は生きていかれへんいうこと。
    主人公と同じ1人っ子なので、気持ちはよく分かった。ただ、この時代の孤独と、今の孤独は違うやろな。
    教条だけを読み上げてるB派の学生を、主人公がバカにしてる描写を見て、欧米産の理論をベラベラと押し並べてる、今の人文社会科学の諸先生方とあんま変わらへんなと思った。
    中盤までは面白かったけど、最後はちょっと満足いかん終わり方やったので星3つ

  • この時代も今も、若者は思うのだ、僕って何。
    あれから30年、オジサンも思う、俺って何。
    でも女性は若者も中年も、今も昔も、精神的に大人な強さを感じます。

  • 2020/07/26
    いちご同盟とかがよく読書キャンペーンで取り扱われていることが多い三田さんの本です。初版が発行されたのが、確認したら1980年で、自分が生まれてすらいないじゃん!という感じです。案の定、この小説の主人公の生活の中心になっていったのは学生運動。歴史の授業とかニュースの特集とかでしか聞いたことないような言葉がたくさん出てきたぞ…と思いました。
    この頃の大学生の人たちは本当にこんなことして暴れまくっていたんだろうか?大学ってそんな危険な場所だったのだろうか…と気になることもありつつ、主人公はなんとなく学生運動に巻き込まれ、そこで女の人と出会い同棲することになり、学生運動から追われたり、自暴自棄気味になったりして…という激動の学生時代の中で自分をなかなか見つけられず、確立もできないでいるような状況を打破することも出来ずグダグダしているうちに色んなことを損してしまう。
    自分も、思ったことをはっきり言える人間ではないし、学生時代に行き場も特に作らずフラフラしてた時期があるので、主人公の思いにも共感できることが多数。周りが決めてくれるって楽…。
    でも自分のことは最終的には自分で決めていかなくてはいけないし、そのきっかけとして周りがあってくれるならそれでいいのかな?
    などとちょっと難しく考えてしまうような感じを受けました。
    正確には自分の考えがこの本に追いついてないだけだと思います。

  • 大学で居場所が見つからない「僕」が、クラスの友人の誘いで参加した学生運動をきっかけに様々な人々と関わっていく姿を描いた物語。

    クラスの友人の誘いであるセクトの一員になり、そこの異性の先輩と同棲することになる。しかし、大学の同級生に諭されセクトを離脱し、先輩との関係を有耶無耶にしたまま組織色が薄いと思われた全共闘に参加。だが、当初は感心した同級生の考えに共鳴できなくなり、全共闘を離脱する…

    読んでいて強く感じたのは主人公の主体性の無さ。主人公の行動のきっかけは全て他人からもたらされている。周囲の環境に流されやすいかつての日本人らしさを感じた。

    個人的には読んでいて自分一人で決断できない主人公の振る舞いにイライラしたが、この作品が芥川賞を受賞したということは、この主人公に共感した読者が当時は多かったのではないかと思う。

  •  ところどころ非常に共感を覚える個所があったものの、やはり私の知らない時代を背景にしているところと、主人公が男性であるということでイマイチ「?」な部分も多々あり。

     主人公よりもレイ子と、主人公の母親の心情に入れ込んでしまった。


     リアルタイムで読みたかったなあと思って発表年を見たら私は生まれていない年で……いい意味で残念に思った。

  • むりやり誘われて参加した左翼の集会
    なりゆきでセックスして同棲に到った女
    党派性を帯びた集団行動のうち、みんなが同じひとつの方向を向いて
    川の流れのように液状化する心
    そういった体験どもに、はたして自分の主体性があったのか
    という疑問を抱いて、また別の流れに乗り換える「僕」
    そして気づけば結婚の話が持ち上がっている
    主体性のない人生は不安だ、いつ梯子をはずされるかわからないから
    だがなにもかも裏切り、また裏切られて、孤独になったとき
    彼はひとつの秘密を抱え込むことで
    「僕」の実態をつかんだような気持ちになるのだった
    しかしそんなものは
    川の流れと「僕」の秘密を相対化させることで得られた錯覚にすぎない
    いやそれ以前に、ただのマッチョイズムでしかない
    それで中篇小説ひとつ書き上げられるんだからべつにいいけどさ

  • 主人公の「僕」は、大学入学後まもなく、学生運動組織である「B派」のオルグに何となく応じてしまい、そのままB派の一員に収まります。やがて彼は同じ組織の戸川レイ子という女子学生と、やはり成りゆきで同棲することになり、その後も主体的な個の連帯を謳う全共闘に、括弧たる思想的根拠を持たないまま、乗り換えていきます。そんなある日、母親が彼のアパートを訪れて彼の知らないうちにレイ子と会い、いつの間にか彼女と結婚する道筋が引かれていることを知らされます。

    組織の中で主体性を喪失するのではなく、最初から主体性を持たないままに行動し続ける若者の姿を描いたのが評価された作品ということですが、本書の延長線をずっと進んでいったところに、「やれやれ」とつぶやく村上春樹の小説の主人公や、今日のライトノベル(ふう)小説の草食系男子があるんでしょうか。

  • リアルに描写された人々の中で、主人公が青春特有の陰鬱さや不安定さと真正面から向き合うと言う話。この主人公は僕だ、そう思わせてくれるものがあった。多くの若者はそのような自身の弱さや空虚さ、変化していくがゆえの不安定な足元に恐れおののき、主義や主張や流行、常識、集団、制度で心の間隙を埋め尽くそうとする。そのような異物を自身の中に許すことの出来ない、変に潔癖な人間を描くことで、その空白というものそれ自体と初めて向き合うことが出来るのだと思う。そう言う小説だった。

  • 芥川賞受賞作
    1960年、学生運動が流行していた頃の若者の生活と心情を描いた小説です。
    時代は変わっても今の若者と全く変わることはなく、
    流行りに振り回されている自分は何なんだろう
    という疑問を持つ主人公の生き様を見ることで、今の自分を省みることができる

  •  東京に進学して空虚な思いを抱いていた僕は成り行きで学生運動に入り不思議な熱を感じる。さらにそこで知り合った年上の女性レイ子と同棲することに。。。

     自分が生まれる前の世界なのに、奇妙なシンパシーを感じ、一気に読み進めてしまった。
     偶然から始めた学生運動の一体感に突き動かされる。そして恋。しっかり自分の意見を持って議論している人達がまぶしく見える。しかしそれはとても脆いただの青春だ。見えたかのような”僕”は錯覚だった。
     自分自身、偶然の出会いによって空虚な今からどこかに移ることができたらと人生の中で何度も夢想した。しかしそれだけでは自分を見つけることはできないのだと改めて思った。

     30年以上前に書かれた小説だが、いつの若者が読んでも胸に響く不変的なテーマが描かれている。

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著者プロフィール

(みた・まさひろ)小説家、武蔵野大学名誉教授。1948年生まれ。1977年、「僕って何」で芥川賞受賞。主な作品に、『いちご同盟』、『釈迦と維摩 小説維摩経』『桓武天皇 平安の覇王』、『空海』、『日蓮』、『[新釈]罪と罰 スヴィドリガイロフの死』、『[新釈]白痴 書かれざる物語』、『[新釈]悪霊 神の姿をした人』、『親鸞』、『尼将軍』、『天海』などがある。日本文藝家協会副理事長、日本文藝著作権センター事務局長も務める。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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