- Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309410258
作品紹介・あらすじ
人生の求道やら何やらを峻拒した十蘭の真骨頂を示す、絢爛華麗な傑作群。
感想・レビュー・書評
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冒頭の「生霊」のドメスティックな物語からは想像もできないオチがまるでコルタサルでいきなり度肝を抜かれる。精緻で端正な文体と小説という表現スタイルだけが引き起こしてくれるめくるめく感覚。
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個人的には『影の人』がおもしろかった。『生霊』も好き。どの短編もすごく緊張感があっていい感じ。
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収録作品の初出は1940(昭和15)年から1956(昭和31)年。
実に巧緻な久生十蘭の短編小説集。一作一作が異なる方向を向きながら、完成度が高い。語彙が豊かなので分かりにくい熟語も出てくるけれども、物語色の強い短編小説を究めたい人なら読んでみるべき作家である。
しばしばガルシア・マルケスみたいに物語が奔走する感じで、本書中では「美国横断鉄路」が、残虐なリンチの場面が淡々と描かれていて強烈だった。
久生十蘭を読むことは物語を読むことの大きな楽しみをもたらす。ただしそこはどこか閉鎖的な空間のようでもある。あまりにも技巧的でカメレオン的であるので、個々の作品は「閉じて」いて、外部を寄せ付けないような何かがあるように感じられた。あまりにも精緻な工芸作品、という感じもある。一部のマニアを惹き付けるような文学世界である。 -
現代物、時代物、幻想譚、ルポルタージュ風など、さまざまな作風の短編が10作。
読み慣れない漢語が多いが、読んでいるうちに引き込まれ、意外とスラスラ読める。 -
つくづく文章がうまいというか、いい意味で人間味がない。宇宙人が人間のフリをして書いたんではないかってくらい人間味がない。どの話も粗筋は大して目新しくは無いのに、一字一句計算された文章という肉体を着ることによってなんとまあ立派な姿に変身。しかも口述筆記だったっていうからマジか!
でも推敲もかなりやってたそうで、そう考えると宇宙人のふりをした壺作りの名人が「がー、これじゃない!」と壺作ってはガシャーンしてたみたいなやつですか。
『葡萄蔓の束』は人間の弱さについての割と主題のはっきりした話。
「線路は続くよ」の『美国横断鉄路』は読んでから歌を思い出すと感慨深い残酷趣味。元歌詞の「♪つるはしを置いて息絶える」は、まんまやんけ。
『死亡通知』は戦中戦後の混乱期の混迷と流転を描いているもののどことなく幻想味があってふわふわした感覚。 -
なにぶん、岩波の短篇選からはいってしまったもので、幻想の土壌は比べて薄らいで、残酷さが強く印象に残ってしまう。でもベルナアルさんは好き。
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ジュラネスク 十蘭ジュラン風作品群 とでもいう意味だろうか。10篇、多才ぶりがうかがえる様々の分野に展開した作品。伝奇・歴史・史実など。「影の人」のモデルは実在。
「渡来日記」日米和親条約の調印使節団の一員で、バーハタン号に乗った一随行員の日記。随行した「咸臨丸」の勝海舟らのように欧米文化に圧倒されずに、冷めた目で観察している。 -
2016.06.07
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2013/4/11購入