NOVA 2---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 452
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309410272

感想・レビュー・書評

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  •  SF初心者の自分のSF力を高めるべく、SF強化月間中です。
     あまり長くて難解なのは挫折するので、短編集から取り組むことにしました。
     一番最初に選んだのは大森望・編集の「NOVA」シリーズ。
     バリバリのハードSF作家から、ライトノベル、人気大衆作家など、超豪華な幕の内弁当の風情です。

     色んな本を食い漁っている私ですが、偏屈の食わず嫌いというか、すんごい人気作家を一冊も読んでない、はては映像化された作品(映画やドラマ)すら見ていないといったことがままあります。
     宮部みゆきもそのひとりでした。
     で、NOVA2に掲載されていた彼女の中編「聖痕」が初となりました。

    <以下、ネタバレがあるので気を付けてください!>
    ======================
     作品は、こどもの身辺調査をする女性調査員とそこを尋ねてくる初老の男が発端となります。
     その男には昔、別れた妻との間に男の子がいました。
     離婚の原因は、女にはパチンコ依存などがあり、身持ちが悪かったせいでした。しかし、男の子は女に引き取られていきます。
     その子がどうなったか、気にしながらも、自身は再婚し、新たな生活を営みはじめる男。
     だがそこに、かつての妻とその内縁の夫が自分の子どもに殺されたことがニュースとなって入ってきました。
    ======================
     と、かなりハードな状況設定なのですが…

     家庭の中で行われる子どもが絡んだ犯罪…DV、ネグレクト、家庭内暴力、性的虐待って難しい。白黒はっきりつけにくい犯罪のなかでも、さらにこぐらがっている。
     なにが難しいと言っても、被害者である「子ども」はあまり声を上げない。
     どんなにロクデナシでも親は親で、情愛としての問題ではなく、生殺与奪の権を握った絶対者として彼らの上に君臨している。
     どんな形であれ彼らに反抗することは、自分の死刑執行所にサインをするに等しく、結果、彼らを救おうと外部から介入するものの助力(この場合、女調査員)を拒否する。
     家庭というのは閉じられた密閉空間で、それが、血縁に保障された健全な揺籃ではなく、かえって牢獄として機能したときの惨状といったら、もぉ・・・
     ヘタなホラー映画より100万倍怖い、といったら、わりにハードな家庭状況で育ってきたダンナいわく、ホラー映画とはそういう状況に置かれたこどものサバイバル劇としてみたらいいよ、とのアドバイスがかえってきました。
     あ、そっか。私の大嫌いなホラー映画には、そういう生きづらさを抱えた人たちのカタルシスの受け止め皿になってるんだね、と妙に納得したことがあります。
     
     幸いにして、私は安定した家庭環境に育ってきたのですが、不安定で身体的・言語的に暴力がある緊張した家庭環境にずっといると、おかしくなるだろうな、とは思います。
     そんななかで、「アナタのためを思ってなのよ!」とか価値観を押し付けられて日には、もぉ・・・
     たとえ、自分の本意でなくても呑みこまざるを得ず、そういうことを繰り返している間に自分の本音を見失うこともままあるだろうな、と…。
     
     そこには正義などなかった。あるのは事なかれ主義だけだった。血の絆や親子の情愛を妄信する性善説だけだった。
     邪悪が地上を闊歩していた。正義の価値は塵より軽かった。 


     どうにも自分が醒めすぎているのか、あるいは自分が子を持たないせいなのか、「親子神話」って絶対的で崩れにくく、あちこちに蔓延している気がします。
     声高に言うと変人扱いされるからあんま言わないけど。
     あ、もう遅いか。
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    *「チヨ子」に収録

  • 東京の日記はまさに今の日本の状況の延長線上にあるような感じですごく恐ろしかった。
    五色の船は、中でも別格で賞をとるだけはある内容。

  • 新城カズマさんの「マトリカレント」と津原泰水さんの「五色の舟」がインパクトあった。
    マトリカレントはSFと王朝ファンタジーの中間、よりもややSF寄りな海洋もの。単語の選びがすごく雰囲気あって浸って読めた。世界史に詳しい人が読むともっと面白いのかも。
    五色の舟は、異形というか奇形のために見世物にされながら生きる家族を主人公に据えた、「くだん」の話。不幸と幸福について考えたくなる、なんともいえない後味が残る話。

  • 新城カズマさんの短編が、かなり良い代物でした。

  • NOVA1は正直イマイチって印象だったんですが、この2は粒揃いな感じです。
    特に「クリュセの魚」と「衝突」が気に入りました。
    「東京の日記」は当然地震の前に書かれたものでしょうが、地震後にこの作品が書けたかどうか難しいかもなあと思ったりしました。
    「聖痕」はとても興味深い内容ですが、ちょっと強引過ぎるかなあという感じもしました。

  • 「NOVA2」大森望/責任編集
    書き下ろし日本SFコレクション。特になし。

    期待どおりの第2巻。
    有名どころ売れどころだらけの選に大森望さんの手の広さを感じます。
    目次見るだけで、んーっ!てなってしまう。

    『かくも無数の悲鳴』神林長平…大御所の短編がトップバッターで。今回は苦手なく読めました。ハードボイルド宇宙SF。
    『バベルの牢獄』法月綸太郎…これはヤバい。最後の最後で「えっ!?」て絶対ページを繰り返します。メタフィクション。
    『夕暮れにゆうくりなき声満ちて風』倉田タカシ…なんじゃこりゃ!地図帳の道路のように記述された文章なんですが、ページの相互関係が明示されてないので…。非ユークリッド幾何、とは言えないのか?
    『東京の日記』恩田陸…ファンとしては読めただけで幸せ。「ねじの回転」に似た色の、ゆったりしたディストピアエッセイ。
    『クリュセの魚』東浩紀…一番のアタリ!未来の火星植民地で綴られる、ボーイ・ミーツ・ガール。無味乾燥で美しい火星の情景が目に浮かびます。
    『五色の舟』津原泰水…“カタワ”の見世物興行一行が遭遇する怪物譚、かと思いきやひとひねり半して着地するSF。くだんと言えば、昔天てれでやってた学校の怪談を思い出すなあ。
    『聖痕』宮部みゆき…宮部さんのSFってことで『龍は眠る』『クロスファイア』『蒲生邸事件』など期待してましたが、こりゃまた。僕はちょっと受け入れらんなかったなあ。

    相変わらずハイレベルなアンソロジーでした。☆4。
    早く最新刊においつかなきゃ!(4)

  • 12編のSF小説を集めたアンソロジー。

    「かくも無数の悲鳴」 神林長平
     宇宙人とかが出てくる未来小説。

    「レンズマンの子供」 小路幸也
     ある日世界が反転!?小路さんらしいほっこりする感じ。

    「バベルの牢獄」 法月綸太郎
     驚きの小説。紙媒体ならではのトリック。

    「夕暮れにゆうくりなき声満ちて風」 倉田タカシ
     正直、試すことなく挫折。

    「東京の日記」 恩田陸
     タイムリーと言える小説。でも私は小説の内容よりも、日記のネタの見つけ方が参考になるなぁと感じました。

    「てのひら宇宙譚」 田辺青蛙
     ショートショート。楽しめました。

    「衝突」 曽根圭介
     最期の日までを描いた小説。シュールというか、ブラックな感じ。主人公の正体が興味深い。

    「クリュセの魚」 東浩紀
     ボーイ・ミーツ・ガール。彰人と麻里沙、2人の恋愛とその結末。淡くて切ない、そんな感じ。好き。

    「マトリカレント」 新城カズマ
     ずっと昔から海に生きる、不思議な人たちの話。現代で、彼等は…?雰囲気がすごく好きでした。

    「五色の舟」 津原泰水
     異形の家族と、“くだん”が見せた未来の話。これも雰囲気が好き。

    「聖痕」 宮部みゆき
     少年Aと、人々に彼を信仰させる現代の闇。

    「行列」 西崎憲
     不思議な行列の話。

    全体的に理系の小難しさがなくて読みやすかったけど、所謂SF(Science Fiction)というよりも、SF(Sukoshi-Fushigi)って感じの作品が多い本でした。
    機会があったら1、3、4巻も読んでみたいです。

  • 読み終えて舌に残る漠とした嫌感がしばらく経って突然、時限爆弾のように暴発して脳髄を揺さぶる。そういったものが多かった。
    淡々とした語り口の中に見えない不和を滲ませた恩田陸「東京の日記」といい、一歩引いたところからヒトの滑稽さを泣き笑いで見守る視線に、共感こそできないけれど妙な切なさを覚える曽根圭介「衝突」といい、様々を混在させたインクでただの直線を描いて終わるだけなのに肌がざわざわする津原泰水「五色の船」といい、胸糞の悪さにかけては本書随一であろう宮部みゆき「聖痕」といい、嫌悪感にただ悶えるばかりだったものが、例えば電車のガラス窓越しに景色を眺めている時間、例えば集中が途切れた瞬間、そういった日常の端々にふっと、最初に抱いたものとは全く違った印象で蘇る。
    逆に、分かりやすくエンタメ性の高かった法月綸太郎「バベルの牢獄」のギミックも個人的にはツボだった。これを仕掛けるためにどれだけ苦労をしたんだろう、と感動する一方、天才となんとかは紙一重、とも。

  • 豪華な執筆陣が集まっているSF短編集第二弾。twitterで大森さんがしりとりと言っていたのでなんのこっちゃと思っていたのですが、読んでなんとなく分かりました。内容ですね。特に好きなのは三編。恩田陸「東京の日記」は緩やかな流れである事件から生じた不穏と狂気を描いた作品。横書きに驚きました。東浩紀「クリュセの魚」、火星での生活と初恋の描写が楽しめました。序章とのことで続編に期待しています。そしてマイベスト宮部みゆき「聖痕」。どこがSFなんだろうと思っていたら終盤のあの展開。すごいの一言です。

  • 先にNOVA3を読んでから読了。これもなかなか楽しい作品が並んでいる。
    「かくも無数の悲鳴」神林長平 宇宙のおたずね者がおそわれた予想もしない自体。まあまあかな。
    「レンズマンの子供」小路幸也 廃墟となった工場で主人公の少年が見つけたレンズ。これは<ジュヴナイル>ですな。懐かしい手触り。
    「バベルの牢獄」法月綸太郎 サイクロプス人と情報戦を繰り広げる人類。むむこれは(笑)。いや参りました!法月先生のSFサイコー!
    「夕暮れにゆうくりなき声満ちて風」倉田タカシ 実験的な作品。いちおう丁寧に読んだけど、印刷技術が十分に対応しきれていないところが惜しい。
    「東京の日記」恩田陸 何か異常な出来事が起こった東京の平凡な日常。チンドン・ミュージックがお好きなのかちょっと気になった。
    「てのひら宇宙譚」田辺青蛙 ユニークな個性が感じられる掌編集。
    「衝突」曽根圭介 この作者の作品は初読。現代流の破滅SFで切り口がちょっと新しい感じ。
    「クリュセの魚」東浩紀 先にNOVA3を読んでしまい・・・とにかく論客のイメージが自分には強いので正統派の火星SFはやっぱり意外だなあ。
    「マトリカレント」新城カズマ 海を舞台にした神話風の世界がSFに展開。新しいものを取り入れていくのが巧みな作家だがこれはピンとこなかったな。
    「五色の舟」津原泰水 戦時中に自らの身体を見世物に食いつなぐ虐げられた人々。妖しくも美しい評判どおりの傑作。ラストには陶然となってしまった。
    「聖痕」宮部みゆき 凶悪な事件を起こした少年。動機も解明され更正の道もみえていたのだが。典型的なミステリーからの転調が素晴らしい。たしかにある意味では問題作。
    「行列」西崎憲 本書のエピローグのような小品。ミュージシャンでもあったのを知ったのは本書で。驚いた(笑)。

    集中ベストは「五色の舟」。「バベルの牢獄」「聖痕」が同率2位かな。

著者プロフィール

東浩紀(あずま ひろき)
1971年東京生まれ。批評家・作家。ゲンロン代表。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。
著書に『存在論的、郵便的』(サントリー学芸賞思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞受賞作)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015受賞作)ほか多数。『ゲンロン0 観光客の哲学』は第5回ブクログ大賞人文書部門、第71回毎日出版文化賞受賞作。

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