柔らかい土をふんで、 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 154
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409504

感想・レビュー・書評

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  • 難解な小説である。連想のままに連綿と切れ目なく語られる文体は、この作品に限ったことではなく、いわば金井美恵子の特質であるから、難解さや感情移入の困難さはそのせいではない。ここには表層だけが提示されており、そこにまた新たな表層が半ばは覆いかぶさるように重ねられていく。そして、全体を支える構造がきわめて見えにくいのだ。その上に、自転車に乗る娘のように、繰り返し現れるイメージもあり、時間感覚もまた解体されるのだ。読者は、ジャン・ルノワールを背後にもつ、金井美恵子の思惟と世界に幻惑されるしか術がないかのごとくだ。

  • ゴダールの『カルメンという女』の表紙。この扇情的でありながら女の顔や乳が見えずどこか解釈を拒もうとしているところに、女性の精神構造や、この小説の意図があるのだと思いでもしなければ理解に苦しむ。
    いつ物語が始まるのだろうというもどかしさが、読了後も消えない。情景と自意識が混ざりあった嗅覚をそそる美しい雰囲気が途切れることなく永遠に続く。終わりがないので描かれていのは永遠なのだろう。「逃げ去る女」が主人公というが本当か? 話に筋があるようだが本当か? 登場人物全員が物語から逃亡しきったあとの形跡しかなかったように思える。

    もともとはジャン・ルノワール論として書き始められた映画論が「甘美な性交のように深く密着して息づいて」映画論とも小説ともいえない実験的な長編詩ができあがったようだ。あとがきには以下のような自注があり、著者自身この奇妙さを確信していることをうかがわせる。

    《『柔らかい土をふんで、』という小説は、映画によって私が体験した半世紀に少し足りない生々しい「愛」の歴史を批評などではなく、私の持っている全ての言葉によって語りたい、いや、それよりもそれと一致して合体してしまいたいのだという無謀で危険な欲望に、我を忘れてやみくもに従ってしまっただけの、「奇形の小説」にすぎないのかもしれない。》

  • インタビュー:矢野優
    柔らかい土をふんで◆水の色◆水の娘。浴みする女◆青い青い海◆ふかいみどりの、ひろい部屋◆ホリゾンズ・ウェスト◆銀河、やさしい娘。◆外套と短剣◆ロング・グレイ・ライン◆スカーレット・ストリート◆「できごと」、「恋」◆ブルー・ガーディニア

  • <blockquote><a href=http://www.waka-macha.com/entry/2014/10/19/171221 target=_blank>金井美恵子を読むとことばへの執念というか、執着というか、それがえげつないな、とおもう。読者が、書く、ということを作家と共に経験するというか、そういう感じの小説におもう。一文の長さや煩雑さに途方にくれるひとも多いだろうけれど、一文のなかにある世界の深さにふれることができる小説はなかなかないと思う。</a></blockquote>

  • ストーリー云々じゃなくてひたすら文体の実験的な要素が強い。目に映るものを「描写する」ことに対する変質的なまでのフェティシズムに陶然となります。

  • 3年前に挫折して、今回やっと読破できた…!
    でもやっぱりぐったり。
    小説の浅い部分しか見ていない自分は、平手打ちされた気分。
    何度も繰り返されるイメージ、描写の洪水、「。」や「、」のない文字の羅列、引用…

    「織物」

  • 目白雑録を読んで、「小説までこんなに一文一文脱線するとしたら、私の貧弱なおつむではついていけないかもしれない…」と不安になり、いざ本作を手に取ってみて、まさかしょっぱなから6ページにも及ぶ一文を読まされるとは思いませんでした…。

    それはまあ、置いといて。

    あとがきから読むんじゃなかったですよ…。
    自分の書いたものについていちいち元ネタを説明したがるなんて、作者本人も自覚してるみたいですがナルシシズムの発露もいいとこです。

    ジャン・ルノワール、ロラン・バルト、フランソワ・トリュフォー
    からの出展、引用、オマージュ、コラージュ、パスティーシュ、エクリチュール…
    そんなので埋め尽くされた小説です。

    映画好きの女子大生がディレッタントを気取りたくて知ってることをいちいち小説に盛り込むくらいなら可愛いんですが、いい年こいたおばさんがそんなことしても衒学的なだけですよ。
    しかも金井美恵子さんて「こんな事も知らないなんて、読者の方が頭悪い」みたいなスタンスっぽい(小説論では評論家に対してそういう態度でしたけど)ので余計にうんざり。

    ここまで書いてそれでも「あとがきから読むんじゃなかった」と書いたのは、ネタばらしさえ読んでいなければ良い小説だったなぁ、と思うからなんです。
    断片的なイメージが、あちこちに散って重なって歪んでいるところを最後にかけて収束していくところは、思わず眼が冴える程刺激的でした。
    もう一回読んだらもっとたくさんの発見があるんだろうと思いますが、どうしようかな。
    まさかここまで作品の良さがあとがきに邪魔されるとは思いませんでした。

    12.02.06

  • ぐるぐる。

  • 「刊行から12年の時を経て待望の文庫化!」と、帯には。
    いささか刺激的なカヴァーですが、書店のカヴァーなどかけず、電車などではこのまま堂々と読みましょう。

    とはいいながら、これは「独りで」独占して味わいたいエクリチュール。
    (カヴァーに「…、さまざまな物語と記憶の引用が織りなす至福のエクリチュール」とありますが、そのとおりでしょう) 。

    巻末に「解題著者インタビュー掲載」。

  • 途中で挫折

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著者プロフィール

金井美恵子(1947.11.3~) 小説家。高崎市生まれ。1967年、19歳の時に「愛の生活」が太宰治賞候補作となり、作家デビュー。翌年、現代詩手帖賞受賞。小説、エッセイ、評論など刺激的で旺盛な執筆活動を続ける。小説に『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『タマや』(女流文学賞)、『兎』、『岸辺のない海』、『文章教室』、『恋愛太平記』、『柔らかい土をふんで、』『噂の娘』、『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』、『お勝手太平記』など多数。また第一エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』より『目白雑録』シリーズまで、エッセイ集も多数刊行している。

「2015年 『エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金井美恵子の作品

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