十蘭万華鏡 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 174
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309410630

作品紹介・あらすじ

パリ滞在に材をとった西洋読物、大戦後の世相小説、古代史物語、幕末物、戦記物…。痛快無比の傑作群。

感想・レビュー・書評

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  • 十蘭の小説にはいつも死の影がつきまとっている、と思っていたが、本書では必ずしもそうでない短編が収められている。かたや掟破りの夢オチが多用されているのもご愛嬌。彦輔と艦長には感心した。

  • ――

     恐るるなかれ、恐るるなかれ。

     物語は境界に生まれる、お化けみたいなものかもしれない。

     日常との境界。
     混沌との境界。



     多面体作家、久生十蘭の短編集としては王道に感じるものが揃っている。その分、流動的な文体や論理展開、緻密な背景設定を楽しむには丁度良いかもしれません。
     お得意の色情ものから怪奇小説タッチの心霊ものだったり、軍隊を背骨にした少年と士官の友情ものだったり、はたまた史実を元にしたフィクションであったりと本当に様々。

     それぞれが持つ断層やズレが、重なって画になる姿はまさに万華鏡。


     自身の姿もまた、その万華鏡の中で分断され、形を変え、見え方を変えながら移ろっている。それでもそこに、複雑に写り込んでいる姿に自分以上に自分らしいものをちらり、と見付けてしまったりして。さてそのとき、自身の平衡を保つために必要なのは何だろうか?


     …なんだろうね? いったい。

     ☆3.6でどうだ!


  • 初めて著者の小説を読みましたが、ちょっと不思議な感覚で、なおかつ読者を楽しませる短編小説集ですね。乾いた感性とモダニズムの匂いのする、私には好みの小説家かもしれない、と思いはじめています。映画になっている「キャラコさん」も見てみたいですね。

  • テンポのいい語り口で楽しめた。気に入ったフレーズなのか、「花合わせ」と「雲の小径」とに、ほとんど同じ台詞があったのが興味深い。

  • 戦時下の話が多かったせいか、ちょっと聞きなれない単語が多くて読みづらかったかなあ。あと河出文庫って、ふりがなが少ないので正直読めない漢字がちらほら(汗)。ロミオとジュリエットめいた「再会」や、死者と交霊する「雲の小径」、あどけない少年兵との交流を描いた「少年」なんかは比較的読みやすかったです。

    ※収録作品
    花束町一番地/贖罪/大竜巻/ヒコスケと艦長/三笠の月/少年/花合せ/再会/天国の登り口/雲の小径/川波/一の倉沢

  • 2012/7/26購入

  • ひどく生々しい夢を見ているような。
    そんな印象が残る、戦前戦後の混乱や変遷の渦中で翻弄される人々の愛と生と死の物語集。
    かと言って歴史を語る戦争モノではなく、数奇な運命に捕まった人々の奇妙な半生の物語が多い。
    「お地蔵さん」と呼ばれる少年兵を描いた「少年」や、庭中に溢れる花の描写が美しい「花合せ」やなんかは、人の価値観まで犠牲にしようとする戦争とはなんなのか、というメッセージを、そこにある人々や事物の描写で丹念に描き出す。
    それだけでもぐっとくるものがある美しい作品なのだけど、「大竜巻」や「三笠の月」などエンタメ色の強い作品もあり、最初から最後まで本当に退屈しない。

  • ドキドキする。隙間に入ってくるレトリック。もう純文学でそんなに感動することはないと思っていたが、帯の「澁澤龍彦が絶賛」で購読。丁寧な仕事ぶりに驚嘆。刹那的だが芥川より明るく、横光よりも洒落ている。寒い土地で育った元新聞記者には何も言っちゃあいけないのかも。

  • 2011年7月3日読み始め 2011年7月8日読了
    評判高い久生十蘭なので楽しみに読み始めました。
    が、しかし…面白かったのだけど、期待が大きかったのかそれほどでも…。ハイカラさとあっさりとした筋が魅力だとは思いますが…。
    阿倍仲麻呂の有名な句を描いた「三笠の月」とか面白かったです。この本は乗り物関係の短編ばかりでした。

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著者プロフィール

1902年北海道函館市生まれ。本名、阿部正雄。1952年『鈴木主水』で第26回直木賞を受賞。推理小説、ユーモア小説、歴史小説などその作品の幅は広く、「小説の魔術師」「多面体作家」の異名を持つ。代表作に、「湖畔」「黒い手帳」「ハムレット」「無月物語」「母子像」など多数。『キャラコさん』『肌色の月』など映画・ドラマ化作品も多い。1957年没。

「2023年 『あなたも私も』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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