NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫 お 20-1 書き下ろし日本SFコレクション)

  • 河出書房新社
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レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409948

感想・レビュー・書評

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  • ハードなSF集。久しぶりにこういうのを読んだ気がする。(軽いのを読み過ぎだったんだな)
    「言葉」に関する物が多くて驚いた。言葉の「力」を信じている作家はSF作家が多いのかもしれない。「文」を書く人は信じて欲しいと思うのだが。

  •  気が向いたときだけ買っている『NOVA』である。

     1970年代、「SF」といったら「SM」に間違えられて、という自虐ネタがよくあった。
     では、SFとは何か、というのも昔から問われてきた難問である。村上春樹からしてSF的設定で小説を書き、それがベストセラーとなっている昨今、かつての筒井康隆会長の日本SF大会のテーマ「SFの浸透と拡散」はすでに現実のものとなった。ところが逆にコアなSF短編の発表舞台が乏しくなったと考えた大森望が、アメリカでは昔からあるが、日本にはさっぱりないオリジナルSFアンソロジーを編んだのが本書『NOVA1』。10まで続くらしい。

     北野勇作「社員たち」、田中哲弥「隣人」は不条理ものと括れそうだが、これがコアなSFといっていいのか? 藤田雅矢「エンゼルフレンチ」は宇宙を舞台にしたラヴ・ストーリー、田中啓文「ガラスの地球を救え!」は馬鹿馬鹿しいパロディ、斎藤直子「ゴルコンダ」はほのぼのとしたアイディア・ストーリー、面白いけれどSFとしては傍流だなあ。

     月は遠くて近いSFの古典的舞台。しかし、月面で起きた初の殺人事件を扱う本格推理小説というのはありそうでなかったかも。山本弘「七歩跳んだ男」。しっかり、「と学会」ネタが使われている。
     SFはセンス・オヴ・ワンダーだといったのは誰だっけ? その意味では小林泰三には唸らされた。「忘却の侵略」は遭遇しても記憶に決して残らない宇宙生物(か何か)と戦う、量子論的SF。

     すでに発表された傑作を集めたアンソロジーではなく、編集者の求めで書いてもらったアンソロジーだから、まあ、レベルはこんなものかと思っていたら、後半ぐっと密度が高まり、一般誌には載せがたいだろうという、しかも今日的なSFが並ぶ。小説をメタ・レベルにもっていくというアイディアは昔からあるけれど、次の3作はいずれも記述すること、語ることが世界を作るという、いわば言語中心主義的SFであり、しかも三様に違っている。
     既知外生命体にテキスト改編という攻撃方法で挑む戦隊ものというとんでもないのが、牧野修「黎明コンビニ血祭り実話SP」。しかもテクストで相手を攻撃するというのはすなわちスプラッター描写。円城塔「Beaver Weaver」は数学的フレーヴァーを振りかけた、スペース・オペラの語り/騙り。飛浩隆「自生の夢」はGoogle時代のサイバーパンクの如きもの。語ることと読むことが問題となる。
     最後に伊藤計劃の未完の長編『屍者の帝国』の残された冒頭部分で、このアンソロジーはいまだ語られていない世界に開かれる。もっともその後、円城塔によって語られてしまったが。

     とりわけ語り口の個性と洗練、そしてある種の強さを感じさせたのは円城塔と伊藤計劃であった。

  • 結構面白かった。メタフィクションが多いのは時代の流れか。以下作品毎に記す。
    『社員たち』
    世紀末ものと寓話を掛け合わせて現代への風刺…てな感じでなんとでも言える。感激はしない。
    『忘却の侵略』
    全く新しいタイプの侵略者に対して主人公の武器は…というのは非常に楽しく、それが現実的であるか否かという発想はエンタメに対して失礼というものだろう。
    『エンゼルフレンチ』
    一歩間違えばサブカルに振り切りそうな物語を、ただミスドという一点で支えきったかのような作品。
    『七歩跳んだ男』
    まあ、西澤保彦の『七回死んだ男』のもじりだろうか。トリックに関してはなんかごちゃごちゃ言ってるぞという感じで、間に挟まるいつもの山本弘の小話もなんかごちゃごちゃ言ってるぞてな感じで。
    『ガラスの地球を救え!』
    アベベ・セイメイ、手塚治虫の亡霊など最初から最後まで脱力系SFだった。
    『隣人』
    もはやこれもメタフィクションと言っていいだろう。文章的モンタージュによって現実と狂気を切り刻み、混ぜ合わせる。
    『ゴルコンダ』
    どこか七〇年代SF少女マンガの遺伝子と香りを感じる一作。この短編集では珍しく平和な小説であった。
    『黎明コンビニ血祭り実話SP』
    この短編集の中で、一番期待していた作品であり、一番期待を裏切られた作品であり、一番好きな作品。これもメタフィクションであり、文章改変により現実へ作用して攻撃してくる敵を、同じく文章改変によって駆逐する。その戦闘描写は圧巻であり、スピード感、緊迫感が地の文章の改変により読者に直接的に伝わる。まるでこの戦闘を目の前で見ているような…いやまさにこの戦いは僕らの目の前で起きてるのだ。この本の中で。
    『Beaver Weaver』
    途中で読むのを断念。円城搭は僕には早すぎる。
    『自生の夢』
    僕がアホなせいかもしらんが、オチがよくわからんかった。
    『屍者の帝国』
    やはり面白く、序章だけで冒険の匂いが香りたち、この天才の死を惜しむことしかできない。

  • 恐らく、現在のところ『NOVA』シリーズの中では一番完成度が高いのではないかと思います。
    とにかく、『自生の夢』飛浩隆さんが最高。この短編だけのためにこの本を買う価値があることは、間違いありません。
    勿論、北野勇作さんや円城塔さんなども、良い仕事をしています。
    人に「何か面白いSFを教えて」と言われたら、とりあえずこれを薦めておけば間違いないのではないか、とか思ったりします。

  • 雑誌。2011/9/3現在、5号まで出版。

  • もっと早く読めばよかった。

  • 一切のハズレなし。
    田中哲弥から飛浩隆までの、特に牧野修から飛浩隆までのニューウェーブSFの並びは単なるアンソロジーとも言い難い、奇妙な連帯感があって面白い。購入目的だった円城塔も、独立した本であれば「外道的ジャンル」として楽しめてしまう彼独特のエンタメ性が仇となった感が強く、霞んでいたが、一連のまとまりの中に放ると一気に底上げされて見える。言い換えれば単体だけだとつまらないってことですけど…はりきり過ぎてすっ転んだ後ろ姿を見ているような、ファンとしては悲しい気持ち。

    短いながらも微妙な後味が尾を引く北野勇作「社員たち」、キッチュな雰囲気むんむんのタイトルに反して密なグロ描写がこれでもかと続く牧野修「黎明コンビニ血祭り実話SP」、読みにくい作りながらも目の離せない、静かな昂揚感が何時の間にか確かな昂奮に変わっている飛浩隆「自生の夢」が個人的にはツボだった。

  •  「忘却の侵略」「エンゼルフレンチ」「ゴルコンダ」が特にいい案配。

  • 牧野、円城、飛が図らずも似たようなテーマで書いている。
    小林のとんでもない論理も大好き。

    で、田中啓文……読みながら「バカ」「やっぱりバカ」「ものすごくバカ」と呟きました。

    伊藤計劃……滂沱。

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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