- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309410791
作品紹介・あらすじ
郊外の書店で働く「僕」といっしょに住む静雄、そして佐知子の悲しい痛みにみちた夏の終わり…世界に押しつぶされないために真摯に生きる若者たちを描く青春小説の名作。読者の支持によって復活した作家・佐藤泰志の本格的な文壇デビュー作であり、芥川賞の候補となった初期の代表作。珠玉の名品「草の響き」併録。
感想・レビュー・書評
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(佐藤泰志)2冊目
登場人物にナイーブな様でいて退廃的なものも感じる。
昭和の団塊世代の若者達
3冊目も読んでみたいなと思った。
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1970年代の青春のひとつだったと思われる
この作家の夏と暑さと汗の描写にいつも感心してしまう
すこしみじめでみっともない感じがなんか懐かしい
タイトルの意味するところがまたもや判らないけどかっこいいな -
短中編2作品収録
青春小説で主人公に起こる出来事を
たんたんと読んでいた感じです
表題作はタイトルから謎です -
若いときを振り返るっていうのは恥ずかしいか、なんとなく盛ってしまうか、飾ってしまうか、照れくさいものだけれど、それも振り返る時期(年齢)にも関係してくるのだろう。
この『きみの鳥はうたえる』は佐藤泰志氏30代のデビュー作でおとなになりたくもなく、おとなになりきれず、でも、おとなになってしまわないといけない・・・という21歳の青春時代を私小説風に書いている。
なぜ私小説風と言うのかというと、
磊落で硬質な書店員の「僕」と書店員仲間の「佐知子」の恋人関係が、「僕」の友人「静雄」のナイーブな優しさにつつまれて、恋人関係が静雄と佐知子に何事もなく移るなんてあり得ないこと。三人の関係が壊れてしまうのかと思いきや漂っているようになるのは、やっぱり僕と静雄は同一人物で、作者の分身だからと思えてしまう。(わたしの「盛った小説」説によると)
すてきな題名はビートルズの曲「アンド・ユア・バード・キャン・シング」から。
どうしても青い鳥をさがしてしまう若いときがある、生き生きしたものを求めてあがく時がある。
平禄されている『草の響き』はもっと作者に近いという、井坂洋子さんの解説がとてもいい。 -
いわゆる“ドリカム状態”の男女三人(表現が古い?)の青春を描いた表題作と、仕事のストレスから精神を患い医者に勧められたのがきっかけで走ることに夢中になった若者を描いた「草の響き」の二本収録。
以前読んだ「そこのみにて光輝く」同様、若者たちの間に漂う閉塞感みたいなものの描き方秀逸で、1970年代後半から1980年代前半に書かれた新しくはない小説が、今の若い人たちに共感され甦ったのも頷ける。
二作のうちでより印象に強く残ったのは「草の響き」で、それは私自身がかつて精神を患ってこの主人公同様医者にかかった経験があるからで、医者とのやり取りをどこか冷めた気持ちで見ているところや、待合室で診察を待つ時に周りの患者を見ていて色々考えたことなど、あまりにも身に覚えがありすぎて苦しくなるほどだった。
身体を動かすことで精神的にも段々と上向きになってきた時に主人公が思う、「振り出しに戻りたくない」という強い思い。これはそういう病を経験した人にしか分からない、恐れと切迫感からくる切実な願いだと思う。
苦しみ抜いて死んでしまう人と、苦しみ抜いて尚生きる人の差って何だろう、と考えた。
不意に絶望を感じた瞬間を、何かの巡り合わせでその手に掴んでしまうかどうかなのだろうか、って。
両者の違いはそんなに大きなものではないようにずっと思っているのだけど、それは、死ねない側に立つ私だから思うことなのかもしれない。
そしてもうひとつ。罪を犯してしまうか、理性で踏み留まるか、という小さいようで結果的には大きな違いも、そこに至る道筋だとかそうなってしまった何かのタイミングとか、変な勢いとか、そういうものもきっとあるのだと思う。
どちらのお話も主人公の名前が一切出てこないところが印象的だった。それは誰でもなく、そして誰にでも当てはまる可能性がある、ということ。
貧しく、これといった希望もなく、執着心もない。だけどどこかで誰かとのつながりを求めている。
まさに“今”だな、と思う。
時代を感じつつ古くない、そんな小説。 -
何気なく名前に惹かれてブックオフで手に取った本だけど、こんな素敵な出会いができてよかった!と思いました
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若者のはがゆさや生きづらさが
淡々と描かれている様が印象的
「草の響き」は
生きることへの苦悩と希望の描写が繊細 -
『きみの鳥はうたえる』に集録されている「草の響き」を先に読み上げた。
同タイトルの映画を先に観たところ、今の自分の状況と重なるところがあり、原作を読んでみたいと思い購入したもの。
個人的な感覚では、スラスラ読めて情景が目に浮かびやすい、というものではないが、ところどころで立ち止まりながらゆっくり読むと良いように感じた。一度ざっと読んで、今は2周目を、今度はじっくり読んでいる。
また、主人公と同じように、走り、心臓が張り裂けるくらいの体験をすると、また違った感想が持てるかもしれない。
2周目を読み終えたとき、どういう感想が持てるのか、楽しみだ。 -
畳みかけるように短い文を連続させ、風景描写と重要描写を同列に並べ、独特な緊張感を生み出している。しかし静謐で柔らかくどこか優しい。
『きみの鳥はうたえる』は、『そこのみにて光輝く』の原型のような作品で、主人公「僕」と佐和子と静雄三人の素直で不器用な生き様が初々しい。刹那な彼らが僅かに未来を描き始めた矢先、静雄の事件が起こる。静雄が「僕」や佐和子と接することで捨てようとした自分の原型を揺り戻し、アイデンティティや拗れた愛情の結果だったのであろう。またそれも青春で感じる永遠であり刹那であったのかもしれない。
『草の響き』は著者自身の経験を基にしたものと思われる。生きることは脆く生き永らえることは本来的に無意味かもしれない。ノッポは人生を降りたが、しかし「僕」は10㎞超えを目指し走ることを目標とし日々を熟す。そうして一日一日を過ごすことが、ある側面では人生の意味なのかもしれない。 -
映画版の雰囲気が好きで読んでみた
原作はこういう終わり方なのか
何だが悶々とする
何文学だこれ