指先からソーダ (河出文庫)

  • 河出書房新社
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309410357

作品紹介・あらすじ

けん玉が上手かったあいつとの別れ、誕生日に自腹で食べた高級寿司体験、本が"逃げ場"だった子供の頃のこと…朝日新聞の連載で話題になったエッセイのほか、「受賞の言葉」や書評も収録。魅力全開の、初エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • なぜかすごくドキドキする文章。
    「リアルについて」書かれている文章がいくつかあったけれど、私はこのエッセイを読んで「リアルだな」と思った。
    例えば、
    「黒いストローでジュースを飲むのが好きである。
     理由は蝶々の仕草に似ているような気がするからだ。」
    という書き出しで目が止まった。
    そこに山崎さんがいて、黒いストローでジュースを飲みながらその言葉をさらりと言ったのを、目で見て耳で聞いたかのような生々しい感触があったのかもしれない。
    本当は一瞬静止した理由が自分でもちゃんと分かってないけど、すごくドキッとしたという感覚だけが強烈に残っている。

    そして1番は「あきらめるのが好き」。
    ドキドキを超えて、目と頭だけが動いて呼吸も心臓も止まっちゃったんじゃないの?って思うくらい1語1語に集中して読んだ。
    すごいと思った。
    「あきらめてもあきらめても、しぶとく私が残る。」
    「私」の輪郭が明確になるような、逆にぼやけて溶けていくような、不思議な感覚。
    山崎さんが使う言葉と同じ感覚じゃないかもしれないけど、「リアルだ」と思えた。

    山崎さんの小説がすごく読みたい。

  • この本を買ったのは2010年、9年前です。
    そのときはまだ24歳とかで、
    とにかく手当たり次第本を読んでて、
    そのときに「この本は読むの勿体ない」と思い、
    仕舞い込んでいた一冊。

    あのとき読んでおけばよかった。
    感性にまで貧乏性だった、私。笑

    30を過ぎた私には、あのとき感じた瑞々しい感情が遠くに感じました。
    世間や世界と繋がりやすくなったことを「成長」と呼びたくない、というような言葉が出てきて、泣きそうになりました。
    そうなんだ、器用になったからって、うまく付き合えるようになったからって、それは能力でも成長でもなくて、私は私なんだよね、って。

    ぱらぱらとこぼれ落ちてくような言葉たちを掴むような作業。
    それがナオコーラさんの本を読むこと。

    今度は久しぶりに小説を読もう。

  • なんだろう、読みながら自分が愛しくてたまらなくなった。

    カサカサした心になってしまった時も、持ち前の「トライアンドエラー」精神で物事をぐるぐると考え直し、何かに気付いたり、考えがうねうね変わりながらモヤモヤしたままだったり…。
    そんなナオコーラさんの日常がエッセイから透けて見える。

    特に大好きだったのは、"栞が導くいろんな世界たち"。
    「本離れ」を問題視して、「子どもに本を読ませなくては」と言う人がいるが、大人が読書のメリットを提示して勧めても、子どもはきっと読む気にはならない。ナオコーラ氏が本好きの理由は「現実逃避ができるから」。
    それってほんとうに、真理だ。
    私が今年100冊以上読破できたのも、現実がちょっとしんどかったから。でも、本に逃げられると、なぜかちょっと大丈夫になっていたりする。
    現実と空想の境目が曖昧になったり、現実にいる時間が少なくなるからかもしれない。
    "本は勉強のためにあるのではないよ。戻る気があれば、本を逃げ場にしてもいいんだよ。"
    優しくて、救われる。
    "なにか"のため、"だれか"のため、にウンザリしています。

    読みながらあれこれ考えて、自分を肯定したくなって、人に会いたくなるような、そんな一冊でした。

  • 「人のセックスを笑うな」の山崎ナオコーラさんのエッセイ集。

    いい。
    すごく、いい。


    「人のセックスを笑うな」を読んだ時も、この人の文章はなんてリズムが良んだろうと思ってたんだけど、このエッセイを読んで再確認。

    この人は言葉をものすごく大切にしている。

    そしてこの人の世界の見方もとても、楽しい。

    小説やエッセイはその筆者の世界の見方というか、
    常識とか普通とか当たり前とされているものとのズレや距離感や違和感を
    その人なりの言葉で描かれているものだと思ってる。自覚的であれ無自覚的であれ。

    んで、この人のズレ方には何かとても共感できる部分が多い。
    苦しさとか楽しさとか。

    恋愛小説が多いから人のセックスを笑うな以降、
    結局手にとってなかったんだけど、
    このエッセイは最高に楽しかった。

    そして恋愛小説じゃないのも見つけたので、
    「『ジューシー』ってなんですか?」も買ってみた。これも楽しみ。

    でも、エッセイももっと読んでみたい。
    もっと出してくれないかなー。

  • 山崎ナオコーラさんはすごく不思議な作家だ。「論理と感性~」でものすごく嫌いになって、でも「スカートの裾を踏んで歩く女」は何回も読み返すくらい好きで。このエッセイを読んで大好きになった。熱い人なんだなあ。

  • 感性が独特で、良さを感じる引き出しが多くて尊敬します。
    こういう人には沢山質問してみたくなります。

  • 山崎ナオコーラさんの本、初めて読みました。

    山崎ナオコーラさんは小説を書くのが本当に本当に好きなのだなぁ。言葉がとても好きなのだなぁ。

    言葉は自由でいいんだ、言葉を解き放ちたいんだ、と書いてくれたことで、わたし自身がなんだか楽になった気がします。

    何かを伝えるように小説を書いてるのではない、何かを感じてくれ、と読み手とのズレを許して書くというスタンスを知って、わたしは小説を読んで自由に感じ取っていいんだな、と思えました。

    これからはもっと肩の力を抜いて本が読めるようになりそうです。
    ナオコーラさん、ありがとう。

  • いちばん好きな本。ナオコーラさんの小説が好きだったけど、ナオコーラさん本人がいちばん面白い。
    気取らず、しゅわしゅわの泡のように掴み所がなく優しい文章。この本を読むと、肩の力を抜いて気ままに生きていっていいのだと思わせてくれる。1人でお寿司を食べに行く話と、もうすぐ別れる恋人と未来の話をする話と、不動産屋さんの話が好き。

  • とても好きな本のひとつになりました。また読み返したい。
    恋愛の一コマを描写するところは、はかなくて切なくて忘れていた感情がよみがえるような感覚。
    エッセイの題が魅力的で、文章を奏でる言葉も素敵。
    また他の作品も読みたくなる。

  • 『指先からソーダ』

    山崎ナオコーラさん

    読んでいて楽しくて楽しくてしょうがない!って感じのエッセイ集。
    私も本が好きだから本の世界が好きだしナオコーラさんが好き!

    きっとナオコーラさんもはかないものが好きなんだ。嬉しかった。

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著者プロフィール

1978年生まれ。「人のセックスを笑うな」で2004年にデビュー。著書に『カツラ美容室別室』(河出書房新社)、『論理と感性は相反しない』(講談社)、『長い終わりが始まる』(講談社)、『この世は二人組ではできあがらない』(新潮社)、『昼田とハッコウ』(講談社)などがある。

「2019年 『ベランダ園芸で考えたこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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