花物語 下 (河出文庫 よ 9-2)

著者 :
  • 河出書房新社
4.02
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本棚登録 : 622
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409610

作品紹介・あらすじ

女学校中の憧れの的である下級生を思慕するあまり苦悩する少女、美しく志高い生徒と心通わせる女教師、実の妹に自らのすべてを捧げて尽くした姉…可憐に咲く花のような少女たちの儚い物語。「女学生のバイブル」と呼ばれて大ベストセラーになった、乙女たちの心に永遠に残る珠玉の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻は青い空へふわふわと飛んでいく、虹色のシャボン玉が儚くはじけるような、淡い初恋に破れた乙女たちの物語という印象でした。でも、この下巻は、まるで王子様への恋心を秘めたまま海の泡となって消えた人魚のような、もっと深く深く沈んでいくような哀しい乙女たちの物語との印象を受けました。
    甘く可憐な香りを放ち、可愛らしく色とりどりに咲く花々。けれど、風に吹かれ雨に打たれ、いつかは散ってしまう儚きもの。思うままに生きることが出来なかった、当時の少女たちの秘めたる想いを表すのに、これほど似合う愛おしいものは他にはないだろうと思いました。

  • 「ええ、日陰の花なのね・・・・・・けれどいいわ、わたし達、日の光には咲かずとも、月の青白い光に濡れて、咲けばねえ・・・・・・」(日陰の花)

     上巻よりもずっと慎重に読みました。と言うのも、「ああ、もう少しで読み終わってしまう・・・」という名残惜しい気持ちと、胸がぎゅっと潰されちゃいそうな、得も言われぬ気持ち(『花物語』は完結に向かって悲愴な女の子のお話が多くなるんですよね)が膨らんで膨らんで・・・・・・。『日陰の花』、『沈丁花』はずっと好きですし、『曼珠沙華』の終わり方も、やっぱりすごく儚くて素敵です。
     ああ、あわれ、『花物語』の前ではだらだらと感想を書くのも無粋というもの。そうだ、今日はこの本を枕元に置いて寝ましょうか。そうして、夢の中で馨しい花の匂いを辿りながら、床しく微笑むお姉様に手を伸ばしてみましょう。さて、お姉様はどんな花をその華奢な手に携えているのでしょうか。私はお姉様の胸に飛び込んで、こう言うのです。「お姉様。その素敵なお花、わたくしにも頂戴な」

  • 最高の百合小説。「女性はかくあるべし」という強い価値観があった時代背景を思うと、この物語に登場する女性たちの強い生き方に励まされた方達は相当多かっただろうなと思いました。

    上巻では女性同士の友愛を、下巻では恋愛に近い感情を描いていましたが、こちらは悲しい結末の作品が多かったこともあり、どちらかというと上巻の方が好みかも知れません。中でもお気に入りは下記の短編。どれも読んだ後に本を一旦閉じ、ほうっと嘆息してしまうような素晴らしい作品でした。

    <上巻>
    ・福寿草
    兄の妻に思いを寄せる主人公。一度は別れながらも、大切な福寿草をきっかけに再開する展開が非常に美しい。

    ・ダーリヤ
    突如訪れた輝かしい道を選ばず、自ら選んだやりがいある、けれど茨の道を選ぶ過程がなんとも言えない。最後の句が胸を打つ。

    <下巻>
    ・浜撫子
    あまりにも悲しい結末の三角関係もの。かなり好みの作品だが、下巻はこういった悲しい話が多くて、カロリーを非常に消費する。

    ・竜胆の花
    ちょっとした復讐劇になっている作品。また誰か死ぬのではと構えていたので、終盤の展開には胸がスカッとした。

    ・スイートピー
    これも三角関係ものだが、浜撫子とは異なる展開。愛に大小はないけれど、当事者たちにとってはそう単純な話ではない。




  •  読み慣れたのか、上巻より読み進むのが早い。

     竜胆の花、合歓の花、スイートピーが印象的。

  • 上巻から徐々に妖しさを増した乙女の世界。ただ続けて読んでいるとまったく自然な感情と行動に思えるから不思議。人死にが多すぎる様な気もするけれど、時代的には普通なのか。

  • 中原淳一の挿絵求む

  • ずっと読んでると思わずですわとか言いそうになっちゃう。個人的に。

  • 文章を目で追うだけで楽しい。どっぷりと浸れる美意識の世界に陶然となる。

  • 上巻と比べて百合要素が濃くなり個人的にはこちらの方が好み。ただ悲しい結末の話が多く、幸せな話も間に挟んでくれると肩の力を抜いて読めたかも。しかし当時の読者である少女達はこうした切ない物語を好んで読んだのだろう。

  •  上巻よりも、同性愛を扱った作品が多め。ほぼ全て悲恋に終わり、どちらかが夭折する終わり方をしたりもする。ほんの刹那の女性同士の恋愛。だがそれぞれの触れ合いを花に見立てて愛おしみ慈しみ書かれた作品が、多くの女学生の胸を打ち続けてきたのは、当時は悲恋に終わるしかなかった同性愛を胸の奥に秘めながら涙と共に振り切った少女たちが数多いたのだろう、ということだと気付かされ慄然とする。刹那の愛に終わったのは彼女たちのせいではなく社会のせいだ。これからの世にそんな悲恋が繰り返されないよう、我々にはすべきことがたくさんある。

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著者プロフィール

1896年、新潟市生まれ。52年「鬼火」で女流文学賞、67年菊池寛賞を受賞。『花物語』『安宅家の人々』『徳川の夫人たち』『女人平家』『自伝的女流文壇史』など、幅広いジャンルで活躍した。著書多数。73年逝去。

「2023年 『返らぬ日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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