岸辺のない海 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
4.08
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本棚登録 : 117
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409757

作品紹介・あらすじ

「それは"岸辺のない海"と名づけられるだろう。永遠に欠如した永遠に完成することのない小説を、彼は書きはじめるだろう」-孤独と絶望の中で、"彼"="ぼく"は書き続け、語り続ける。十九歳で鮮烈なデビューをし問題作を発表しつづけてきた、著者の原点ともいえる初長篇小説を完全復元。併せて「岸辺のない海・補遺」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 慣れもあるのか、好きになってきた。好きというか、癖になる?金井美恵子、長編、予想外に良いかもしれない。
    繰り返される細部の描写、不在に向けて書くということ。

  • 《ぼく》はへ理屈をこねてイライラさせたり、子供を泣かせたり、酒場でくだをまき、苦痛や死体のような女が好きで、くだらない話しかしなくて、結局自分しか関心がない最低な奴だけど、たぶんマルセルちゃんを裏返した姿なんだ。〈オレンジ色や薔薇色やブルーの光〉を発し、〈吐き気のするような甘ったるい臭いを発散させ〉る街を〈金色のライオン〉を求めて徘徊したり、〈ラム酒〉を飲んで酩酊しながら
    ギラギラ照りつける〈太陽〉に〈じりじり〉焼かれ、熱くなった砂浜に横たわってガラスみたいにキラキラ光る海を眺めて暮らすのが心地いいんだ。

    「ピース・オブ・ケーキ…」もそうだったけどストーリーとかそういうのよりも色とか音とか匂いとか手触りとかの描写なんかが好きでノオトに鉛筆で書く代わりにアイホンに書き出してたら読むのにすごく時間がかかった。読み終わってからまた冒頭をちょっと読んだけどやっぱり最高!

  • ストーリーはなく人物もどこの誰なのだか分からない。自分自身の断片を書き連ねた長い長い詩のようだ。その描写はひたすら美しく貴く。言葉の旋律にのって、ひいては押し寄せてくる不安な波。この時期の金井美恵子は鋭くて危うくて気怠くて美しくて特別すぎる。

  • 果てのない海に溺れる感じ

  • あらすじらしいあらすじはないし、支離滅裂っちゃあ支離滅裂なんだけど、なんかもう文体がはまるので読んでしまう。ただし救いはなかったです。そもそも「岸辺のない海」というものが、漕ぎ出した船のたどり着く陸も波の打ち寄せる岸もないという、絶望的な海なわけで。生まれ変わった後の自分へ宛てた手紙、というけして同時に存在することのできない二人の自分の出会いという夢想もまた不毛。

  • 書記し綴るということ。物語説話の形骸化を拒否するということ。書くことへの疑い。届くことのない、終わりのない手紙。


    処女作にはその作家のすべてが表れるといいます……

  • 絶望と孤独の中にいる、「ぼく」=「彼」=「おれ」。書き続け、語り続ける、「きみ」の為に。無数で唯一の女であり、自分自身でもある「きみ」。その夥しい言葉の洪水は、岸辺のない海で構成された、海だけで出来た星、ただ永遠に続く海だけに囲まれた巨大な球体に出帆した航海にも似ている。言語と筋のある、当たり前と思われている小説形態に挑戦した小説。

  • 装飾過多の文章が自分には合いませんでした。

  • 孤独で鬱屈した知性と少しばかりの倒錯。書くことそれ自体をめぐって旋回する言葉。肉体へのアンビヴァレンツ。
    はからずも初期島田雅彦を懐かしく想起した。
    ただ、ここでの言葉は徹底して彫琢され、それだけで自存した美しさを湛えている。岸辺のない海。岸辺にたどり着くことなく、その中で漂うこと。

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著者プロフィール

金井美恵子(1947.11.3~) 小説家。高崎市生まれ。1967年、19歳の時に「愛の生活」が太宰治賞候補作となり、作家デビュー。翌年、現代詩手帖賞受賞。小説、エッセイ、評論など刺激的で旺盛な執筆活動を続ける。小説に『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『タマや』(女流文学賞)、『兎』、『岸辺のない海』、『文章教室』、『恋愛太平記』、『柔らかい土をふんで、』『噂の娘』、『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』、『お勝手太平記』など多数。また第一エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』より『目白雑録』シリーズまで、エッセイ集も多数刊行している。

「2015年 『エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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